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『ラノベのプロ!2 初週実売1100部の打ち切り作家』 感想

 

『ラノベのプロ!2 初週実売1100部の打ち切り作家』(ファンタジア文庫)

  望 公太 (著), しらび (イラスト)

 

 

作家志望の中には「万人受けする作品じゃなくて、好きな人に思い切り刺さる作品を書きたい」という者が多いらしい。

けれど、そういうこと言う連中は――根本的なところで勘違いをしている。

幸せな勘違いをしている。

どうして――自分の作品が読んでもらえることを前提で話しているのか?

 

主人公と、彼に関わる人々が織り成す、熱血ラノベ業界ストーリー

 

「俺と、結婚してくれ」アシスタントで幼馴染みの結麻に、長年の秘めたる想いを告白した神陽太。もう二度とただの幼馴染み同士には戻れない。陽太の踏み出した一歩は二人の関係を決定的に変えていく―変わり始めた関係の気恥ずかしさに悶える陽太だが…一方で“業界の不条理さ”から後輩・小太郎を救う特訓を始めて!?残業代なしで多忙を極める、ラノベ作家青春ラブコメ!

 

八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★ 8/10

 

感想

感想の前に、

この『ラノベのプロ!』の2巻ですが、度重なる延期によりようやく発売となりました。

1巻作中で主人公の弟子ノコタロウの作品が、イラストレーターの都合で延期を重ね、挿絵なしになるのではっていうネタなんか書かれているもんですから、まさかそれを自著で実行するつもりじゃなあるまいな?とか不安に駆られていたわけですが、無事(挿絵もしっかり入って)刊行される運びとなりました。

 

というくらい、1巻でもリアルかつ踏み込みまくった業界ネタが魅力だったわけですが、2巻でさらに大化けしたな!というのが管理人の率直な意見です。

ぶっちゃけ1巻読んだ時はラノベ業界事情の暴露本的な面白さはありましたが、ストーリーとしてはイマイチ盛り上がりにかけるなぁという印象だったんですよね。ラストでいきなり山場を迎えるわけですが、それまでのキャラの掘り下げも薄くて物語に没入できずに1巻が終わっちゃった感がありました。

 

そんなわけでこの2巻も業界ネタ部分目当てで買ったんですが、ストーリー自体が段違いに面白くなってました!!

もちろん業界ネタ部分も期待を裏切らないキレキレっぷりで、大満足の1冊でしたね!!

 

エッジの利いた切れ味抜群の業界ネタ

1巻の時からのこの作品の最大の魅力とも言えるのが、圧倒的にリアルで内容の濃い業界ネタでしょう。

今巻で主に取り上げられてるのは、書籍化の当たってのもろもろ(タイトルの改題やらサイン本やら)と、「打ち切り」についてですね。

正直読んでるこっちが大丈夫かと心配になるくらいリアル(と思われる)な業界事業が詳細に語られてます。

 

で、この業界ネタ部分についても僕が1巻から化けたなと思うのが、この業界ネタ部分のエピソードが上手くストーリーに活かされてるという点なんですよね。

「打ち切り」については今回のテーマそのものですし、なによりサイン本のエピソードで”ラノベ作家にとってはタダ働き"って話を上手く伏線として使ってるなと思いました。

伏線回収のシーンは個人的激熱ポイントの一つといっても過言ではないです!!

 

 改めてラノベの魅力に気づかせてくれる熱い展開

前述したように今回のテーマは打ち切りなわけですが、ラノベを書くことの苦しさ、素晴らしさを教えてくれるようなストーリーでした。

また今巻では皮肉屋だけど心は熱い主人公の魅力がこれでもかってくらい上手く活かされており、1巻時は中二病が抜けきっていないちょい痛い奴的な堪忍の評価がうなぎ上りのストーリーでもありました。

 

管理人は小説書かないですが、ラノベ作家志望の方や小説家になろうなんかのWEB作家の方にとっては、より胸が熱くなるような話なんじゃないかなと思います。

この作品のもう一つのメインである幼馴染とのラブコメ部分とのバランスも良かったですね。エピソードもやたらと初々しくて読んでるこっちが「とっとと結婚しろよ」と思えるようなほほえましさがあります。

 

改めて今回のエピソードは、ラノベ業界ものの作品の中でも、トップクラスに燃える展開かつ面白いお話でした!!

 

<個人的名言・名シーン>

「読者っていうのはね、優しいけど心底ビッチなんだ」

きみの作品を面白いって言ってる連中は。

他の作品にも同じようなこと言ってるよ。

by 亡月王

 

売れてない作品は、つまらないから売れてないわけではない。

読まれてすれいないから売れてないのだ。

by 神陽太

 

作家志望の中には「万人受けする作品じゃなくて、好きな人に思い切り刺さる作品を書きたい」という者が多いらしい。

けれど、そういうこと言う連中は――根本的なところで勘違いをしている。

幸せな勘違いをしている。

どうして――自分の作品が読んでもらえることを前提で話しているのか?

by 神陽太

 

「馬鹿野郎。俺はラノベ作家だぞ」

「サインなら、タダでいくらでも書いてやる」

by 神陽太

 

でもきっと。

プロとして生きることだけが、ラノベではないのだろう。

売り上げがラノベの全てじゃない。

アニメ化がラノベの全てじゃない。

一円にもならない原稿を百人足らずの読者に公開して、それで心から笑っている小太郎を見ていると、そんな綺麗事の全てを素直に信じられる気がした。

by 神陽太

 

 

 

 

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<1巻丸ごと先行立ち読み>桜色のレプリカ

 

 

――この「学校」の中に1人だけ「本当のヒロイン」がいる。
――その人を君に捜し出して欲しいんだ。

 

1巻丸ごと先行立ち読み

HJ文庫さんでちょっと面白い企画をやっていましたので、紹介もかねて。

その企画っていうのが8月1日に1,2巻同時発売となる『桜色のレプリカ』の1巻をまるまる立ち読みできるというものです。

企画の詳細については、HJ文庫さんのブログをご参照下さい。

『桜色のレプリカ』紹介記事

 

で、単純に無料っていうのに釣られたのと、こういう企画がどういう結果になるのか興味があったのと、一ラノベファンとしてこういう企画には協力してあげたいという思いっきり上から目線の考えから、全力で乗っかってみました。世間一般にそれを"乗せられた”というのは理解しますとも……

とりあえず、企画ものと思ってナメて読み始めたことを土下座して謝りたいくらいレベルの高い作品でした!!

 

……あれ?かりゆしブルー・ブルーの時も同じコメント書いてたな(えー

 

感想

せっかく無料なんで、とりあえず読んでほしいってことで今回は極力ネタバレなしで。

 

高いストーリー構成と文章力

話の隠し方と伏線の張り方、あと純粋に展開の仕方が上手い!と感じました。

最初は『さよならトライメライ」みたいなワケありの学園ものかなっと思って読んでたんですが……

確かに間違っていないんですが、予想していたのと違う方向性だったので思わず「おっ!?」っと唸ってしまいました。

物語としてはそこまで奇をてらったものではないんですが、その辺りの設定のタメ方とバラすタイミングとかが絶妙かなと思います。

あとは設定なんかの説明も必要なことはしっかりと書かれているけど、くどすぎない適度なバランスで良かったですね。

地の文読んでても、文章力は高いなと感じました。

最近読んだHJ文庫さんの作品の中では個性は少ないけど、レベルとしてはトップクラスに高いという印象。

作品の雰囲気も個人的にはかなり好きな感じです。

 

主要キャラについて

1巻にしては主要な登場人物が割と多めなんですが、あまり多すぎるという印象はないですね。

主人公の同僚である教師陣については出番が少ない分、一瞬誰だったっけ?となることもありましたが……メインキャラについてはしっかりとキャラが立ってるせいか、皆やたらと印象に残ります。

というか最初ちょっとあざとすぎるかなとも思ったんですが、そのキャラ設定すらも上手く伏線として生かされており、直に感心させられました

こういう伏線の使い方大好きですね!!

 

1,2巻同時発売、1巻丸ごと先行立ち読みという企画と作品について

こういう作品だったからこの企画が出来たのか、この企画があったからこういう作品を書いたのかは分かりませんが、1巻を読み終わった後の感想として「この作品ほど、この企画にふさわしい作品はないんじゃないかな」という印象です。

まずこの作品の1巻ですが、物語を起承転結で分けると、おそらくエンディングがちょうど承から転に切り替わるとこじゃないかと思います。ぶっちゃけ物語の革新一歩手前の一番続きが気になるところで終わってる感じです。これは確かに2巻を買ってでも読みたくなります!!

もう一つ、この作品、物語が動き出すまでの導入が結構長くて(それもこの作品のギミックなんですが、そのせいで1,2巻に分かれたんじゃないかという気がしないでもない)普通の立ち読み分くらいのページだとこの作品の本当の世界観を描写してる部分まで辿り着かなんじゃないかと。それならいっそ1巻部分をまるまる読ませるのも、この作品ならアリだなと思いました。

ようはHJ文庫さん、思い付きじゃなくしっかり考えての企画だったんだなと! それが言いたかった!!(えー

 

なんか失礼なことほざいてしまいましたがそれは置いといて、とにかく一度読んでみてほしいです。確かにいいところで終わっちゃって「8月まで長ぇよ!」ってなりますが、(えー

それを考慮しても面白い作品なんで読んで損はないかと。

なんせ無料ですからっ!無料っ!!(クドい……

 

 







 

 

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かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月 感想

 

 

 

……だとしたら、僕の失った物語は、君を救うことができたのだろうか。

 

 

現代の日本を舞台にした、ちょっと不思議で、ちょっと切くて、どこか懐かしい青春ファンタジー

 

『かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月』 (角川スニーカー文庫)

 カミツキレイニー (著), 白狼 (イラスト)

悪童〈ヤナワラバー〉が切り結ぶ、神様とのちょっと不思議な“縁”の話。

「人間の上でもなく、下でもなく。私たちのすぐそばにいるもの。それが沖縄の神々さ」
怪異を祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた春秋の前に現れたのは、地元の少女、空。天真爛漫で島想い、どこまでもフリーダムな彼女に呆れる春秋だったが、空は神様との縁を切ることで怪異を祓う“花人”の後継者――春秋が島を訪れた理由そのものだった。未熟ながらも、島の人々とともに怪異解決に挑む少年少女の、沖縄青春ファンタジー!

★イラストシリーズ『蒼囲空』×カミツキレイニーの沖縄タッグが贈る、青春活劇!

 

八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★★☆ 8.5/10

 

感想

この作品、普通のライトノベルと違って、イラストレーター白狼さんのイラストシリーズ「蒼囲空」にカミツキレイニーさんがストーリーをつけるという、一風変わった企画から生まれた物語となっています。

とはいっても、最初に企画ものと思ってナメて読み始めたことを土下座して謝りたいくらい面白い話でした!!

 

 

沖縄情緒あふれる作品の雰囲気

作品の舞台は沖縄のとある離島なんですが、読んでいて沖縄感?というのがすごく伝わってきます。

現代の日本が舞台なんですけど、異国感というか別世界感というか、なんとなく夏休みに田舎のおばあちゃん家にいったような雰囲気がこの作品にはあるなぁと思いました。

沖縄には数回しか行ったことがない僕ですら、沖縄の人々の気質とか生活とか、沖縄の離島ってこんな感じだよねって勝手に納得させられてしまう説得力がこの作品にはある気がします。

あとは海や空の青さ、太陽の日差しとか南国っぽい空気のにおいとか……作品を読んでいるとそこまで読者に伝わってくる気がして、これほど作品の舞台をリアルに感じされる表現力はすごいなと思いました。

余談ですが、けっこうライトノベルでこういう雰囲気の作品てあまり思い浮かばないですけど、PCゲームの『AIR』なんかに近いのかなと感じました。

(別に『AIR』は沖縄が舞台じゃないですが、夏の田舎の雰囲気みたいなのが)

さらにこれまた余談ですが、この作品の序盤は沖縄グルメ的な描写が頻繁に登用するんですが、飯テロ並に力の入った描写されてます。えぇ、この作品読んだ後ソーキそば喰いましたとも!!

ただ主人公はいなり寿司しか食べれないから、喰ったあとすぐ吐いちゃうんですけどね(えー

 

コメディとシリアスのバランス、物語の展開が見事

この作品、物語としては「起承転結」に沿ってしっかりと構成されているといった感じで、読んでて分かりやすいし、序盤のコミカルな展開から「転」部分からのシリアスなストーリーへの切替は見事という他ないですね!!

物語の導入部分を簡単に説明すると、いなり寿司以外の食べ物を口にできなくなる呪いにかかった主人公が、沖縄の花人はなんちゅという霊媒師に呪いを解いてもらうため、白結木島という沖縄の離島を訪れるところから始まります。ユタの弟子で花人見習いである空と出会い……って感じなんですが、序盤はコメディタッチのノリに軽快な文章とテンポで、グイグイ物語へ引っ張りこんできます。

物語の冒頭なんて、いきなり我慢しきれずソーキそばを喰った主人公がゲロるシーンから始まりますからね。(えー

その後なんやかんやあって主人公は空の花人の仕事を手伝うわけですが、この部分も宙の相棒の流威奈(♀)が股間に頭突き喰らったりと、コメディタッチで笑える感じに描かれています。

そこから一転、とある出来事がスイッチとなって物語が一気に動き出すわけですが、ここから急激にシリアスモードに突入していきます。ただ「起」「承」部分にしっかりと伏線が張られているおかげで、急激な切替に置いていかれることなく、すんなりと物語に没入することができました。この辺り、物語の完成度が高いなぁと感心させられますね!

そしてそこからの展開、空が花人をしている理由を語るシーン、そのあとの春秋が祟られた理由である犯した罪と過去についての独白、そしてそこから終盤までのたたみかけるようなストーリーは文句なしに素晴らしかったです!!

 

ちょっと切なくも爽やかな読後感

この物語の結末はほんのり切なさを含みつつも、爽やかな読後感を与えてくれます。それはおそらく登場人物たち、主人公の春秋やヒロインの空の心情がエンディングで晴れ晴れとしたものだったからだと思います。そして彼らがそうした心情に至ったのは序盤での島の人達や神様のと騒がしくてお祭りみたいな楽しい日々の思い出があったからなのかなと思ったり。

もうひとつ、ラストで主人公が空に、彼が思い至った「花人の資格」について語るんですが、このシーンもまた爽やかな読後感を後押ししている一つかなと。個人的には空の苦悩を笑い飛ばすような起死回生の結論だと思いますし、この作品の中でたまらなく好きな描写のひとつですね

 

イラストと物語と

ちょっと蛇足的な感想。

前述したとおり、この作品は白狼さんのイラストありきで作られた物語です。ようはヒロインの空のイラストが最初に合って、彼女のイラストに合わせて物語が作られたわけですが、僕が著者のカミツキレイニーさんすごいなぁ~と思ったのは、白狼さんがサイトで公開しているイラストでは体操服着てる割合が多いんですが、それを上手いこと物語の伏線に落とし込んでるんですよね。最初普通に白銀さんが体操服着たイラスト書いてるから、作中でも体操服着せてるんだと思ってしまいました。終盤で種明かしされた時は素直に感心しました。

 

→白銀さんのHP『白銀島

 

 

 

<個人的名言・名シーン>

「遊びなさい。たくさんたくさん楽しみなさい。自分の心の向くままにね」

(オバー)

 

―――『いいよ。どこにいる?』

それは花火を観に行こうとと言った、僕の最後のわがままに対する返信だった。

(春秋)

 

「春秋さんは人を好きになったんだ。傷つけるほど。傷つくほど。大切な物語だったんだ」

(空)

 

……だとしたら、僕の失った物語は、君を救うことができたのだろうか。

(春秋)

 

 

 

 

 

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始まりの魔法使い 名前の時代 感想

 

 

「ニーナ。魔法学校を作ろう」

 

「もっともっと大きく、もっともっと偉大な学校を」

 

圧倒的かつ壮大なスケールで紡がれる竜と魔法の年代記クロニクル

 

かつて神話の時代に、ひとりの魔術師がいました。彼は、“先生”と呼ばれ、言葉と文化を伝え、魔法を教えました。そんな彼を人々はこう呼びました。―始まりの魔法使い、と。そんな大層な存在ではないのだが―「だから火を吹かないで!」「ごめんごめん。私にとってはただの息だからさ」竜として転生した“私”は、エルフの少女・ニナとともに、この世界の魔法の理を解き明かすべく、魔法学校を建てることにした。そこで“私”は、初めての人間の生徒・アイと運命の出会いを果たした―。これは、永き時を生きる竜の魔法使いが、魔術や、国や、歴史を創りあげる、ファンタジークロニクル。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 9/10

 

データベース

 

感想

第1回 カクヨムWeb小説コンテスト受賞作、石之宮カント先生の『始まりの魔法使い 名前の時代』の感想です。

毎度のことながら多少のネタバレは含んでますのでご注意を。

 

この作品、とにかく世界観が壮大で、物語への没入感が圧倒的!!

その物語は原初の英雄の叙事詩のようであり、神話のようでもあり、壮大な物語の長い長い序章プロローグのようでもあります。

読み終わった後の感動と満足感、次に語られるであろう今後の歴史についての期待感、一つの物語としてもシリーズものの1巻としても、素晴らしいの一言に尽きます!

まさに純粋なファンタジーの神髄を感じたと言える作品ですね!!

 

 

壮大なスケールで描かれる人類と魔法の歴史、その始まりの物語

物語の第0話、この巻のプロローグは竜歴6050年、「始まりの魔法使い」の伝説を追ったドキュメンタリー番組を主人公(おそらく)と彼の生徒達?やらが見ているシーンから始まります。

この竜歴6050年、エルフや魔法が当たり前のように存在してるファンタジー世界ではありますが、TVやビデオなど、文明レベルは現代日本をほぼ同等という感じ。

で、そんな第0話から、本編のスタートは一気に竜歴0年に遡ります。

この作品は前述したように、主人公が異世界の竜に転生した竜歴0年から本編が始まり、後に「始まりの魔法使い」と言われる主人公に関わる出来事を、時代に沿って描いていく【年代記】の形式をとっているのですが、実はこの第0話、カクヨミに掲載されているWeb版にはない、書籍版の書き下ろしになっています。

ただ第0話があることによって、物語から感じる壮大さが段違いに大きく感じられます。

正直、この第0話から本編の導入、初めての生徒であるアイとの出会いまでを読んだ時と、1巻を読み終わった後にもう一度第0話を読んだ時は鳥肌が立つほどでしたね!!

 

本編についてはその初めての生徒であるアイとの関係を中心に、主人公が人と関り、魔法を通じて人の暮らしを変えていく様子が描かれていくわけですが、本編だけでも10数年、主人公の誕生からだと20年以上、エピローグも入れると50年以上にわたる物語が描かれています。

 

この作品は、世界に魔法を広めた主人公の「始まりの魔法使い」としての物語なわけです。

ただ、もちろん魔法そのものは、重要なキーアイテムであるとはいえ、あくまで物語を進めるうえでの一つの道具に過ぎないと感じました。

この作品の主題はの時を生きる主人公を通じた人類の歴史、現実世界で科学と共に進歩していった人の文明を、科学を魔法に置き換えた形で描いていくことじゃないかなと。そして主人公がその歴史の変遷にどのように携わり、人類の進歩に影響を与えたかを描いていく物語であると感じました。

 

ちなみに1巻開始時点における人々の生活は縄文時代~せいぜい古代並みで、文明と呼べるほのものはなく、国ではなく集落と呼べる程度のものが点在しており、また、集落によってはまともな言葉も存在しないようなレベルです。

そこに主人公が日本語を広め、葬儀などの文化を教え、文明をつくっていく。この描き方は非常に興味深かったですね。

ファンタジー作品では言葉だけは普通に通じるという設定はよくありますが、この作品では逆に、言葉さえないところに主人公が、ゼロから全てを広めていくわけです。だから第0話の未来において、当たり前のように日本語で話し、洗濯機やネギと言う言葉が存在し、通貨単位は「円」なんだなと。

そんなところからもいかに主人公が人類の成り立ち・歴史において重要な役割を果たしてきたのだということが伺い知ることができ、細かい設定まで物語に深みを持たせるよう、非常に練られているなと言う印象を受けます。

なんというか、読めば読むほど、細かいところに気づけば気づくほど、その世界観に圧倒されるような感覚でした

 

あと個人的にですが、もう一人のヒロイン、悠久の時を生きる主人公のパートナーのような存在として描かれているエルフのニナ(ニーナ)と、主人公の関係がすごくツボでした。

1巻作中では二人の関係性は「ほとんど」変わらないわけですが、そんな中でも少しずつニナの心情の変化が感じられ、ここでも第0話でちゃっかりと主人公の隣の席を確保しているニナの描写から、今後も続く長い長い物語における二人の関係を予感させられます。

 

 

一人の女性の生涯を描いた人生記でもあり、長い長いプロローグでもある第1巻

最後に、この1巻は、主人公の初めての生徒であるアイの物語でもあります。主人公と出会い、魔法を憶え、文化的な生活を知り、幸せを手に入れる彼女の人生が余すところ無く描かれています。いわば文庫本1冊の中に彼女の人生が凝縮されているのです。

だからだと思うのですが、たった1冊にもかかわらず、読み終わった際にはまるで長期連載作品が大円団を迎えたかのような感慨が込み上げてきます。

それぐらい、1冊の中での物語の完成度とスケール感がずば抜けて高かったと言いたいです!!

それと同時に、この1巻は「始まりの魔法使い」である主人公の伝説を描いた、壮大な物語の、とても長いプロローグでもあります。

この物語のラストは、主人公が本当の意味で魔法の学校を作ろうと決意するシーンで終わっているのですが、前述した感慨共に、第0話と合わせてこれから主人公が学校と言う舞台を通じて紡いでいく新たな物語を予感せずにはいられませんでした。

だからこそ、ここで再度言わせていただきたいと思います・・・・・・

この作品は他に類を見ないほど、圧倒的かつ壮大な世界感で描かれる一大叙事詩であると!!

 

 

名前の時代

最後にこの巻の副題である「名前の時代」について。

この巻で主人公が「この世界の魔法は名前でできている」ということを発見し、初めて魔法が魔法として誕生したわけです。

(それまで魔法は、生まれつき使える人だけがもった一種の才能・能力のようなものでした)

つまり魔法の歴史はここから始まったわけですが、この時代(巻)の魔法は全て「名前」によって成り立っています。

その他にも作中で度々「名前」というものが重要なキーワードとして登場してきます。

だからこその「名前の時代」という副題なんだと思います。

ただこれって、冒頭第0話の竜歴6050年で使われている、この時代の名称なんじゃないかなと。

私たちにとっての「弥生時代」や「古墳時代」と同じような感覚で、まだ名前だけが魔法の全てだった、魔法の始まりの時代のことを、

現代?では「名前の時代」と名付けているんじゃないだろうかという考えがふと思い浮かんだので、最後に余談みたいな感じで記載させていただきました。

 

<個人的名言・名シーン>

確かにテレビで語られる『始まりの魔法使い』はとても立派で、間違うことも失敗することもない、神様のような存在だ。

実際はそんなでなかったことを、わたしは良く知っている。

けれど、その苦労もまた、わたしたちは良く知っていた。

(???)

 

嬉しいのに、喜ばしいのに、胸の奥がぎゅっとして、息が上手くできない。

こんな気持ちにも、名前はあるのだろうか?

あいつなら、もしかしたら知ってるかもしれないけれど。

物知りな竜に尋ねるのは、もっとずっと後でいい。

(ニーナ)

 

「ニーナ。魔法学校を作ろう」

「もっともっと大きく、もっともっと偉大な学校を」

「この世界の誰もが知るような、そんな素晴らしい学校を、作るんだ」

(せんせい)

 

 







 

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魔術破りのリベンジ・マギア 感想

 

 

ならば、提案しよう。お前の全身全霊の一撃 ――― 今から僕が防ぎきってやる、とな

 

日本の魔術は世界一! 東洋VS西洋の本格魔術バトル!
二十世紀初頭――めざましい科学技術の発展の裏で、人類は確固たる魔術文明を築き上げていた。世界のパワーバランスすら左右する“魔術師"を育成する機関「セイレム魔女学園」。
そこで起きた怪事件解決のため、凄腕術士・土御門晴栄(つちみかど はるな)が米国の地に立つ! 「あらゆる状況を想定し戦術を千変万化させていく――これが、陰陽師の戦い方だ」
北欧神話・死霊術・吸血鬼、様々な魔術体系を東洋魔術でブッ飛ばせ! ハイエンド魔術バトルファンタジー、ここに開幕!!

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★ 7.5/10

感想

第10回HJ文庫大賞大賞受賞作、子子子子 子子子(合ってるよな?)先生の『魔術破りのリベンジ・マギア』の感想です。

例によって若干のネタバレを含んでますのでご注意を。

ジャンルとしては学園異能バトルもの、ストーリー展開はツボを押さえた王道といった印象です。何より作りこまれた物語の設定がすさまじいと思いました。この作者さん、ホントに魔術とか伝奇とか好きなんだろうなというのが作品からひしひしと伝わってきます。

ちなみに公式PVも作られていて、これだけでもこの作品の世界観がよく分かります。

 

 

設定厨・厨二好きの方必見! 凝りに凝って作りこまれた世界設定

あらすじからも分かるとおりこの作品、ありとあらゆる分野(と言うと言い過ぎですが)の魔術体系が登場します。しかもそれぞの魔術に対して、バックボーンや歴史に至るまで、背景が細かく作りこまれているといった印象。それゆえに魔術一つ一つに、まるで科学の説明を受けているかのような説得力を感じます。特に面白いと思ったのがそれぞれの地域(国)の文化・民族性が魔術体系にも反映されているところですね。僕は服好きなんでファッションの世界の例になっちゃうんですが、ロンドン・パリ・ミラノといったヨーロッパは「本場・総本山・源流」というイメージで、ニューヨークは「リアルクローズ」―― 既存の概念や歴史に囚われない実用性を重視して無駄をそぎ落とすイメージ、そして「ミックスカルチャー」こそが東京の特徴という認識があります。そしてこの作品で登場する各国の魔術体系は、まさにこれらの文化的特徴を内包して描かれているなと、読みながら非常に感心させられました。こういうところに注意して読んでいくのも、またこの作品の面白さの一つじゃないかなと思います。

後は様々な魔術組織やその名称・通称、魔術師の二つ名など、とにかく厨二心をくすぐる設定や単語のオンパレードで、そういうのが好きな読者にとっては涎ものだと思います。学園異能バトルものって、どんな作品でも少なからずそういう要素を含んでいるとは思いますが、ここまで1冊に詰め込んだ作品はそうそうないと思います。というか僕の記憶にある中では、単純な量でいくと、この作品がダントツで1番ですね。

ただ、設定が凝りまくっている分、特に序盤ではとにかく魔術関係の説明描写が多い! 正直、魔術の説明部分とかは読み飛ばしちゃう人もいるんじゃないかなと思ってしまいました。

一応僕は読み飛ばしたりはしなかったですけど、なんというか・・・ウザいとかくどいというわけではないですが、作者の熱量に圧倒されながら読んでる感じでした。

あともう一つ、舞台が米国だから基本的に名称が横文字になるからというのもあると思うんですが、とにかくルビを使った単語が多いです。主人公の陰陽道関連を除けば、およそほとんどの魔術関連の単語が漢字に横文字のルビで表現されているんじゃないでしょうか。この辺りは好みによる部分が大きいので、好きな読者にはたまらない長所でもあると思いますが、僕は読んでてちょっと疲れたというのがホンネですね。この辺りもう少し抑えてバランスをとってくれると、もっと読みやすいし頭に入ってくるんじゃないかなというのが個人的な感想です。

 

プロフィール一つとっても設定の綿密さが伺える

 

期待を裏切らない学園異能バトルものの王道展開

ストーリーの概略としては、米国にある魔術学園の一つであるセイレム女学園で起きたとある怪事件解決のため、日本のトップクラスの魔術師(陰陽師)である土御門晴栄が派遣される。そんな中、生徒としてのいざこざに巻き込まれたりしながら、事件の調査をすすめる内、驚愕の真実が浮かび上がり…といった感じでしょうか。

物語の導入が事件調査なので、ミステリー的な要素も含んではいるんですが、それよりも学園異能バトルものらしいエンターティメント的なストーリーがメインかなと思います。東洋からの転校生への周囲の反応、いきなりの学園トップクラスの生徒との決闘、事件の真犯人~黒幕との最終決戦と、学園異能バトルものの1巻にふさわしい内容が詰め込まれてた王道展開。また、それぞれのエピソードがうまく次の展開への前振りになっていて、流れるように物語が進んでいくのも見事だなと思いました。

それと単純に、いろんな魔術体系がガチンコバトルするっていう展開が燃えますね。『Fate』なんかで、過去のいろんな英雄がバトルするっていうのと同じようなワクワク感を感じました。あと主人公の使う陰陽道の「あらゆる魔術の要素を学び、取り込み、己の力へと昇華することを重ねてきた魔術」という設定が個人的にツボでした。こういう柔軟な戦術が、伝統とか格式とかに囚われた相手を打ち破っていくのが好きな方にはドストライクな作品だと思います。

 

 

 

<個人的名言・名シーン>

「ならば、提案しよう。お前の全身全霊の一撃 ――― 今から僕が防ぎきってやる、とな」

(土御門 晴栄)

 

「あらゆる状況を想定し、戦術を千変万化させていく―― 陰陽師の戦い方だ」

(土御門 晴栄)

 

 







 

 

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月とライカと吸血姫 (1~2巻) 感想

 

 

この成功を肉の煮凝りホロデーツで、お祝いしましょう。精一杯の感謝を込めて

 

宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女の物語。

人類史上初の宇宙飛行士は、吸血鬼の少女だった――。
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。
共和国の最高指導者は、ロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。『連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ!』と息巻いていた。

その裏では、共和国の雪原の果て、秘密都市<ライカ44>において、ロケットの実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。とある事件をきっかけに、宇宙飛行士候補生<落第>を押されかけていたレフ・レプス中尉。彼は、ひょんなことから実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナ・ルミネスクの監視係を命じられる。

厳しい訓練。失敗続きの実験。本当に人類は宇宙にたどり着けるのか。チームがそんな空気に包まれた。
「誰よりも先に、私は宇宙を旅するの。誰も行ったことのないあの宇宙から月を見てみたいの」
イリナの確かな想い。彼らの胸にあるのは、宇宙への純粋な憧れ。

上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を目指す彼らがそこにはいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティがここに。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★★☆ 9.5/10

 

感想

『月とライカと吸血姫』の2巻の感想を書こうとして、そもそも1巻の感想も書いてないやってことで、

またしても1~2巻まとめての感想です。すいません。

 

ちょっとばかりネタバレもあるんで、ご注意を。

1巻 感想

まず作品を通してですが、これまたとんでもなく美しい物語が出てきたな!というのが第一印象。

ジャンル的にはSFファンタジーになるんでしょうか?
宇宙開発と言うSF要素に吸血鬼という伝奇の王道をぶっこんでくるという組み合わせが斬新です。

ただ物語としては、古きよき時代を思い出すような王道のボーイミーツガールものですね。

種族の違う二人が心を通わせていく過程がとても綺麗に描かれています。

また、この作品のスゴイのが、SF、伝奇、ボーイミーツガール、種族差別、国家間の陰謀などこれでもかってくらいいろんなテーマを扱ってるのに、ビックリするくらい一つの物語として綺麗にまとまっているところですね。じゃあ結局この作品はどんな話なのかというと、あらすじに書かれている「宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ」。このフレーズがもっとも上手くこの作品の雰囲気と内容を表していると思います。

 

宇宙(そら)に夢見る少年と少女の物語

上で述べたように、この物語にはいろんな要素が詰め込まれているんですが、おそろく一番のテーマは宇宙飛行士を目指す少年と吸血鬼の少女のボーイミーツガールについてだと思います。

物語の舞台は世界観としては米ソ冷戦時代の宇宙開発競争を彷彿とさせる(生まれてなかったの想像ですが)世界観の架空の世界で、

そんな陰謀渦巻きまくる世界の中で主人公のレフはただただ宇宙に憧れる純粋な青年として描かれています

そんなレフが、人間が宇宙飛行に耐えられるかを確かめるための実験体として選ばれた吸血鬼のイリナと出会ったことで、物語は大きく動き出します。

 

この作品の世界設定としては、陰謀とか差別とかかなりどろどろしているのに、物語としてすごく美しくて綺麗に感じるのは、この二人の純粋な在り方と関係性が一つの要因となっているんだと思います。

まず主人公のレフについてですが、彼の場合、けして世間知らずとか世の中が分かっていないとかそういうわけではなくて、ちゃんと国家の腹黒さとか人の醜さとかを分かった上で、それに染まることなくただ純粋に宇宙を飛びたいんだという夢に向かって突き進んでいるという感じで、非常に好感が持てる主人公だと思いました。

ヒロインのイリナについては、また絶妙なバランスのキャラとなってますね。ツンデレっぽい感じで意地っぱりなんですけど、実は割と泣き虫で素直。何より物事に対して真っ直ぐな心の在り方が美しいです。

そして1巻の大部分を使って、この二人が徐々に打ち解け合い、心を通わせていくその描写がとても素晴らしいです

何か大きな出来事をきっかけにして距離が縮まるとかではなく、本当に小さなことの積み重ねで、お互いを少しずつ理解していく過程がじっくり丁寧に描かれおり、

これぞボーイミーツガールもののストーリーといった感じで、まるで青春小説を読んでいるような感覚でした。

 

食堂での一幕。訝しげな視線と慌てて取り繕うレフ

普通の人間と変わらない存在として描かれる吸血鬼

もうひとつ、この作品では人種差別、というか種族差別もテーマとして扱っているんですが、ここですごいと思ったのが迫害される立場である吸血鬼の設定ですね。

この作品では吸血鬼を超常の存在ではなく、人間とほとんど変わらない一つの種族として描いています。これによって人と同じような存在でありながら、単なる種族の違いだけで意思ある生物を「モノ」として認識できてしまう人間の醜さを上手く描写していると思います。

架空の世界に現実と同じような史実を挟んでいるのもそうなんですが、この作品はとにかくファンタジーとリアリティのバランスが絶妙だと思います。

2巻 感想

高度百キロメートルの宙から君を想う。

『ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフ・レプス中尉は、晴れて念願の宇宙飛行士候補生に復帰する運びとなった。それに合わせて吸血鬼の少女イリナ・ルミネスクを監視する任務からも解かれることになる。昼を生きるレフと夜を生きるイリナ。ふたりは同じ基地内でもすれ違ってしまう、そんな生活が続いていた。

イリナの様子を気にかけつつも、レフは自身の夢を叶えるために「人類史上初」をかけた宇宙飛行士選抜試験に挑み、優秀なライバル達と鎬を削る。

その一方で、不穏な空気がイリナの周りを包もうとしていた。

「実験体が帰還したようです」
「……もう用済みだろう。廃棄処分を」

回り始めた運命の歯車は、果たしてどこに行き着くのか――。

世界に渦巻く巨大なうねり。一枚岩ではない共和国政府。追いつけ追い越せと躍起になっている連合王国。いまだ人類が宇宙に行くことが奇跡だと思われていた時代。様々な思惑に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が織りなす、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。

 

この巻に関しては、ライトノベルの「2巻」を読んでここまで圧倒された作品を他に聞かれたら、ちょっとすぐに思い浮かばないくらい、物語の完成度が高かったです。

ここでいう完成度とは、細かい技術的な話ではなくて、仮に2巻でシリーズが終わりだったとして(絶対3巻出してほしいですが)一つの作品として十分に満足できるという意味で使用してます。

そもそもこの作品の2巻を読むに当たって、1巻の物語がすごく綺麗だっただけに2巻が蛇足になったら嫌だなという思いがあったのですが、そんな不安に思ってすんませんしたっ!!と、思わずジャンピング土下座をかましそうになるくらい、素晴らしいストーリーでした。

1巻との対比、まるではじめから上下巻の作品と思えるほど綺麗なストーリー

僕がこの作品を読んで、最もすごいと感じたところ。

この作品て1巻単体でみても、物語としてすごくきれいにまとまってるんですよね。読み切り作品というか、まるで1本の映画をみてるような気持ちになります。ただ、2巻を読み終えた時点でまるでこの作品は最初から前後編で一つの物語として書かれていたんじゃないかと思うほど、完璧なつながりと結末が描かれています。

 

■物語の中心がイリナ→レフへ

この作品のストーリーについて、出来事に焦点をあてて説明すると、1巻はイリナが「史上」初の宇宙飛行士となるストーリーと言えます。それに対して、2巻はレフが「人類」初の宇宙飛行士を目指すストーリーであると言えます。

この辺りの描写が1巻から続くこの世界での吸血鬼の設定が上手く生かされていて、レフ吸血鬼イリナの境遇の差が胸を締め付けてくるようでした。

 

■レフとイリナ以外の登場キャラの掘り下げ

この巻で登場するメインキャラの多くは、1巻から継続しているキャラになります。

ただ1巻ではほぼ主人公とヒロインの掘り下げに焦点が当てられていたため、彼らについてはそこまでキャラの深堀りがされおらず、メインと言ってもほとんど名前のあるエキストラに近い印象でした。それを2巻ではそれぞれの内面をぐっと掘り下げてきたわけですが、共に宇宙飛行士を目指すミハイルもローザも、イリナの監視担当のアーニャも、宇宙船開発者のコロ―ヴィンも、みんないい奴過ぎて泣けてきます。どのキャラのエピソードもすごく良かったのですが、個人的にとくにお気に入りなのがイリナとアーニャが歓喜に沸く群衆の陰で抱きしめ合うシーンと、コロ―ヴィンから国家最高指導者のゲルギエフへの手紙の文面ですね。たった一文にあんなにやさしい想いの詰まった「脅迫状」はないと思います。

 

ゲルギエフとリュミドラの役割

上で述べたようにこの作品の主要キャラのほとんどは善人として描かれています。そんな中、国家最高指導者のゲルギエフと秘書官のリュミドラがこの物語の不穏な側面を一手に担っているキャラであると言えます。ただ、決して悪人というわけではなく、清濁併せ持つ政治家らしい政治家といった印象のキャラクターで、彼らの存在と根回しがともすれば青臭くご都合主義に映ってしまいかねないクライマックスの演説とその後の展開に、しっかりとした説得力を持たせていると感じました。その辺りのバランス感覚もこの作品の素晴らしい部分だと思います。

 

<個人的名言・名シーン>

「泣いてないわよ……雪解けの — あなたのせいで、氷が溶けてるだけ……」

(イリナ)

 

「この成功を肉の煮凝りホロデーツで、お祝いしましょう。精一杯の感謝を込めて」

(レフ)

 

「イリナちゃんが、ずっと頑張ってたの、知ってます……。イリナちゃんの祝賀会、缶詰なんかじゃなくて、もっとお祝いしてあげたかった。でもごめんなさい……。一緒にご飯を食べたり、お話したりするくらいしかできなかった……ごめんなさい」

それで十分だよと、イリナは伝えたかった。

(アーニャ&イリナ)

 

 

 

 







 

 

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まるで人だな、ルーシー (1~2巻) 感想

 

 

「代償は、悲しみだけど?」
「ああ。そいつは僕にいらないものだ」
「そっか!」

 

景色をその身に纏った少女・スクランブルはうれしそうに笑うと、小さく握りしめた拳で御剣乃音(みつるぎのおと)の腹を抉る――。
人身御供となった御剣の願いを叶える神代タイム1分間の代償は【打算】【キスのうまさ】【愛情】etc.
人の感情を贄にして、エキセントリックボックスはヒトに近づく……。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10

 

感想

1巻の感想書く前に2巻が発売してしまうという事態に陥ってしまったため、まとめて感想書くハメになってしまいました。

ということで、第21回スニーカー大賞《優秀賞》受賞作『まるで人だな、ルーシー」(1~2巻)の感想です。

 

まず第一声として、なかなかに尖ったというか、突き抜けた作品という印象。

作品の内容を簡単に説明すると、自分を構成する要素(打算愛情や優しさ~キスの上手さ等)をささげる代わりに願いを叶える「エキセントリックボックス」という不可思議な現象を使って人助けに己を捧げる少年の物語です。

なんか簡潔に説明文書いたら、すごく爽やかで優しい物語っぽい紹介になってしまいましたが、実際の物語はもっとずっときもち悪いです(ほめ言葉です、念のため)。

正直この作品を読んだ時の感情を上手く表す言葉が思い浮かばないんですよね。どこか退廃的で、破滅と隣り合わせのような歪さを感じさせる、不思議な世界観。

なんていうか、壊れかけの人たちがギリギリのところで必死にもがいて、空回りだったり失敗したり裏目にでたり、奇跡もご都合主義も起きないけど、『救い』はある。

そんな感じの物語です(念押しますが、ほめ言葉ですよ)。

序盤からつきまとう崩壊の足音、途中胸を締め付けられるような切ない展開、それでも最後はしっかりと前を向いて終わることができる。軽い話やご都合主義に飽きてきた方はぜひ一度、読んでみてほしいと思います。

 

ここまでほぼ意味不明な感想になってしましましたが、こっから先はネタバレもありますのでご了承を。

1巻 感想

人間に近づいていくスクランブルと、人でなくなっていく主人公・・・日常の壊れていく描写が秀逸

この物語の主人公である御剣乃音(みつるぎのおと)はスクランブルという名前のエキセントリックボックスの人身御供です。

エキセントリックボックスというのは人型に変身できる不思議な箱で、人身御供が願った願いはほぼどんな願いでも叶えることができます(人を生き返らせることと、他の人身御供に直接影響を与えることはできない)また、願いを叶える際に直接干渉した人たちから、エキセントリックボックスと人身御供に関わる記憶を消し、無理やり辻褄を合わせて記憶を塗り替えます。

その願いを叶える力はドラえもん以上の万能性を誇りますが、願いを叶えるためには人身御供が自身を構成する要素を一つ捧げなければいけません

この設定こそがこの作品の根幹とも言える部分だと言えます。

 

「なあ、スクランブル」

「おまえと出会った頃と比べて、僕はどれくらい変わった?」

「えっとねー」

「私が変わった分だけ変わった!」

 

これは物語序盤の乃音とスクランブルの会話なのですが、この二人の関係性を最もよく表しているやり取りじゃないかと思います。

二人で一人分の人間としての要素しか持っておらず、スクランブルが人間に近づくほど、乃音は人間らしさを失くしていきます。それゆえ、主人公とエキセントリックが<同じ感情を表現してはいけない>という難しい問題がある中で、その辺りをしっかり書き分けてる点は素直にすごいなと思いました。

また、スクランブルは代償をもらう度にどんどん感情豊かに、人間らしくなっていき、それと反比例するように乃音はどんどん人間味をなくしていくのですが、この乃音の変化に合わせて、彼の生活が変わっていく様子、それまでの乃音の日常が壊れていく描写が本当に秀逸です。
特に愛情を代償にした時の描写は、かなり心を抉られますね

 

 

それと、物語中盤でもう一人の人身御供である氷室 棗と、彼のエキセントリックボックスが登場しますが、

彼らと乃音とスクランブルとの対比も見事

氷室はまだ乃音ほど、代償を差し出していないため、乃音と比べるとずいぶんと人間が残っています。

同様に彼のエキセントリックボックスは、スクランブルと比べるとまだまだ機械というか人形めいて感じます。

その分、乃音とスクランブルの異様性というか、人身御供としての末期感が上手く際立っているなと感じました。

 

ひとくせもふたくせもある主要キャラ

登場人物たちはどこかしらに歪みを抱えた人?達がほとんどです。。

ただ彼らの歪(いびつ)さが、この物語の独特の雰囲気を生み出しているとも言えます

この彼らのキャラクターを受け入れられるかどうかで、この作品が面白いかどうかも変わってくるかもしれませんね。

個人的な好みでは、どこか壊れていて、欠陥品みたいなキャラは、『戯言シリーズ』のいーちゃんとか、『CROSS†CHANNEL』の黒須太一に近いものを感じて、結構好きですけどね。

以下1巻時点における主要キャラの印象です。

 

【御剣乃音】

スクランブルの人身御供

主人公でありながら、作中でもっとも歪な人間。善意でなく、ただひたすら自分のために人を助け続けるという矛盾した行動基準を持つ。

自分の価値を世界の最底辺に位置づけており、人助けをすることでしか、生きている価値がないと本気で思っている。

 

【スクランブル】

乃音のエキセントリックボックス

初登場時はどこか人形っぽさも残していましたが、どんどん人間味を増していきます。

そしてこの作品の中で最も真っ直ぐなキャラなんじゃないかと思います。

人間じゃないスクランブルが一番まともな人間?というのがこの作品をよく表しているとも言える。

 

【真白セツミ】

この作品の中では最も普通の人間として描かれています。

それゆえに、乃音の日常の象徴ともいえる存在を担っており、

その日常の崩壊をきっかけに、物語はクライマックスへ向けて突き進んでいきます。

作中でいちばんかわいそうな役割を背負わされてしまった子。

1巻時点でのイメージは『反逆のルルーシュ』の第1期のシャーリー。

 

【夕凪アリス】

乃音の隣人で、まさかまさかのメインヒロイン?・・・かどうかは分かりませんが、(えー

ある意味作中で最も重要な仕事を担う人物。

天才的な画家であるけれど、天才は変人であるという言葉を体現したような存在だと思います。

ただこの作品で一番確固たる自分を持っている人物じゃないかと思います。

故にブレず曲がらず折れずかっこいい。1巻での八真八的好感度は堂々1位。

 

【氷室 棗】

もう一人の人身御供。

乃音にヒーローとしての理想を押し付け、それを現実にするため自らは悪役を演じる少年。

悪者ぶってるけど、全然悪者オーラを感じない、

ゆえに1巻時点での作中のイメージはThis is Pierrot。

彼の真価が発揮されているのは、2巻だと思ってます。

 

【氷室のエキセントリックボックス】

1巻時点では、氷室のエキセントリックボックスという以上の印象が全く無い。

彼女の真価も2巻と思ってます。

 

 

 人間らしさとは何か

2巻にも続くテーマなんですが、この作品はずっと、人として生きるとはどういうことかという問題を問い続けているように感じます。

1巻クライマックスでは初めて、スクランブルが自分の意志で自分の願いを叶えるための行動をとるのですが

人間らしさとはなにかというテーマに対する、一つの答えがのスクランブルの行動なんだと思います。

 

結局乃音は人間らしさがほとんど欠落したままで、状況が好転したわけでも、何かが変わったわけでもないんですが、

それでも何とか人として生きていこうと前向き状態で物語は終わりを迎えるんですが、

この今の境遇を受け入れて前に進もうとする結末が、切ないような幸せのような、また何とも言えない読後感を味合わせてくれます。

 

2巻感想

「おまえはなにもしてないだろ?」「ううん。“私たち”がしたんだよ」
御剣(みつるぎ)の問いに、その少女・スクランブルは感情豊かに応える。少女の姿に展開するBOXへ代償を捧げ、1分間の願いを叶える人身御供。御剣、氷室(ひむろ)に続く3人目は、その能力を使わない高校生の美術部員・鶴見凛(つるみ・りん)。世間から評価されない彼女の絵から、欠落したはずの『好き』という感情を想起し、御剣は戸惑うが――。

 

1巻でとりあえず生きることを受け入れた乃音ですが、

2巻では

ほとんど人としての要素を失った乃音が、それでも人としての生き方を探す物語。

そんな感じの内容になっています。

3人目の人身御供の物語

乃音が人として生きる道を探すうえで重要な役割を担っているのが、3人目の人身御供として登場するである鶴見凛なのですが、彼女については、乃音や氷室との差別化がはっきりとなされています

乃音も氷室も積極的にエキセントリックボックスの力を使う人間だったのに対し、

鶴見は一切、エキセントリックボックスの力に頼ろうとせず、普通の「人」として生きている人身御供として描かれています。1巻時点の乃音と氷室が破滅に向かっているイメージだとすると、彼女は夢に向かって突き進んでいる感じでしょうか。

1巻の人身御供とエキセントリックボックスの描写でも思ったのですが、この作者さん「人」の対比を表現するのが抜群に上手いですね

あと1巻では、乃音の日常が徐々に壊れていく様子が描かれていましたが、この巻では彼女を中心とした日常が「唐突に」壊れてしまう表現がなされいます。また、1巻では常に乃音の人生を中心として物語が進んでいったのに対して、2巻は乃音の視点・考えで鶴見凛の物語を見ている感じです。このストーリー的な1巻との違いも、読んでいて面白かったです。

そういう意味では彼女はポジション的に、ゲストヒロイン的な立場という印象ですね。

一応この巻で彼女自身の話には、はっきりと決着をついていますが、今後も出番はあるんでしょうか?

欠陥品として生きる主人公

1巻では乃音がどんどん人で無くなっていく過程が描かれていましたが、

この巻では、人として欠陥を抱えてた主人公の描写が秀逸に描かれています

以前、何かのインタビューで、西尾維新先生が戯言シリーズ2巻の『クビシメロマンリスト』について、
「この巻で主人公は覚醒するはずが、好感度が地に落ちました」的なことを言っていたのですが、

この巻の主人公はまさにそんな感じです。(えー

何しろ、愛情も優しさも既に失っているわけですから。自分に好意以上の感情を向けてくる人たちの心を無自覚にへし折っていく様は、控えめに言ってもクズですね。

逆に僕みたいなひねくれた人間からすると、その人でなしっぷりがツボなわけですが。

ただ乃音の好感度の下がりっぷりのバランスをとるかの如く、他のキャラの好感度は1巻時点と比べて上方修正されています。

以下、乃音以外の主要キャラの2巻時点での印象

 

【スクランブル】

1巻時点から特い印象は変わってないですが、乃音が人でなしな分だけ、彼女の真っ直ぐさが際立っています。

 

【真白セツミ】

乃音の記憶を無くしても変わらず乃音に振りまわれる少女。

彼女に関しては好感度ではなく、同情値が上昇しています。(えー

 

【夕凪アリス】

1巻に続いておいしいところを総取りしていきます。

むしろ乃音よりよっぽど主人公気質。

あいかわらずかっけー。

 

【氷室 棗】

個人的には1巻時点と比べて最も好感度の上がったキャラ。

あいかわらず、悪者ぶろうとして全く悪役を演じきれてない。

というか空回りして逆に人助けしちゃってます。

普通にめっちゃいい奴じゃんという印象。

 

【氷室のエキセントリックボックス】

1巻時点よりかなり心に表情が出てきてます。

スクランブルとの友情など、人らしい感情に戸惑っている姿がかなりいじらしくて、

この作品のの数少ない癒し。

 

2巻の結末と作品の魅力

結局2巻でも何かが大きく動いたわけでも乃音の問題が解決したわけでもなく、

収まるところに何とか収まったって結末なんですか、1巻同様、妙に読後感がすっきりしてるのが謎です

この不思議な感覚のせいでちっとも上手く感想書けやしない。(えー

こんだけ長々書いて、結局言いたいのは、よく分からないけど無性に面白い作品だったってことですからね。(えー

多分この不思議な感覚がこの作品の最大の魅力なんだと思います。

 

ルーシーとはいったい何のか

最後に、この作品のタイトルにあるルーシーという単語についてです。

人の名前っぽい響きですが、この作品にルーシーという人物は一切登場していません。

もしかしたらこの先重要なキャラとして登場するのかもしれませんが、2巻終了時点ではその気配すらないというのが現状です。

ちなみにルーシーという単語で真っ先に思い浮かぶのは、最初期に発見された猿人の名前なわけですが、

人に近いけど、人でない、人に進化しうるという意味で、もしかしたら人身御供とエキセントリックの存在を猿人に当てはめているのかなとも思えます。

・・・もし物語がすすんで、ルーシーという言葉が全然違う意味で使われいるとなったら、この文章を鼻で笑ってやってください。

 

<個人的名言・名シーン>

御剣はエキセントリックボックスを置いて写真を立てかけ直す。

そこはもう会うこのない父と、血の繋がっていない母と、二人の手を肩に置かれてぎこちなく笑う十二歳の自分がいた。

「……もうこれもいらないな」

昨日までの御剣は、この写真を見る度、胸に楔を打たれるような気分になっていた。

その楔をよこす写真を戒めか救済のように飾り続けていた。

けれどもう、その写真からなにかを訴えかけられることはなくなっていた。

悲しみはもう、なくなっていた。

(御剣乃音)

 

「まったく本当に、私もキミも……気持ち悪いなあ」

(夕凪アリス)

 

「さて、と」

「全部を投げ捨てて逃避行に走ったロミオとジュリエットの……私はいったいどっちの顎を粉砕してやればいいと思う?」

(夕凪アリス)

 

 

 

 

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白翼のポラリス 感想 ・・・幻想的な世界観が素晴らしい

 

 

これは僕がまだ父さんの「白翼」を継いで間もなかった頃、大袈裟かもしれないけど、星と星がぶつかるくらいの巡り合わせで出会った相棒と空を駆け、これまた大袈裟に言えば、僕らの暮らす小さな世界を守った時の話だ。

 

どこまでも続く空と海。はるか昔に陸地のほとんどを失った蒼き世界、ノア。人々は、いくつかの巨大な船に都市国家を作り、わずかな資源を争って暮らしていた。飛行機乗りの少年・シエルは、そんな“船国”を行き来し、荷物を運ぶ“スワロー”。愛機は父の遺した白い水上機“ポラリス”。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせず、他人との関わりに息苦しさを感じていた彼は、無人島に流れ着いた少女・ステラを助ける。素性も目的も、何も語らない彼女の依頼で、シエルはステラを乗せて飛び立つことに。その先には、世界の危機と巨大な陰謀が待ち受けていた――。紺碧を裂いて白翼が駆ける。あの空みたいに美しい、戦闘機ファンタジー。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10

 

感想

発売してすぐ読み終わってたんですけど、ずっと感想書かずに放置してしまってた作品その1です。

いや、放置してた理由については完全に八真八 真のせいです。(えー

つっても文才無いんでちょっとした感想書くのでも、多大な時間がかかるからラノベの新作読むのを優先してただけですが・・・(えー

というわけで第6回講談社ラノベ文庫新人賞「佳作」受賞作、『白翼のポラリス』の感想です

 

空と海、"青"い世界で紡がれる『飛行機ファンタジー』

作品紹介では戦闘機ファンタジーと書いてありますが、個人的なイメージとしては飛行機ファンタジーといった方がしっくりきますね。

主人公は軍人じゃなくて運び屋ですし。

 

ざくっと作品の世界観について説明すると・・・

物語の舞台は、陸地のほとんどが水の底に沈み、空と海しかないノアという世界。

その世界では、人々は海流に乗って移動する実行の浮島である船国で暮らしています。

この船国がそれぞれ独立した国になっているのですが、

土壌がそんなにあるわけでもなく、各国は少ない資源を取り合っているという事もあり、

それぞれの国の浮島がどのように周回しているのかを記録したストリームチャートを極秘扱いしているという設定になっています。浮島の位置が分かってしまったら資源を強奪するような戦いが起きてしまうということからも、ストリームチャームの重要性がわかるかと思います。

そんな国家間のストリームチャートを預かり、勇逸、古代の技術で製造された戦闘機で行き来ができる運び屋をスワローというのですが、主人公のシエルは伝説的なスワローだった父親から白翼という名を受け継ぎ、スワローとして生活しているってのがこの物語の冒頭になります。

 

ちょっと不思議な世界観ですが、よく練られているなぁという印象。

飛行機乗りの運び屋って設定自体はちょいちょい聞きますが、ほぼ海と船国で成り立っている「ノア」という世界との組み合わせは面白いなと思いました。それによってよりいっそう飛行気乗りの重要性が際立っているように感じましたね。

あと冒頭の世界観の説明部分が長すぎず、かつ分かりやすくてすんなり物語に没入することができました。

新人の作家さんなのにその辺のバランスは上手いなと思いました。

 

懐かしさすら感じる超王道のボーイミーツガール

この作品は徹頭徹尾主人公のシエルとヒロインのステラの出会いを描いた物語です。

極論ですが、ノアという世界もスワローという職業も、その他の設定も、この二人の出会いを彩るためのパーツとして

考えられたんじゃないかなってくらい、作者の方の「ボーイミーツガール」を描きたいんだ!っていう思いを感じました。

そんな二人の物語については、最初っから最後まで王道ど真ん中で展開していきます。

とある島で休暇中のシエルが、その島に流れ着いた謎の少女ステラを助けるところから二人の物語ははじまるわけですが、

まずこの最初の出会いからしてベタですよね。でも個人的にはボーイミーツガールものってこれっくらいベタな方が好きです。

むしろ最近はひねくれた展開がテンプレっぽい感じになっているので、ここまで直球な物語はどこか懐かしくも新鮮な感じがしますね。

 

その後シエルがスワローだと知ったステラは、自分をバトーという船国まで連れて行ってほしいという仕事の依頼をすることになります。

結局シエルは断り切れずに仕事の依頼を受けることになり、二人でバトーを目指すことになります。

 

どこか幻想的な雰囲気を感じる作品の空気感

この作品の中でも特に好きなのが、二人でバトーを目指すまでの道中の描写というか空気感です。

特にそこまで大きな出来事が起こるわけではなく(謎の敵機と遭遇するまでは)

比較的淡々とすすむわけですが、その間の二人の会話ややりとりに読んでいて不思議なノスタルジーを感じるんですよね。

上手く伝えられないんですが映画の『スタンドバイミー』を見た時やサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ時の何とも言えない感情に近いものを感じました。

カバーイラストから感じる雰囲気を一番描写しているのが、このバトーを目指している間の二人じゃないかなと思います

 

 

物語は静から動へ、臨場感あふれる飛行戦闘

この作品は起承転結という物語の基本に結構忠実な構成で描かれているのですが、冒頭~シエルとステラの出会い、バトーを目指している道中は比較的緩やかに物語は進んでいきます。

それが、バトーへの道中謎の敵機との空戦から紆余曲折を得てバトーに到着した辺り、物語でいうとまさに"転"の部分から一気に物語は加速して動き出します

特に謎の敵機シリウスとの再戦シーン、シャンデルにインメルマンターン、作者飛行戦闘好き過ぎだろってくらいの迫力ある戦闘からシエルの魂の叫び、内面描写までとにかく熱い!

この戦闘が間違いなく作品全体の山場であると言えます。

ただそこからエンディングまでの展開がちょっと強引だったかなという気がしました。バトーへの着水、国王との話し合い、バトー・ヴェセルの空戦への介入に関しては、正直ちょっと説得力が弱いというか「えっこんなりすんなりいくの?」という印象もありました。シリウス機との空中戦がクライマックスでその後は長いエピローグのようなものとの見方もできますが、ここでもう一つ山場があると、なお素晴らしかったという想いがあるだけに、少しだけ惜しいと感じました。

 

全体を通して・・・

王道で素直な物語なのと、作品全体を包みこむ空気感が澄んでいるので、読後感は非常に清清しいです

主人公とヒロインもとてもまっすぐなキャラで、時に青くさくも感じますが、それもまたこの作品の味なのかなとも感じています。この青くささがファンタジーでありながら青春物語としての側面を感じさせてくれているのかなと。

実際物語の冒頭は三年後の主人公が、自身の青春を回顧するような語りで始まってますし。

ラブコメとはまた違った癒しを感じたい人、ひねくれてない優しい物語を読みたい人は一度読んでみていただきたいなと思います。

あとカバーイラストが気に入った人は、ストーリーもカバーイラストのイメージまんまな雰囲気なので、迷わず手にとってみていただきたいですね。

 

<個人的名言・名シーン>

僕だって、お前がいなくなってからコイツと空を飛んできた!お前の知らない空を見てきた!お前の知らない人と出会ってきた!お前の知らない時間を生きてきた!

お前の名前は知らない!聞く気もない!

でも、僕の名前は覚えていけ!

(シエル・ミグラテル)

 

 

 

 







 

 

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<アニメ化&映画記念>サクラダリセット 感想

 

 

 

「ー猫を助けて、犬を助けて、できるなら人を助けて。

 

 そんなことをしていきましょう、これからは」

 

「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ──。能力者が集う街、咲良田。見聞きしたことを絶対に忘れない能力を持つ高校生・浅井ケイ。世界を三日巻き戻す能力・リセットを持つ少女・春埼美空。ふたりが力を合わせれば、過去をやり直し、現在を変えることができる。しかし二年前にリセットが原因で、ひとりの少女が命を落としていた。

時間を巻き戻し、人々の悲しみを取り除くふたりの奉仕活動は、少女への贖罪なのか?不可思議が日常となった能力者の街・咲良田に生きる少年と少女の優しい物語。

 

八真八 真の満足度・・・★★★★★★★ 10/10

感想

『すかすか』に続くアニメ放映記念第2弾ということで『サクラダリセット』の感想です

それにしてもこのシリーズ、最終巻が出たのが2012年。まさか完結から5年たったこのタイミングでアニメ化されるとは思ってもみませんでした。当時の僕のサクラダリセットに対する感想としては、"すごく高い評価を受けるだろうけども、メジャーになるのは難しいだろうな"というものでした。

ちょっと古い例えですが、SAOとかのライトノベルの王道人気作がとサクラダリセットの立ち位置って映画の『タイタニック』と『グッド・ウィル・ハンティング』みたいなんですよね。

『タイタニック』は1998年に公開されるや、世界中で社会現象を起こし、アカデミー賞では14部門でノミネート、うち11部門で受賞しており、この年のアカデミー賞の主要部門はほぼタイタニックの独壇場ともいえるほどの化け物的人気を博した作品なんですが、実はこの年のアカデミー賞で脚本賞を受賞したのが『グッド・ウィル・ハンティング』なんです。この作品は男の友情を描いた作品なんですが、大きな事件が起こるわけでも派手な映像で見せるわけでもなく、あんまり映画見ない人の中には知らない人も結構いるくらいなんですが、とにかくストーリーが素晴らしくて、映画好きの人たちの中でもかなり評価の作品なんです。

『サクラダリセット』も同じで、派手なバトルやスピーディな展開で魅せる作品ではない代わりに、綿密に織り込まれたストーリーの美しさと作品を包み込むやさしい雰囲気がこの作品の魅力となってるんですね。だから読んだ人には素晴らしいと思ってもらえるだろうけど、どうしてもバトルモノとかラブコメものとかと、比べるとエンターティメントとしては地味な印象になっちゃうので、その辺がラノベファンからしたらどうなのかなと。

だから当時のぼくの心情としては

「もったいないなサクラダリセット」「俺にとってはこんなにも面白いのに」

「おれだけは認めてやろう」「ちゃんと大事に保管しておくからな」

って感じだったんですね。

僕としては本当に良い作品なので、もっと人気出て多くの人に知ってもらいたいなと思っていたわけです。そういった意味では今回のアニメ化は本当に待望だったと言えますね

 

作品全体を取り巻く空気感と読後の余韻

綿密に計算された咲良田町と能力の設定だったり、美しいストーリー構成だったり、この作品の素晴らしい所はいっぱいありますが、この作品の一番の特徴は?と言われたら、僕は独特の"空気感"だと答えると思います。作品全体がライトノベル作品の中でも一種独特の、どこか叙情的な空気感をかもし出しているんですよね。その空気感こそが『サクラダリセット』を『サクラダリセット』たらしめている一番の特徴じゃないかなと。

その原因はどこか淡々としたケイと春埼の会話だったり、透明感を感じさせる文章にあると思います。

なんていうか会話も文章も不思議な言い回しがあるというか、ライトノベルより一般小説読んでるような文体なんですよね。ちょっと村上春樹の言い回しに似てるなとも思いました。

もちろん村上春樹ほど個性的な比喩表現をしたりするわけではないですけどね。

 

正式な依頼だし―とは続けない。もしかしたらこれは正式な依頼ではないのかもしれない。

 

っていう文章があるんですが、

この「もしかしたら~かもしれない」「あるいは~かもしれない」って表現は作中にけっこう登場するんですが、村上春樹も結構こういうどっちつかずの表現多いんですよね。しかもどっちでも物語には何ら影響しないという...

あとは、

 

猫は、室内にいるのなら、少なくともこの雨に濡れることはないだろう

 

っていうちょっと詩的な表現だったりが、なんとなく似てるなと。

ただ読後に幸せな気持ちになるとことか、ちゃんと伏線回収するとことかも考えると、むしろ伊坂幸太郎に近いのか?

ただ逆にこういうちょっと叙情的な文章ってラノベではほとんどみないですね。

だからこの作品の持つ空気感が独特に感じるのかもしれません。

あと村上春樹の雰囲気以外に、PCゲームの『AIR』とか『kanon』(どちらもkeyの作品)が持つ郷愁めいた雰囲気にも似てるなと感じました。

ただあちらは歌詞のような文章のリズムと音楽の相乗効果でそういう空気感を出してるのに対して、こちらは文章でそれを表現しているのは素直にすごいなと思います。とにかくこの空気感が読んでてすごく心地よく、また読後に何とも言えない余韻を残してくれています

 

美しい言葉で綴られる美しい文章、美しい物語

綺麗な言葉で会話をしよう

汚いものは、全部どこかに押し込んで。

 

これは1巻で非通知くんという情報屋(のような人)が主人公の浅井ケイと初めて会話したときに言うセリフです。

この非通知くんというのは超ド級の潔癖症で、このセリフはそんな彼のキャラクターをよく表しているのですが、

それ以上にこの美しいセリフは作品をよく表しているなと思います。

この作品自体が終始、すごく澄んだ美しい言葉で語られているように感じます。

汚いセリフが使われていた記憶が全くありません。あるいはどこかで使われていたりするかもしれないですが、印象に全く残らないなら、同じことだと思います。

物語は優しく、時間はゆっくりと流れていき、幸せな結末に向かって物語は収束していきます。

何とも言えない幸せな気持ちを感じることができるこの読後感は唯一無二であると言いたいですね。

 

サブタイトルのセンス

えっ?そこっ!?と思うことなかれ。なにしろ僕が初めてこの作品を読んだのは1巻の

『CAT,GHOST and RECORUTION SUNDAY』というサブタイトルに魅かれたからなのです。

ちなみ各巻のサブタイトルは

 

1巻『CAT,GHOST and RECORUTION SUNDAY』(猫と幽霊と日曜日の革命)

2巻『WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』(魔女と思い出と赤い目をした女の子)

3巻『MEMORY in CHILDREN』(機械仕掛けの選択)

4巻『GOODBYE is not EASY WORD to SAY』(さよならがまだ喉につかえていた)

5巻『ONE HAND EDEN』(片手の楽園)

6巻『BOY, GIRL and --』(少年と少女と)

7巻『BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA』(少年と少女と正しさを巡る物語 )

 

となってます。( )内は角川文庫版のサブタイトルとなっています。

まずどちらも、読んだ際の響きがとにかくかっこいいということ(えー

いや、これは単なる好みなんですが、最近のラノベは直接的なタイトルが多いですがこういう意味深めいたサブタイトルの方がかっこいいと思うんですよね。若干の厨二心をくすぶられる感じです。

ふたつめに、これってサブタイトル単体だと意味不明なんですが、その巻を読んでみると、めちゃくちゃ端的に内容を表してるんですよね。意味深めいてるけど意味不明で、ちゃんと意味のある、そんなサブタイトルの意味について考えながら読んでみても面白いと思いますよ。

あと単純にこのサブタイトルがかっこいいと思った僕と同志の方は中身のセリフや言葉選びのセンスについても太鼓判を押しておきます。

 

小説としての圧倒的完成度

1巻発売から完結までの約3年間で全7巻。一切の無駄が無く、一切の不足も無い。綿密に練りこまれたストーリー展開と伏線。ほんとプロットとか見てみたいくらい完璧な構成だと思います。

特に圧巻なのは1巻の構成ですね。ストーリー全体の導入部分という役割も担い、今後の伏線を含みつつ、それ単巻としても物語が完成してるんですよね。極論、たとえ1巻でサクラダリセットが終わっていたとしても僕は手放しですばらしい作品だったと褒め称えていたと思います。

それくらいこの小説のストーリーは、全てが考え込まれていて美しいと感じるものでした。

今から7冊も読むのはなぁと思ってる方は、まず1巻だけでも読んでみてください。それ単巻でも一つの映画にできるくらい、物語が完成されています。

 

あと、上でもちらっと触れてますが、このサクラダリセットは元々角川スニーカー文庫から出版されているんですが、2016年に角川文庫からも一般小説として発売されいます。

正直カバーイラストはスニーカー文庫版よりこっちの方が好みですね!(えー

じゃあ角川文庫版をお勧めするかといわれると、角川文庫版には口絵や挿絵がないので、難しいところですね。

サクラダリセットって挿絵の使い方も独特で好きなんで、それを見てほしい思いもあります。

 

こんな感じで、文章と同じページの端に挿入される挿絵がたまにあるんですが、これが文章と一体となった感じで心に響いてくるんですよね。

(もちろん普通に1ページまるまる使った挿絵もありますよ)

挿絵が演出としてすごく機能していると思います。

ぶっちゃけ迷ったら両方買えといいたい!(えー

実際私はスニーカー文庫版も角川文庫版も両方買ってます。。。

 

 

角川スニーカー文庫
角川文庫

 





 

 

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<電撃大賞受賞作>君は月夜に光り輝く 感想

 

 

私の、渡良瀬まみずの、本当の、最後のお願いを、岡田卓也君に言います。

聞いてください

 

大切な人の死から、どこかなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」で入院したままの少女がいた。月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。余命わずかな彼女に、死ぬまでにしたいことがあると知り…「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」「本当に?」この約束から、止まっていた僕の時間が再び動きはじめた。今を生きるすべての人に届けたい最高のラブストーリー。

 

八真八 真の満足度・・・★★★★★★★★★ 9/10

感想

物語を読んだり、見たりするのが好きな人は少なからず心を揺さぶられた作品というものがあると思います。

これは単純に面白いとか好きといった感情とはまったく別次元というか、種類が違う感情なんですよね。

心を締め付けられるというか、抉られる感覚が近いかなと。

で、まちがいなくこの作品は心を揺さぶられる作品であると思います。

僕は個人的に「泣ける」っていう表現は簡単に使うべき言葉じゃないので、あまり好きじゃないんですが、あえて「泣ける」作品であると言いたいですね。

 

00年代を彷彿とさせるボーイ・ミーツ・ガールもの

物語は主人公の岡田卓也がヒロインの渡良瀬まみずが入院している病院へ見舞いに行き、二人が出会うところから始まります。

その後主人公が入院中のまみずの代わりに「死ぬまでにしたいこと」を実行して、それをまみずに伝えるという行為を繰り返しながら二人の心は次第に縮まっていき・・・という感じで物語は進んでいきます。

この作品を読んで(冷静になってから)思ったのは、ラノベっぽくないなと。正確にいうと今のラノベっぽくない

男女の恋愛の話というと、今主流なのはラブコメ要素が強い作品かなと思うんです。

人気作でいうと、俺ガイルや冴えカノ、俺妹とかがそうですね。

それに対してこの作品は決してラブコメではない。あえてジャンルをつけるならボーイミーツガールものって感じですね。

それはどちらかというと00年代の恋愛ものやストーリー性の高い作品を思い出させるジャンルかなと思います。

『イリヤの空、UFOの夏』『半分の月がのぼる空』なんかがまさにそれですね。

そしてそれは冒頭で述べた「心揺さぶられる」っていうフレーズとも深く繋がっていくんですよね。

 

(C)秋山瑞人/ メディアワークス

<イリヤの空、UFOの夏>4冊完結という決して長くない作品ながら、読者に強烈な印象を残した

これまた00年代を彷彿とさせる泣きゲーとの相似点

泣ける物語・ラノベというとどんな作品を想像しますか?

最近だと『終末なにしてますか?シリーズ』、少し前だと『とある飛行士の追憶』なんかがあると思います。

ただ現代の日本を舞台にした作品で感動的な物語として圧倒的に多いのはボーイミーツガールものが多かったのと同じ00年代だと思うんですよね。

上でもあげた『イリヤの空、UFOの夏』『半分の月がのぼる空』。あと個人的にラノベの中で最も切ない物語だと思っている『LAST KISS』なんかが代表作じゃないかなと思います。

ここからは個人的な意見なんですが、この00年代に感動系のラノベが多かったのはPCゲームからの影響が強くあるんじゃないかなと思います。

この頃って98年発売の『ONE 〜輝く季節へ〜』(Tactics)から始まり、『kanon』『AIR』『CLANNAD』(共にkey)等へと続く、いわゆる「泣きゲー」の黄金期だったんですよね。何しろ『AIR』のマスターアップ時には号外が配られ、初回版発売日には行列ができるほどの人気だったのですから。

key作品以外にも『家族計画』『CROSS†CHANNEL』『銀色』『水夏』などあげだしたらキリがないほど、感動的な物語を主としたPCゲームがあふれていたのが00年代の特に前半だったわけです。

正直言って、僕が「泣ける」というフレーズを軽々しく使いたくないのも、これらの作品への思い入れが強すぎて、簡単に同列の作品みたいな表現をしたくないという感傷的な理由なんですよね。

なぜここで過去のラノベやゲームの話をするかというと、これらの作品と『君は月夜に光り輝く』がとても似ていると感じたからです。

それは物語の内容もこの頃に近いというのもあるんですが、それ以上に作品全体の結末を予感させる雰囲気とか、読後の喪失感とかいったものに、

上にあげた作品と同じような印象を感じたわけです。

楽しいやり取りの中にもどこかつきまとう不安だったり、終盤での圧倒的に魂を揺さぶられるようなセリフ回しだったりがこちらの琴線にモロに触れてくんですよね。

だからこそ、冒頭で僕はあえて「泣ける」作品であると言ったわけです。

まあ、実際泣いたからってのが一番の理由ですが(えー

 

(C)key/ VisualArt's

<kanon/AIR>当時を知る人はこのシーンだけで泣けてくる人も多いのでは。

高い文章力、丁寧に描かれた卓也とまみずの関係

この作品、物語の進行は非常にゆったりと進んでいくんですが、その分卓也のまみずの距離感というか、やり取りが非常に丁寧に、考えて描かれているなという印象でした。

例えばまみずに靴をプレゼントするシーン、この前のシーンでまみずに靴のサイズを聞く描写があるんですが、まず最初に胸のサイズを聞くやりとりがあるわけです。実はこのさらに前に友人の香山から冗談でまみずの3サイズを聞いてくれよと言われるやりとりがあって、最初このシーン読んだ時はその伏線の回収だと思っていたんですが、靴をプレゼントするシーンの伏線にもなっていたんですね。こんな感じでいろんな伏線が絡み合ってどんどん読者を卓也とまみずのやり取りに没入させていく、その描き方が非常にきれいで上手だなと感じました。

あと、文章力自体も新人の方とは思えないくらい高いと思います。

なんていうかラノベと一般小説の中間のような文章ですね。

多分普段ラノベ中心に読んでる人には一般小説っぽい、逆に一般小説読んでる人にはラノベっぽいと感じるかもしれません。

クセは少ないですし、きれいな文章で一文もそんな長くなく、分かりやすい表現なので、普段ラノベを読まないような人、というか普段あまり本を読まない人にも、ぜひ読んでもらいたい作品だなと思いました。

 

結末について

結末については何を話しても圧倒的なネタバレになるので一言だけ。

渡良瀬まみずは間違いなく幸せだった。ならこれは疑いようもなく、幸せな物語である。

もちろんどう感じるかは読者の自由だと思います。これはあくまで僕の意見ということで。

 

<個人的名言・名シーン>

カッコつけてんじゃねぇよ。

でもカッコいいと素直に思った。

(岡田卓也)

 

私は、これから先、生きたらどうなるのか、知りたいです

(渡良瀬まみず)

 

私のかわりに生きて、教えてください。

(渡良瀬まみず)

 

 

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