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白翼のポラリス 感想 ・・・幻想的な世界観が素晴らしい

 

 

これは僕がまだ父さんの「白翼」を継いで間もなかった頃、大袈裟かもしれないけど、星と星がぶつかるくらいの巡り合わせで出会った相棒と空を駆け、これまた大袈裟に言えば、僕らの暮らす小さな世界を守った時の話だ。

 

どこまでも続く空と海。はるか昔に陸地のほとんどを失った蒼き世界、ノア。人々は、いくつかの巨大な船に都市国家を作り、わずかな資源を争って暮らしていた。飛行機乗りの少年・シエルは、そんな“船国”を行き来し、荷物を運ぶ“スワロー”。愛機は父の遺した白い水上機“ポラリス”。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせず、他人との関わりに息苦しさを感じていた彼は、無人島に流れ着いた少女・ステラを助ける。素性も目的も、何も語らない彼女の依頼で、シエルはステラを乗せて飛び立つことに。その先には、世界の危機と巨大な陰謀が待ち受けていた――。紺碧を裂いて白翼が駆ける。あの空みたいに美しい、戦闘機ファンタジー。

 

八真八 真の総合評価・・・★★★★★★★★☆ 8.5/10

 

感想

発売してすぐ読み終わってたんですけど、ずっと感想書かずに放置してしまってた作品その1です。

いや、放置してた理由については完全に八真八 真のせいです。(えー

つっても文才無いんでちょっとした感想書くのでも、多大な時間がかかるからラノベの新作読むのを優先してただけですが・・・(えー

というわけで第6回講談社ラノベ文庫新人賞「佳作」受賞作、『白翼のポラリス』の感想です

 

空と海、"青"い世界で紡がれる『飛行機ファンタジー』

作品紹介では戦闘機ファンタジーと書いてありますが、個人的なイメージとしては飛行機ファンタジーといった方がしっくりきますね。

主人公は軍人じゃなくて運び屋ですし。

 

ざくっと作品の世界観について説明すると・・・

物語の舞台は、陸地のほとんどが水の底に沈み、空と海しかないノアという世界。

その世界では、人々は海流に乗って移動する実行の浮島である船国で暮らしています。

この船国がそれぞれ独立した国になっているのですが、

土壌がそんなにあるわけでもなく、各国は少ない資源を取り合っているという事もあり、

それぞれの国の浮島がどのように周回しているのかを記録したストリームチャートを極秘扱いしているという設定になっています。浮島の位置が分かってしまったら資源を強奪するような戦いが起きてしまうということからも、ストリームチャームの重要性がわかるかと思います。

そんな国家間のストリームチャートを預かり、勇逸、古代の技術で製造された戦闘機で行き来ができる運び屋をスワローというのですが、主人公のシエルは伝説的なスワローだった父親から白翼という名を受け継ぎ、スワローとして生活しているってのがこの物語の冒頭になります。

 

ちょっと不思議な世界観ですが、よく練られているなぁという印象。

飛行機乗りの運び屋って設定自体はちょいちょい聞きますが、ほぼ海と船国で成り立っている「ノア」という世界との組み合わせは面白いなと思いました。それによってよりいっそう飛行気乗りの重要性が際立っているように感じましたね。

あと冒頭の世界観の説明部分が長すぎず、かつ分かりやすくてすんなり物語に没入することができました。

新人の作家さんなのにその辺のバランスは上手いなと思いました。

 

懐かしさすら感じる超王道のボーイミーツガール

この作品は徹頭徹尾主人公のシエルとヒロインのステラの出会いを描いた物語です。

極論ですが、ノアという世界もスワローという職業も、その他の設定も、この二人の出会いを彩るためのパーツとして

考えられたんじゃないかなってくらい、作者の方の「ボーイミーツガール」を描きたいんだ!っていう思いを感じました。

そんな二人の物語については、最初っから最後まで王道ど真ん中で展開していきます。

とある島で休暇中のシエルが、その島に流れ着いた謎の少女ステラを助けるところから二人の物語ははじまるわけですが、

まずこの最初の出会いからしてベタですよね。でも個人的にはボーイミーツガールものってこれっくらいベタな方が好きです。

むしろ最近はひねくれた展開がテンプレっぽい感じになっているので、ここまで直球な物語はどこか懐かしくも新鮮な感じがしますね。

 

その後シエルがスワローだと知ったステラは、自分をバトーという船国まで連れて行ってほしいという仕事の依頼をすることになります。

結局シエルは断り切れずに仕事の依頼を受けることになり、二人でバトーを目指すことになります。

 

どこか幻想的な雰囲気を感じる作品の空気感

この作品の中でも特に好きなのが、二人でバトーを目指すまでの道中の描写というか空気感です。

特にそこまで大きな出来事が起こるわけではなく(謎の敵機と遭遇するまでは)

比較的淡々とすすむわけですが、その間の二人の会話ややりとりに読んでいて不思議なノスタルジーを感じるんですよね。

上手く伝えられないんですが映画の『スタンドバイミー』を見た時やサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ時の何とも言えない感情に近いものを感じました。

カバーイラストから感じる雰囲気を一番描写しているのが、このバトーを目指している間の二人じゃないかなと思います

 

 

物語は静から動へ、臨場感あふれる飛行戦闘

この作品は起承転結という物語の基本に結構忠実な構成で描かれているのですが、冒頭~シエルとステラの出会い、バトーを目指している道中は比較的緩やかに物語は進んでいきます。

それが、バトーへの道中謎の敵機との空戦から紆余曲折を得てバトーに到着した辺り、物語でいうとまさに"転"の部分から一気に物語は加速して動き出します

特に謎の敵機シリウスとの再戦シーン、シャンデルにインメルマンターン、作者飛行戦闘好き過ぎだろってくらいの迫力ある戦闘からシエルの魂の叫び、内面描写までとにかく熱い!

この戦闘が間違いなく作品全体の山場であると言えます。

ただそこからエンディングまでの展開がちょっと強引だったかなという気がしました。バトーへの着水、国王との話し合い、バトー・ヴェセルの空戦への介入に関しては、正直ちょっと説得力が弱いというか「えっこんなりすんなりいくの?」という印象もありました。シリウス機との空中戦がクライマックスでその後は長いエピローグのようなものとの見方もできますが、ここでもう一つ山場があると、なお素晴らしかったという想いがあるだけに、少しだけ惜しいと感じました。

 

全体を通して・・・

王道で素直な物語なのと、作品全体を包みこむ空気感が澄んでいるので、読後感は非常に清清しいです

主人公とヒロインもとてもまっすぐなキャラで、時に青くさくも感じますが、それもまたこの作品の味なのかなとも感じています。この青くささがファンタジーでありながら青春物語としての側面を感じさせてくれているのかなと。

実際物語の冒頭は三年後の主人公が、自身の青春を回顧するような語りで始まってますし。

ラブコメとはまた違った癒しを感じたい人、ひねくれてない優しい物語を読みたい人は一度読んでみていただきたいなと思います。

あとカバーイラストが気に入った人は、ストーリーもカバーイラストのイメージまんまな雰囲気なので、迷わず手にとってみていただきたいですね。

 

<個人的名言・名シーン>

僕だって、お前がいなくなってからコイツと空を飛んできた!お前の知らない空を見てきた!お前の知らない人と出会ってきた!お前の知らない時間を生きてきた!

お前の名前は知らない!聞く気もない!

でも、僕の名前は覚えていけ!

(シエル・ミグラテル)

 

 

 

 







 

 

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<アニメ化&映画記念>サクラダリセット 感想

 

 

 

「ー猫を助けて、犬を助けて、できるなら人を助けて。

 

 そんなことをしていきましょう、これからは」

 

「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ──。能力者が集う街、咲良田。見聞きしたことを絶対に忘れない能力を持つ高校生・浅井ケイ。世界を三日巻き戻す能力・リセットを持つ少女・春埼美空。ふたりが力を合わせれば、過去をやり直し、現在を変えることができる。しかし二年前にリセットが原因で、ひとりの少女が命を落としていた。

時間を巻き戻し、人々の悲しみを取り除くふたりの奉仕活動は、少女への贖罪なのか?不可思議が日常となった能力者の街・咲良田に生きる少年と少女の優しい物語。

 

八真八 真の総合評価・・・★★★★★★★ 10/10

感想

『すかすか』に続くアニメ放映記念第2弾ということで『サクラダリセット』の感想です

それにしてもこのシリーズ、最終巻が出たのが2012年。まさか完結から5年たったこのタイミングでアニメ化されるとは思ってもみませんでした。当時の僕のサクラダリセットに対する感想としては、"すごく高い評価を受けるだろうけども、メジャーになるのは難しいだろうな"というものでした。

ちょっと古い例えですが、SAOとかのライトノベルの王道人気作がとサクラダリセットの立ち位置って映画の『タイタニック』と『グッド・ウィル・ハンティング』みたいなんですよね。

『タイタニック』は1998年に公開されるや、世界中で社会現象を起こし、アカデミー賞では14部門でノミネート、うち11部門で受賞しており、この年のアカデミー賞の主要部門はほぼタイタニックの独壇場ともいえるほどの化け物的人気を博した作品なんですが、実はこの年のアカデミー賞で脚本賞を受賞したのが『グッド・ウィル・ハンティング』なんです。この作品は男の友情を描いた作品なんですが、大きな事件が起こるわけでも派手な映像で見せるわけでもなく、あんまり映画見ない人の中には知らない人も結構いるくらいなんですが、とにかくストーリーが素晴らしくて、映画好きの人たちの中でもかなり評価の作品なんです。

『サクラダリセット』も同じで、派手なバトルやスピーディな展開で魅せる作品ではない代わりに、綿密に織り込まれたストーリーの美しさと作品を包み込むやさしい雰囲気がこの作品の魅力となってるんですね。だから読んだ人には素晴らしいと思ってもらえるだろうけど、どうしてもバトルモノとかラブコメものとかと、比べるとエンターティメントとしては地味な印象になっちゃうので、その辺がラノベファンからしたらどうなのかなと。

だから当時のぼくの心情としては

「もったいないなサクラダリセット」「俺にとってはこんなにも面白いのに」

「おれだけは認めてやろう」「ちゃんと大事に保管しておくからな」

って感じだったんですね。

僕としては本当に良い作品なので、もっと人気出て多くの人に知ってもらいたいなと思っていたわけです。そういった意味では今回のアニメ化は本当に待望だったと言えますね

 

作品全体を取り巻く空気感と読後の余韻

綿密に計算された咲良田町と能力の設定だったり、美しいストーリー構成だったり、この作品の素晴らしい所はいっぱいありますが、この作品の一番の特徴は?と言われたら、僕は独特の"空気感"だと答えると思います。作品全体がライトノベル作品の中でも一種独特の、どこか叙情的な空気感をかもし出しているんですよね。その空気感こそが『サクラダリセット』を『サクラダリセット』たらしめている一番の特徴じゃないかなと。

その原因はどこか淡々としたケイと春埼の会話だったり、透明感を感じさせる文章にあると思います。

なんていうか会話も文章も不思議な言い回しがあるというか、ライトノベルより一般小説読んでるような文体なんですよね。ちょっと村上春樹の言い回しに似てるなとも思いました。

もちろん村上春樹ほど個性的な比喩表現をしたりするわけではないですけどね。

 

正式な依頼だし―とは続けない。もしかしたらこれは正式な依頼ではないのかもしれない。

 

っていう文章があるんですが、

この「もしかしたら~かもしれない」「あるいは~かもしれない」って表現は作中にけっこう登場するんですが、村上春樹も結構こういうどっちつかずの表現多いんですよね。しかもどっちでも物語には何ら影響しないという...

あとは、

 

猫は、室内にいるのなら、少なくともこの雨に濡れることはないだろう

 

っていうちょっと詩的な表現だったりが、なんとなく似てるなと。

ただ読後に幸せな気持ちになるとことか、ちゃんと伏線回収するとことかも考えると、むしろ伊坂幸太郎に近いのか?

ただ逆にこういうちょっと叙情的な文章ってラノベではほとんどみないですね。

だからこの作品の持つ空気感が独特に感じるのかもしれません。

あと村上春樹の雰囲気以外に、PCゲームの『AIR』とか『kanon』(どちらもkeyの作品)が持つ郷愁めいた雰囲気にも似てるなと感じました。

ただあちらは歌詞のような文章のリズムと音楽の相乗効果でそういう空気感を出してるのに対して、こちらは文章でそれを表現しているのは素直にすごいなと思います。とにかくこの空気感が読んでてすごく心地よく、また読後に何とも言えない余韻を残してくれています

 

美しい言葉で綴られる美しい文章、美しい物語

綺麗な言葉で会話をしよう

汚いものは、全部どこかに押し込んで。

 

これは1巻で非通知くんという情報屋(のような人)が主人公の浅井ケイと初めて会話したときに言うセリフです。

この非通知くんというのは超ド級の潔癖症で、このセリフはそんな彼のキャラクターをよく表しているのですが、

それ以上にこの美しいセリフは作品をよく表しているなと思います。

この作品自体が終始、すごく澄んだ美しい言葉で語られているように感じます。

汚いセリフが使われていた記憶が全くありません。あるいはどこかで使われていたりするかもしれないですが、印象に全く残らないなら、同じことだと思います。

物語は優しく、時間はゆっくりと流れていき、幸せな結末に向かって物語は収束していきます。

何とも言えない幸せな気持ちを感じることができるこの読後感は唯一無二であると言いたいですね。

 

サブタイトルのセンス

えっ?そこっ!?と思うことなかれ。なにしろ僕が初めてこの作品を読んだのは1巻の

『CAT,GHOST and RECORUTION SUNDAY』というサブタイトルに魅かれたからなのです。

ちなみ各巻のサブタイトルは

 

1巻『CAT,GHOST and RECORUTION SUNDAY』(猫と幽霊と日曜日の革命)

2巻『WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』(魔女と思い出と赤い目をした女の子)

3巻『MEMORY in CHILDREN』(機械仕掛けの選択)

4巻『GOODBYE is not EASY WORD to SAY』(さよならがまだ喉につかえていた)

5巻『ONE HAND EDEN』(片手の楽園)

6巻『BOY, GIRL and --』(少年と少女と)

7巻『BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA』(少年と少女と正しさを巡る物語 )

 

となってます。( )内は角川文庫版のサブタイトルとなっています。

まずどちらも、読んだ際の響きがとにかくかっこいいということ(えー

いや、これは単なる好みなんですが、最近のラノベは直接的なタイトルが多いですがこういう意味深めいたサブタイトルの方がかっこいいと思うんですよね。若干の厨二心をくすぶられる感じです。

ふたつめに、これってサブタイトル単体だと意味不明なんですが、その巻を読んでみると、めちゃくちゃ端的に内容を表してるんですよね。意味深めいてるけど意味不明で、ちゃんと意味のある、そんなサブタイトルの意味について考えながら読んでみても面白いと思いますよ。

あと単純にこのサブタイトルがかっこいいと思った僕と同志の方は中身のセリフや言葉選びのセンスについても太鼓判を押しておきます。

 

小説としての圧倒的完成度

1巻発売から完結までの約3年間で全7巻。一切の無駄が無く、一切の不足も無い。綿密に練りこまれたストーリー展開と伏線。ほんとプロットとか見てみたいくらい完璧な構成だと思います。

特に圧巻なのは1巻の構成ですね。ストーリー全体の導入部分という役割も担い、今後の伏線を含みつつ、それ単巻としても物語が完成してるんですよね。極論、たとえ1巻でサクラダリセットが終わっていたとしても僕は手放しですばらしい作品だったと褒め称えていたと思います。

それくらいこの小説のストーリーは、全てが考え込まれていて美しいと感じるものでした。

今から7冊も読むのはなぁと思ってる方は、まず1巻だけでも読んでみてください。それ単巻でも一つの映画にできるくらい、物語が完成されています。

 

あと、上でもちらっと触れてますが、このサクラダリセットは元々角川スニーカー文庫から出版されているんですが、2016年に角川文庫からも一般小説として発売されいます。

正直カバーイラストはスニーカー文庫版よりこっちの方が好みですね!(えー

じゃあ角川文庫版をお勧めするかといわれると、角川文庫版には口絵や挿絵がないので、難しいところですね。

サクラダリセットって挿絵の使い方も独特で好きなんで、それを見てほしい思いもあります。

 

こんな感じで、文章と同じページの端に挿入される挿絵がたまにあるんですが、これが文章と一体となった感じで心に響いてくるんですよね。

(もちろん普通に1ページまるまる使った挿絵もありますよ)

挿絵が演出としてすごく機能していると思います。

ぶっちゃけ迷ったら両方買えといいたい!(えー

実際私はスニーカー文庫版も角川文庫版も両方買ってます。。。

 

 

角川スニーカー文庫
角川文庫

 





 

 

感想 ライトノベル感想    コメント:0

<電撃大賞受賞作>君は月夜に光り輝く 感想

 

 

私の、渡良瀬まみずの、本当の、最後のお願いを、岡田卓也君に言います。

聞いてください

 

大切な人の死から、どこかなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」で入院したままの少女がいた。月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。余命わずかな彼女に、死ぬまでにしたいことがあると知り…「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」「本当に?」この約束から、止まっていた僕の時間が再び動きはじめた。今を生きるすべての人に届けたい最高のラブストーリー。

 

八真八 真の総合評価・・・★★★★★★★★★ 9/10

感想

物語を読んだり、見たりするのが好きな人は少なからず心を揺さぶられた作品というものがあると思います。

これは単純に面白いとか好きといった感情とはまったく別次元というか、種類が違う感情なんですよね。

心を締め付けられるというか、抉られる感覚が近いかなと。

で、まちがいなくこの作品は心を揺さぶられる作品であると思います。

僕は個人的に「泣ける」っていう表現は簡単に使うべき言葉じゃないので、あまり好きじゃないんですが、あえて「泣ける」作品であると言いたいですね。

 

00年代を彷彿とさせるボーイ・ミーツ・ガールもの

物語は主人公の岡田卓也がヒロインの渡良瀬まみずが入院している病院へ見舞いに行き、二人が出会うところから始まります。

その後主人公が入院中のまみずの代わりに「死ぬまでにしたいこと」を実行して、それをまみずに伝えるという行為を繰り返しながら二人の心は次第に縮まっていき・・・という感じで物語は進んでいきます。

この作品を読んで(冷静になってから)思ったのは、ラノベっぽくないなと。正確にいうと今のラノベっぽくない

男女の恋愛の話というと、今主流なのはラブコメ要素が強い作品かなと思うんです。

人気作でいうと、俺ガイルや冴えカノ、俺妹とかがそうですね。

それに対してこの作品は決してラブコメではない。あえてジャンルをつけるならボーイミーツガールものって感じですね。

それはどちらかというと00年代の恋愛ものやストーリー性の高い作品を思い出させるジャンルかなと思います。

『イリヤの空、UFOの夏』『半分の月がのぼる空』なんかがまさにそれですね。

そしてそれは冒頭で述べた「心揺さぶられる」っていうフレーズとも深く繋がっていくんですよね。

 

(C)秋山瑞人/ メディアワークス

<イリヤの空、UFOの夏>4冊完結という決して長くない作品ながら、読者に強烈な印象を残した

これまた00年代を彷彿とさせる泣きゲーとの相似点

泣ける物語・ラノベというとどんな作品を想像しますか?

最近だと『終末なにしてますか?シリーズ』、少し前だと『とある飛行士の追憶』なんかがあると思います。

ただ現代の日本を舞台にした作品で感動的な物語として圧倒的に多いのはボーイミーツガールものが多かったのと同じ00年代だと思うんですよね。

上でもあげた『イリヤの空、UFOの夏』『半分の月がのぼる空』。あと個人的にラノベの中で最も切ない物語だと思っている『LAST KISS』なんかが代表作じゃないかなと思います。

ここからは個人的な意見なんですが、この00年代に感動系のラノベが多かったのはPCゲームからの影響が強くあるんじゃないかなと思います。

この頃って98年発売の『ONE 〜輝く季節へ〜』(Tactics)から始まり、『kanon』『AIR』『CLANNAD』(共にkey)等へと続く、いわゆる「泣きゲー」の黄金期だったんですよね。何しろ『AIR』のマスターアップ時には号外が配られ、初回版発売日には行列ができるほどの人気だったのですから。

key作品以外にも『家族計画』『CROSS†CHANNEL』『銀色』『水夏』などあげだしたらキリがないほど、感動的な物語を主としたPCゲームがあふれていたのが00年代の特に前半だったわけです。

正直言って、僕が「泣ける」というフレーズを軽々しく使いたくないのも、これらの作品への思い入れが強すぎて、簡単に同列の作品みたいな表現をしたくないという感傷的な理由なんですよね。

なぜここで過去のラノベやゲームの話をするかというと、これらの作品と『君は月夜に光り輝く』がとても似ていると感じたからです。

それは物語の内容もこの頃に近いというのもあるんですが、それ以上に作品全体の結末を予感させる雰囲気とか、読後の喪失感とかいったものに、

上にあげた作品と同じような印象を感じたわけです。

楽しいやり取りの中にもどこかつきまとう不安だったり、終盤での圧倒的に魂を揺さぶられるようなセリフ回しだったりがこちらの琴線にモロに触れてくんですよね。

だからこそ、冒頭で僕はあえて「泣ける」作品であると言ったわけです。

まあ、実際泣いたからってのが一番の理由ですが(えー

 

(C)key/ VisualArt's

<kanon/AIR>当時を知る人はこのシーンだけで泣けてくる人も多いのでは。

高い文章力、丁寧に描かれた卓也とまみずの関係

この作品、物語の進行は非常にゆったりと進んでいくんですが、その分卓也のまみずの距離感というか、やり取りが非常に丁寧に、考えて描かれているなという印象でした。

例えばまみずに靴をプレゼントするシーン、この前のシーンでまみずに靴のサイズを聞く描写があるんですが、まず最初に胸のサイズを聞くやりとりがあるわけです。実はこのさらに前に友人の香山から冗談でまみずの3サイズを聞いてくれよと言われるやりとりがあって、最初このシーン読んだ時はその伏線の回収だと思っていたんですが、靴をプレゼントするシーンの伏線にもなっていたんですね。こんな感じでいろんな伏線が絡み合ってどんどん読者を卓也とまみずのやり取りに没入させていく、その描き方が非常にきれいで上手だなと感じました。

あと、文章力自体も新人の方とは思えないくらい高いと思います。

なんていうかラノベと一般小説の中間のような文章ですね。

多分普段ラノベ中心に読んでる人には一般小説っぽい、逆に一般小説読んでる人にはラノベっぽいと感じるかもしれません。

クセは少ないですし、きれいな文章で一文もそんな長くなく、分かりやすい表現なので、普段ラノベを読まないような人、というか普段あまり本を読まない人にも、ぜひ読んでもらいたい作品だなと思いました。

 

結末について

結末については何を話しても圧倒的なネタバレになるので一言だけ。

渡良瀬まみずは間違いなく幸せだった。ならこれは疑いようもなく、幸せな物語である。

もちろんどう感じるかは読者の自由だと思います。これはあくまで僕の意見ということで。

 

<個人的名言・名シーン>

カッコつけてんじゃねぇよ。

でもカッコいいと素直に思った。

(岡田卓也)

 

私は、これから先、生きたらどうなるのか、知りたいです

(渡良瀬まみず)

 

私のかわりに生きて、教えてください。

(渡良瀬まみず)

 

 

感想 ライトノベル感想    コメント:0

<アニメ化記念>終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?EX 感想

 

 

聞きなれた言葉たち。

聞き飽きた言葉たち。

 

一度くらいはあいつの口から聞いてみたい......

けれど決して言ってはもらえない、そんな言葉たち。

 

春の陽だまりの中、幼い少女妖精・ラキシュは《聖剣》セニオリスを抱え夢想する――。
それは500年前の出来事。正規勇者(リーガル・ブレイブ)リーリァ14歳、準勇者(クァシ・ブレイブ)ヴィレム15歳。人類を星神(ヴィジトルス)の脅威から救う兄妹弟子の日常は、なかなかにデタラメで色鮮やかで……。
それは少しだけ前の出来事。死にゆく定めの成体妖精兵クトリと、第二位呪器技官ヴィレム。想い慕われる一分一秒は、忘れ得ぬ二人の夢となる。

「終末なにしてますか~?」第一部、外伝。

 

八真八 真の総合評価・・・★★★★★★★ 7/10

感想

アニメ放映記念と言いつつ・・・

シリーズ本編すっ飛ばして、番外編から感想書き始めるという無理・無茶・無軌道を通り越して無謀を実行している僕です!(えー

いやっ、ちゃんと本編の方の感想も書く気はありますよ!ただこっち読了したばかりだし、内容はっきり憶えている内に書いちゃおうと。

というわけで『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?EX』、通称『すかすかEX』の感想です。

まあ番外編なんですが、正しくは補完編といった内容ですね。当然大きな事件が起こるわけでも根幹に関わる重要な何かが語られるわけでもないです。ただ彼女たちは何を考え、ヴィレムのことがどのように見えていたか、それを補完するためのお話といったところですね。

あと一応今回の評価は外伝単体として評価してます。

 

リーリァ編

前半の主人公というかヒロインはのメインヒロインというべきリーリァです。

本編5巻を読んで、リーリァって実は『すかすか』の中で1番健気で一途な女の子なんじゃないかなって思ってたので、今回の話で彼女の心情が掘り下げられるのをすごく楽しみにしてたわけですよ。

とか思ってたわけですが、あとがきで枯野先生が作中トップクラスの健気な子とか語ってるじゃないか!!(えー

これは著者と一緒の考えだったことを喜ぶべきか、感想に書く前に言われたことを嘆くべきか。

そんな?リーリァのお話ですが、時間軸的には教会によって星神討伐が決定される少し前で内容としてはリーガルブレイブのお仕事と日常って感じです。リーリァ視点で語られるので、最終決戦時以外ではほとんど心情を語られることが無かった彼女が普段何を考えてリーガルブレイブとして生きていたのかを知ることができます。ということなんですが......

......何この乙女?

いや、想像以上に頭の中ヴィレムっていうか......もうベタ惚れじゃねーか!

まさかあんな世俗的な願望持ってるとは思わなかったよ(えー

多分著者はリーリァも一人の女の子なんだよって部分を意図的に書こうとしたんじゃないでしょうか。

リーガルブレイブも泣いたり怒ったり笑ったり、そして何よりヴィレムのことが好きなただの女の子でもあったんだよと。

(C)大島司/ 講談社

 

これはそんな女の子運命に翻弄され、それを受け入れて戦ってたんだよというのを読者に伝えるためのお話だったのかなと思います。

そしてもう一つ、ヴィレムに家族として扱われることの特別さを伝えるためのお話でもあったのかなと。

レプラコーンの子たちはそれほどの特別をヴィレムにもらってたんだよと。

 

クトリ編

後半は500年後の世界、時間軸的には本編1巻のクライマックスあたりのお話です。

あの出撃前の数日間、彼女たちは何を思い、どのように過ごしていたのか

こちらは裏のメインヒロインリーリァに対して、おそらくのメインヒロイン、クトリの視点で語られてますね。

そしてこっちは隠しきれない乙女心が全開って感じです。

あれ?『すかすか』ってこんなにラブコメってたっけ?ってくらいラブがコメってるじゃないかーーっ!??

(C)島本和彦 / 小学館

 

・・・主にクトリが一人で(えー

でも本編のクトリに待ち受ける運命を考えるとこういうエピソードも必要だったのかなと思えますね。

 

あと余談としてネフレンについても少し触れられているんですが、個人的にこの部分を書いてくれたのはすごく良かったです。これを読むと『すかすか』で最後までヴィレムのそばにいる役がなぜネフレンだったのかというのが、スッと腑に落ちてきた感じがしました。

 

<個人的名言・名シーン>

聞きなれた言葉たち。

聞き飽きた言葉たち。

一度くらいはあいつの口から聞いてみたい......

けれど決して言ってはもらえない、そんな言葉たち。

(リーリァ)

 

なんというか、非常識というか、バカげた話だ。というかバカそのものだ。

無理をしたんだろうと思う。

無茶をしたんだろうと思う

いつものように。当たり前の顏をして。

(リーリァ)

 

 

 

感想 ライトノベル感想    コメント:0

<待望の新刊>SAO ソードアート・オンライン 19巻 ムーン・クレイドル 感想

 

 

《アリシゼーション編》を完全補完するエピソード!

アンダーワールドは、三百年に及ぶ争乱の果てに、ついに一つになった。どこからともなく現れた、たった一人の《ベクタの迷い子》が暗黒の神を倒し、この世界に平和をもたらしたのだ。しかし、そんな人界の中枢、白亜の塔《セントラル・カセドラル》にて──。《整合騎士見習い》へと昇進したロニエ・アラベルは、人界の最高意志決定者《代表剣士》キリトから、衝撃的な言葉を耳にする。
「──いずれもう一度戦争が起きる」
《大戦》のその後を描いた《アリシゼーション編》最後を飾るエピソード!

 

総合評価・・・★★★★★★★ 7/10

 

感想

とりあえず、続刊を書いてくれた川原先生に感謝しつつ、

アリシゼーション編ラストでアンダーワールドに取り残されてしまったキリトとアスナの200年を補完する物語・・・

と思わせておいて、思いっきりロニエが主役じゃねーか

というかタイトルからweb版で連載してた番外編の月のゆりかごだろうことは予想してたんで、ロニエメインの話かなとは思ってはいたんですが・・・

ここまでロニエ押しでくるとは(えー

(C)青山剛昌 / 小学館

 

ストーリー的にはまさかの前後編分冊の前編部分なので、次巻に向けての伏線張りがメインといった感じで、

戦闘シーンも少なめのほのぼの回といった所(事件は起きてますが)。

 

そんな中での個人的見所は

●キリトのくだらない遊びと食べ物への情熱

ゴブリン族とイボイボ虫取り比べとする人界人はキリトだけでしょう

●キリトの別格っぷり

アリシゼーション編で覚醒後に行き着くとこまで行き着いちゃったせいで、もはや敵なしというといったところ。

そんななか扉の封印の鎖を破壊するシーンでSAO時代のかっこを再現させたのはさすが

川原先生はこういう読者の期待を裏切らないというか、テンション上がるツボを押さえるのが神がかって上手いと思います。

●いちいちキリトに振り回されるロニエの慌てっぷり

学生だったころからいろいろな意味でスケールアップしているキリトのせいでロニエの気苦労もスケールアップしてます。

アスナがキリトのアホな行動にいちいち動じなくなったのは寂しいですが、(えー

その分ロニエがリアクション役として孤軍奮闘してくれてます。

●いちいちキリトにキュンキュンするロニエの乙女っぷり

この巻はキリトにキュンキュンするロニエにキュンキュンするお話といっても過言ではないでしょう(えー

というかアスナが正妻の貫禄というか、異様な余裕が生まれてるせいで私的には魅力半減なんですよね。

アリシゼーション編ではアリスやロニエに対して、「キリト君は私のよ」と必死になってるアスナの方が見たいのに・・・(えー

今回もキリトについて暗黒界に行くロニエに嫉妬するくらいしてほしかったなぁ~と。

正直『ぬるい対応しやがって・・・・・』という気持ちです。

(C)葦原大介/集英社

その分この巻ではロニエのヒロイン力が大幅にアップしているように感じます。

 

うん、見所あげてみたら見事にストーリーと関係ない部分ばっかりじゃねーか。

ストーリーに関しては後編読んでみないと何とも言えないっていうのもあるんですか、

ぶっちゃけ、全編部分だけだとほぼ『圏内事件』と同じ流れなんですよね(えー

アンダーワールドの理からはありえない事件が起こって、それを解決するためにキリトが奔走するって感じで。

どちらも、ちょっとミステリーっぽい要素がはいってるからそう感じるのかもしれませんが・・・

ただ、実は今回の話の中心になっている事件と今回のメインヒロインになっているロニエって実は何の関係もないんですね。

その辺がちょっと面白いところで、ロニエ中心に起こった事件じゃなくて、おそらくロニエ視点で語られてなったら

多分彼女は単なる脇役に終わってたと思うんですよ。

川原先生はそれをあえて彼女視点にすることで事件を通した彼女の心の成長が今回のメインテーマになってくるようにしたのかなと。

 

あとは事件の解決をどう持っていくのか? ロニエの恋の行方は?

そしてアスナに活躍の場はあるのか?(えー

とりあえずこの辺に注目して時間の発売を待ちたいと思います。

 

 

 



 

 

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<電撃大賞史上最高傑作>86―エイティシックス―(電撃文庫) 感想

 

 

いつか、おれ達が行き着いた場所まで来たら、花でも供えてくれませんか

 

“その戦場に死者はいない”――だが、彼らは確かにあそこで散った。

サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。
そう――表向きは。
本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。
死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。
二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!

 

総合評価・・・★★★★★★★★★ 10/10

 

感想

ふふふ、ふはは、ふはははは!

いやぁ~、思わず正しく笑いの三段活用を実行してしまうほどに衝撃的でした。

ホントは今日はWEB小説の感想をあげる予定だったのが、気付けば普通のラノベの感想を書いてしまっていたぜ(えー

この小説はSAO(19)のついでに買ったようなもんだったんですが・・・

正直今年の個人的ラノベランキングNo.1候補ですね。というか歴代NO.1かもしれないくらいの破壊力でした。

 

 ストーリー・・・S

伏線の張り方、物語の展開、文章力のどれをとってもずば抜けていてます。

あとがきで著者が書きたい話を書きたいように書いた作品といってますが、

それでこの完成度はありないでしょう。

どう見たってこの作品は新人のレベルを遥かに超えてる・・・!えー

(C)附田祐斗・佐伯俊/集英社

最初から最後までノンストップでおもしろいですが、

あえてお気に入りシーンをあげるならば、

『アルバのいい人』達のエピソード、

86(エイティシックス)達の気高さを表す終盤の会話シーン、

そして何より、ラストバトル後からエピローグまでの展開は神がかっています

「ラストの一文まで文句なし」という帯の時雨沢先生のコメントに偽りなし!!

 

キャラ・・・B+

正直そこまでぶっ飛んだキャラはいないですが、

それが逆に終始シリアスなこの作品に合っていると思います。

隊員のみんなもそれぞれに個性があるんだけど、あえてできるだけ普通の少年少女に描いてるんじゃないですかね。

終盤で「こいつらなんて強いんだ・・・」と思わせるために。

あと、ガーターベルトは素晴らしい(えー

いや、ガーターベルト好きなんじゃないです。レーナのガーターベルトが素晴らしいのです(えー

ちなみにお気に入りキャラは機械のファイドです。

セリフは「ぴ」しかないのになんて感情表現豊かなんだこいつは・・・!

評価B+のプラス分は間違いなくファイドのおかげです。

 

感動・・・S

『アルバのいい人』達と『スピアヘッド』の高潔さ。

遠く隔てた少年と少女の心の交流。

絶望の中を進み続ける少年少女たちの強さ。

これでもかってくらい「感動しろよっ」ってスーリー展開んですが、

まんまと感動してしまいましたよ、僕は!

ぜひ彼らの行きつく先を見届けてください。

 

<個人的名言・名シーン>

「 ファッキン・グローリー・トゥ・スピアヘッド・スコドーロン(スピアヘッド戦隊にクソ栄光あれ)」

(クジョーの落書き)

 

「最初の部隊で、他の奴らと約束をしたんです。死んだ奴の名前をそいつの機体の破片に機体の破片に刻んで、生き残った奴が持っていよう。そうやって最後まで生き残った奴が、そいつの行きつく場所まで全員を連れて行こう、と」

(シン)

 

「いつか、おれ達が行き着いた場所まで来たら、花でも供えてくれませんか」

(シン)

 

 



 

 

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