『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』感想
6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)
大澤 めぐみ (著), もりちか (イラスト)
今よりもっと、もっと早く。もっと強く。
やるべき宿題は山のように積みあがっている。
『おにぎりスタッバー』の鬼才による、渾身の青春群像。
やりたいことが見つからず、漠然と都会を夢見る優等生の香衣。サッカー部のエースで香衣の彼氏のはずの隆生。香衣に一目惚れする学内唯一の不良・龍輝。ある秘密を隠すため、香衣の親友を演じるセリカ。4人が互いに抱く、劣等感。憧れ。恋心。後悔。あの駅で思いはすれ違い、一度きりの高校生活はとどまることなく進んでいく。「どうしてすべて手遅れになってからでないと、一番大事なことも言えないんだろう」これは、交錯する別れの物語。
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★★☆ 8.5/10
感想
大澤 めぐみ先生による青春群像劇。
これまでの先生の作品といえば「おにぎりスタッバー」や「ひとくいマンイーター」など、少なからずクセのある作風というイメージだったんですが、今回はシンプル&ストレートな物語。
なにより少年少女の悩みや葛藤の描き方がかなりリアルで、かなり自分の好みにストライクな作品でした!!
とりあえず表紙やあらすじで気になっている方は、割とその印象まんまのストーリーなので買ってそんはないかと。
思春期の少年少女の日常の風景と葛藤を描いた群像劇
ストーリーとしては長野県を舞台に、4人の高校生たちの入学から卒業までの3年間の高校生活が描かれています。
特徴的なのが、高校生活を描いているといっても、クリスマスやバレンタイン、文化祭や修学旅行といったラノベの学園ものにおける定番行事を一切描くことなく、徹底して日常における出来事の描写にこだわっている点ではないでしょうか。
その何気ない描写や日々の些細な出来事によるちょっとした心境や人間関係の変化の描き方が本当に上手いです。
紹介文どおり、まさに渾身の青春群像劇といったストーリー・描写で、僕みたいな大人は高校時代の郷愁を誘われ、(おそらく)登場人物達と同世代の人たちはその悩みに共感できる素晴らしい作品でした。
<個人的名言・名シーン>
これから先の三歩を、わたしは一人で進まなければならない。
by 香衣
今よりもっと、もっと早く。もっと強く。
やるべき宿題は山のように積みあがっている。
by 龍輝
俺が本格的にダメになってしまう前に、お前が大学に入って出て行ってくれるなら、俺はそれでアガリ。百点満点ってわけにはいかないだろうけど、及第点くらいは取れてるでしょ
by 正弥
松本駅の3番ホームに金ピカのギ=マニュエル・ド・オメン=クリストが親指を立ててかっこいいポーズで佇んでいて、顔の液晶に私に向けたメッセージを流しているのだ。
by 香衣
『あのねこのまちあのねこのまち 弐』 感想
あのねこのまちあのねこのまち 弐 (講談社ラノベ文庫)
何てったって、私は気まぐれだからねぇ
注文した品が勝手に出て来る店ばかりの町、夕霧町。そんな町で相談屋を営む猫又の少女・フミとそれを手伝う高校生・墨染幸一。二人の“空猫屋”には、今日も不思議な依頼が。妖怪・繰離の捕獲を依頼された空猫屋。危険な依頼にもかかわらず、どたばた捕獲に成功した二人だが、この事件は二人を待ち受ける哀しい運命の序曲に過ぎなかった――。……と、シリアスだけど基本は脱力系! 愉快なお悩み解決ファンタジー第二弾登場!
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★☆ 7.5/10
感想
1巻同様、作品内の世界を流れるゆるやかな空気感が素晴らしい。
やはりこの作品全体を取り巻く雰囲気が『あのねこのまちあのねこのまち』の一番の魅力ですね。
夕霧町の世界観、コーイチとフミの掛け合い、独特の物語のテンポには、読んでいて不思議な心地よさを感じさせてくれるものがあります。
ストーリー
序盤は前巻同様、空猫屋に持ち込まれた相談をゆる~く解決していく連作短編に近いストーリー構成となっています。
雰囲気はまさに脱力系ファンタジーという印象で、どの話もなんとなくほっこりしていて癒されます。
そして後半はとある出来事をきっかけに少しシリアスな展開に。
この辺のストーリー構成は1巻と同じですね。
ただ肝心のシリアス部分のストーリーとしてはちょっと弱かったかなという印象も。題材としては1巻でフミが行った吸気分霊、猫又と化け猫の違いなど、上手く伏線を使っていて非常に良かっただけに、もっとじっくりと描いてほしかったなというのが正直なところ。
なんかあっさりとエンディングに持っていったなという印象。もう少し山場というか、盛り上がりがあれば1巻以上に面白くなっていたかもしれないだけにその部分が惜しかったなと。
まあ、この問題については根本が解決したわけではないので、次巻以降の描写に注目といったところでしょうか。
キャラ
1巻後半でフミが抱えていた過去と苦悩を乗り越えた二人の関係が2巻でどうなっているのか気になってたんですが、予想通り、良い意味で特に変わってなかったですね。空猫屋でのんびり鍋茶をすすったり、フミの言動にこーいちが突っ込んだり、ときどき夕霧町の非常識さについていけなくなるこーいちにフミが適当な説明かましたり。
なんか暇さえあればお気に入りのカフェに入り浸ってる内に仲良くなった常連客とマスターみたい。まあ出てくるのは鍋茶ですが・・・・・・
そんな二人の、ゆるくて不思議な距離感と関係がやはり心地良い。
あとは新キャラも何人?(妖怪も数え方は〇人でいいのか?)か出てくるんですが、しっかりと1巻から登場してるキャラの掘り下げもされていて、その辺りのバランスはすごく良かったかなと。
総評
後半は多少シリアスな展開もありますが、基本はゆったりしたテンポで綴られる、文字通り浮世離れした人?達が織り成す、お悩み解決ファンタジーといったところ。
ほっこりした話が中心なので、肩肘張らずにのんびりした気分で読むのがベストかなと。
あくせくしてるのがバカらしくなるような、この作品独特の読後感が非常に気持ちいいです。
『戦闘員、派遣します!』 感想
戦闘員、派遣します! (角川スニーカー文庫)
暁 なつめ (著), カカオ・ランタン
「スノウを囮にして即刻逃げるぞ。行くぜアリス!」
「がってんだ!」
世界征服を目前にし、更なる侵略地の先兵として派遣された戦闘員六号の行動に『秘密結社キサラギ』の幹部たちは頭を悩ませていた。侵略先の神事の言葉を『おちんち○祭』と変更するなど、数々のクズ発言。さらには自らの評価が低いと主張、賃上げを要求する始末。しかし、人類と思しき種族が今まさに魔王軍を名乗る同業に滅ぼされると伝えられ――。
「世界に悪の組織は二つもいらねぇんだよ!」現代兵器を駆使し、新世界進撃がはじまる!!
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★☆ 7.5/10
感想
『この素晴らしい世界に祝福を!』の作者である暁なつめ先生の新シリーズです。
まあ、新シリーズといっても実際は『このすば』以前に書いてた作品の書籍化にあたりますが。。。
悪の組織に改造人間、転移装置なんかのSF、勇者に魔王に魔法といったファンタジー、異世界転移に現代知識チートなど、色んな要素のごった煮といった設定なんですが、ただそれを暁なつめ先生らしいコメディ全開なノリで上手く一つにまとめており、設定過多な印象を受けないのがすごいところ。
そして『このすば』同様、絶妙に頭のおかしい主人公やヒロインたちが繰り広げる掛け合いという名のバカ騒ぎが最高に愉快です。
ナチュラルに面白いセンス抜群のコメディ
実はラノベ作品の中で、こと笑いにおいては暁なつめ先生のセンスがトップクラスに好みだったりします。
(といってもこれまで『このすば』しか読んだことないですが)
キャラが狙ってボケてるというより、素で頭おかしいやり取りをしている感じなのが、ナチュラルに笑えるんですよね。
今作でもその魅力は健在で、テンプレ展開をあざ笑うかのような主人公の戦闘員六号と相棒のアリスによる、敵味方問わずの暴言・無礼・暴虐の仕打ちがかなりツボでした。
絶妙なバランスの変人具合が魅力的なキャラクター
センス抜群・コメディ全開なノリを支えるキャラクターたちも『このすば』同様、非常に魅力的。
主人公はほどよくクズで、微妙に小物で、いい感じに変態で、割と善人。このバランスが非常に素晴らしく、クズで割と最低な発言も連発してるのに、なんか憎めない絶妙なキャラに仕上がってます。この辺りも『このすば』のカズマに通じるものがありますね。
他のメインキャラもどいつもこいつも確実におかしい変人・変態どもですが、みんな少なからず常識的な部分も残しており、そのバランスもまた秀逸。なので全キャラがボケにもツッコミにも対応でき、シーンによってボケるキャラ、暴走するキャラ、ツッこむキャラ、ドン引きするキャラなど、それぞれの役割がかなり入れ替わります。
これについては、人によって読んでて分かりにくいってある可能性もありますが、僕としてはメインキャラ全員がイキイキと描かれてる感じがして良いなと思いました。
個人的には主人公とアリスの、逃げる決断する時や、他人を貶める時の、やたらと息ぴったりな掛け合いがめっさツボでした。
戦闘員六号
主人公。いい感じのクズ。・・・・・・いい感じのクズっって何だ?
アリス
主人公の相棒のアンドロイド。人を貶める発言と発想に関しては天下一品。
たまに主人公と思考回路が一緒なんじゃないかと思えるくらい息ぴったりな時がある。
スノウ
間違いなく主人公とアリスの悪ノリの一番の被害者。
でも本人も大概な部分があり、たまに主人公をドン引きさせる。
ロゼ
おそらく羞恥プレイをさせたら右に作中で右に出るものはいないというくらい涙目が似合う子
グリム
車いすで暴走出せたら、こち亀の本多ばりにネジが外れるやばい子。
淫乱ビッチと紹介文にあるのに全然ビッチじゃないのは詐欺だと思う(えー
総評
実に暁なつめ先生らしい作品。逆にあえて苦言を呈するなら「暁なつめ先生らしすぎる」点かなと。
せっかく『このすば』と全く違う設定の作品なのに、キャラの魅力も作品の雰囲気もほぼ『このすば』と同じという印象を受けちゃうのがもったいないところ。まあぼくは好きなので何の問題もないですが、『このすば』も続いてるんだし、せっかくなら違う雰囲気の作品も読んで見たかったという気持ちも。おもいっきりラブコメメインな作品とか。
<個人的名言・名シーン>
「誰か、助けてくれ!この女は頭がおかしい」
「一体誰がおかしい女だ!おかしいのは貴様の頭だっ」
by 戦闘員六号 & スノウ
「スノウを囮にして即刻逃げるぞ。行くぜアリス!」
「がってんだ!」
by 戦闘員六号 & アリス
10月に管理人が読んだラノベとおすすめ作品
10月に管理人が読んだラノベとおすすめ作品
9月に管理人が読んだラノベ新刊とそん中でおすすめを何冊か紹介。
新刊と言いつつ、今月新たに読んだライトノベルが対象なんで、
当月発売以外の作品も載せてたりします。
10月に読了したライトノベル
角川スニーカー文庫
HJ文庫
<Infinite Dendrogram>―インフィニット・デンドログラム― 5. 可能性を繋ぐ者達
電撃文庫
誰でもなれる!ラノベ主人公 ~オマエそれ大阪でも同じこと言えんの?~
GA文庫
ガガガ文庫
富士見ファンタジア文庫
魔王討伐したあと、目立ちたくないのでギルドマスターになった 2
ノベルゼロ
俺が大統領になればこの国、楽勝で栄える アラフォーひきこもりからの大統領戦記
メディアワークス文庫
MF文庫J
MFブックス
オーバーラップ文庫
ダッシュエックス文庫
ファミ通文庫
佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 3
ヒーロー文庫
以上、23冊。
特に面白いと思ったおすすめ作品
ミリオン・クラウン 1
おすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10
終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか? #05
おすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10
→『終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか? #05』 感想
<Infinite Dendrogram>―インフィニット・デンドログラム― 5. 可能性を繋ぐ者達
おすすめ度・・・★★★★★★★★☆ 8.5/10
→『<Infinit Dendorogram>インフィニット・デンドログラム-5』 感想
冴えない彼女の育てかた 13
おすすめ度・・・★★★★★★★★★☆ 8.5/10
この世界に i をこめて
おすすめ度・・・★★★★★★★★★ 9/10
『図書迷宮』 感想
図書迷宮 (MF文庫J)
十字 静 (著), しらび (イラスト)
足掻いてください、
あなたが
人間足りうるために。
あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。
足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★☆ 7.5/10
感想
この作品については各所で「ネタバレを見てしまう前に読め」という言葉を目にしたので、ここ数日はネタバレありの感想ブログを読んでしまわないように最新の注意を払いつつ、ようやく読了。
とりあえず、皆さんの警告に納得のストーリー展開でした。
ということで、こちらでも致命的なネタバレはなしでいきたいと思います。多分まだ読んでない人が見ても大丈夫なはず。
全てが起承転結における"転"の部分に凝縮された物語
序盤のストーリーとしては、父の仇を探すために幼い頃を過ごした図書館都市に戻ってきた主人公が、そこで吸血鬼の少女と出会う。というボーイミーツガールもの。
とここまでは割とよくある話かなと。設定やストーリーも8時間しか記憶を保持できない主人公の呪いなど、オリジナリティもありつつ基本は王道に沿ってる感じです。
ただこの作品の真骨頂は350ページ以降、物語の起承転結で言う所の”転”の部分にこそあると言っても過言ではないでしょう!!
こっから数十ページの間に、ジェットコースターに乗ってるかのごとくストーリーが二転三転していくので、置いていかれないようにご注意を!
正直、この次の章がラストバトルなんですが、それも含めてこの章以降は長いエピローグだと思えてしまうほど、この”転”の部分に作品の全てが凝縮されていると感じました。
そしてこの瞬間に至るために、実に350ページ近くもかけてじっくりと伏線が積み重ねられています。
そういう意味では、すごく読み応えのある作品であると言えますね。
二人称で語られる独特の文体
もう一つこの作品で驚いたのが、地の文が二人称で語られているところですね。
この作品の一つのカギとなっている本、「千一頁の最後の祈り」が主人公に対して語っているという体裁で書かれているため、そういう文体になっているわけです。
中々に特徴的な文章になっていますが、この作品の世界観・雰囲気にマッチして、いい感じに個性の一つになっているんじゃないかなと。
総評
ということでこの作品については多くを語る前に、とりあえず読んでいただくしかないかなと。(えー
そしてできれば、あれこれ裏を深読みせずに、素直に読み進めていただく方が楽しめるかと思います。
……ならこんな思わせぶりな感想書くなよと言われたら、ぐぅの音もでないですが。(えー
『冴えない彼女の育てかた』 13巻 感想
冴えない彼女の育てかた13 (ファンタジア文庫))
丸戸 史明 (著), 深崎 暮人 (イラスト)
どうかな?
わたしは、あなたが望むメインヒロインに、なれたかな?
「俺…恵が好きだ!三次元のお前が好きだ!」“転”のイベントを乗り越え「blessing software」の新作ゲームも完成までラストスパートを迎えた俺は、恵へ一大決心の告白をした。「お前を、胸がキュンキュンするようなメインヒロインにしてやる!」桜舞い散るあの坂道での運命の出会いからすべては始まった。いくつもの困難にぶつかりながらも、一緒に夢を追いかけてくれた仲間たちがいたからこそ、向き合えた想い。「わたしは、あなたが望む、メインヒロインに、なれたかな?」もうお前は、冴えない彼女なんかじゃない、胸がキュンキュンするメインヒロインだ!冴えない彼女との恋物語、完結!
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★★★☆ 8.5/10
感想
万感の想いを込めて……『冴えない彼女の育てかた』最終巻の感想です。
ストーリー
ぶっちゃけ物語の9割は12巻とGirls Side 3巻でほぼ決着がついているので、12巻ラストの倫也の告白シーンの続きとなっている第1章が事実上の最終章で、それ以降はほぼエピローグといってもいいと思います。
ただ、間違いなく最高の最終章であり、エピローグでした!!
まず第1章での倫也と恵のイチャイチャっぷりがたまらなすぎます!
こう、普通にイチャつくんじゃなくて、あまりにもこの二人らしいやりとりに読んでいて顏がニヤケるのが止まりませんでした。
マジ自宅で読んでてよかったよ……。
もう一度二人で倫也の家に戻るまでの二人の掛け合いなんて、ひたすら倫也の地の文でのツッコミにシンクロしまくりでした。
そして第2章以降では「blessing software」の新作ゲームの完成と冬コミに向けての話を進めつつ、主要キャラとのもろもろに決着をつけていきます。
特に英梨々と詩羽との決着、二人に対する倫也の想いもしっかりと描かれていて、これがまた素晴らしかった!
単純に恵を好きになったからごめんっていうのじゃない、もっと複雑な倫也の想いがしっかりと伝わってきました。
割と僕はラブコメ作品だと、ラスト付近でのサブヒロインの扱いが不満で、「主人公とメインヒロイン良かったね」って気持ちより「サブヒロインかわいそう」ってなってしまうことが多いのですが、この作品に関してはしっかりと納得のいくもので、素直に倫也と恵を祝福できました。
それと同時に「ああ……本当に『冴えカノ』終わるんだな」という寂しい気持ちも。
そして冬コミから年が明け年度が変わり、正真正銘のエピローグ。
本当に最後の最後までこの作品らしい展開、掛け合いで安心させてくれました。
それでも最後の挿絵と「おしまい」の文字に、やっぱり「ああ……本当に終わってしまった」という寂しくも万感の余韻を残してくれました。
キャラ
キャラについてはぶっちゃけあまり書くことはないんですが、この最終巻に至ってみんな過去最高に輝いてたんじゃないかなと、特に「blessing software」のメンバーについては正に最後を飾るにふさわしい活躍でした。
総評
ということで、正に感無量といった感じの『冴えカノ』最終巻でした!!
思えば元々PCゲームのシナリオライターとしての丸戸さんのファンだったので、1巻が発売したときは「それよりゲームのシナリオ書いてくれよ」と思っていたんですが、発売された作品読んだ時は「ちゃんとライトノベルらしい話、作品になってる!」と感嘆した記憶があります。
そして今は「最期までしっかり書き切ってくれてありがとうございます!!」という気持ちで一杯です。
我ながら現金な奴だ(えー
そしてしっかりとラノベらしい作品に仕上げながらも、ラストの一文まで読み切った後の余韻の感じ方は「やっぱり丸戸さんの作品だ」と感じさせてくれるものでした。
改めて素晴らしい作品をありがとうございます。お疲れさまでした。
<個人的名言・名シーン>
「どうかな?
わたしは、あなたが望むメインヒロインに、なれたかな?」
by 加藤恵
正直他にも名シーンはたくさんあったけど、今回は敢えてこれ一つだけに。
『ようこそ実力至上主義の教室へ7』 感想
ようこそ実力至上主義の教室へ7 (MF文庫J)
これでいい。
これでいいんだ。
何度もそう自分に繰り返す。
わたしはここで、壊れてしまうけど。
何故だか自分が、少しだけ誇らしかった。
新たな学園黙示録第七弾!
2学期も終了間近の12月半ば、Dクラスを裏で操る存在Xの特定のため、Cクラス龍園の執拗な調査が開始された。高円寺までもが疑いの対象となり、ターゲットが絞られる中、ついに龍園の魔の手は軽井沢恵に迫り……。そのような状況で清隆は唐突に茶柱先生に呼び止められる。珍しく弱気な表情の茶柱が案内した先にいたのは――「既に退学届は用意させてある。校長とも話がついている。後はおまえがイエスと言えばそれで終わりだ」「あんたの命令が絶対だったのはホワイトルームの中での話だろ。あの部屋はもうない。命令を聞く必要もない」退学を迫る清隆の父親、そして学校の理事長から、秘められた高度育成高等学校のシステムが語られ――!?
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★ 7/10
感想
ようやくDクラス、龍園との完全決着となった『ようこそ実力至上主義の教室へ』、通称『よう実』7巻の感想です。
見所としてはついに登場した清隆の父親、茶柱先生に従う必要がなくなった清隆のとる道、軽井沢恵の成長と決意、龍園との完全決着といった所でしょうか。
ストーリー
前巻の引きから、今巻がDクラスとの完全決着編になるのは予想がついていましたが、まさか序盤でこれまで引っ張ってきた父親がいきなり登場したのは予想外。ただ7巻のストーリーに直接絡むエピソードでは無かったので、今後の展開に向けての布石なのかなと。何よりこれによって茶柱先生との暗黙の契約が破棄となったのは大きなことだと思います。ただそのせいで主人公がDクラスが上を目指すことや、鈴音の目的に積極的にに関わることがなくなったんですが、今後主人公をどうやって物語に関わらせていくのでしょうか。多分、前生徒会長の堀北兄となんらかの契約を交わして、そのために動くという展開なんでしょうが、これまで同様の主人公のスタンスなら、別に今まで同様茶柱先生との契約のために影からDクラスや鈴音を手助けするのと何ら変わらないので、ここは予想もつかない展開を期待したいですね。やっぱこれまでのクラス対抗的な流れから生徒会絡みの話になっていくのかな?この辺は次巻の楽しみといったところ。
肝心の龍園との決着についてはまさかの力づく!!これはある意味完全な予想外でした!
一応、龍園が暴力に訴えてくる所まで読み切り、逆にその舞台を整え、龍園の手の上で踊ったふりをして逆に踊らせていたってことなんですが、前巻のラストからもっと裏で色々動いて龍園の心を折りに行くのかと思ってただけに、ちょっと拍子抜けしてしまった感があるというのも正直なところ。
ただこれまで以上に主人公の冷静冷酷っぷりと完璧超人無敵っぷりは際立っていたので、主人公の圧倒的強者巻を楽しみにしてる方にとっては最高の展開ではあるかと思います。
それにしてもここまで主人公が飛びぬけていると、もしかして清隆自身がこの作品のラスボスになるんじゃないかという可能性も疑ってしまいますね。本人も敗北を知りたがってるみたいだし(えー
キャラ
主人公、龍園、軽井沢中心の展開になるのは前巻の引きから予想通りでしたが、まさかこの節目の巻で掘北が完全に空気扱いとは・・・・・・!!(えー
それはさておき、今巻でついに清隆の父親が初登場。ただ思ってたより大物感が薄かったかなと。てっきり父親がこの作品のラスボスになるのかなと思ってたけど、どうも違う気がするなぁ。正直言って高円寺の方がよっぽど大物感を感じる描かれ方してますね。
高円寺と言えば、彼と龍園、坂柳の絡みも必要だったのかなと。あれによってちょっと龍園と坂柳に小物感を感じてしまいましたからね。特に今後のストーリーを考えると坂柳に関してはもっと神秘的なキャラでいてほしかったという気持ちが強いです。あれだと龍園と坂柳相手に天上天下唯我独尊な高円寺の大物感が強まっただけじゃないのかなという気がしました。
そんな中、今巻で一番良かったのは間違いなく軽井沢恵でしょう。もう7巻に関しては彼女がヒロインで主人公だと言ってもいいくらい輝いてました。この作品は主人公がずっと本音と本性を現さず、ブレも変りもしない分、対比的にその他のキャラの心理描写や成長が素晴らしいですね。
というかこの作品、巻が進むにつれてどんどん主人公の好感度を下げていって、逆にその他のキャラも好感度をどんどん上げていくような描写が目立つ気がするんですが……(えー
でも誰一人退場しないまま、どんどん主要キャラが増えていってるけど、ちゃんと収集できるのかという不安が。いつの間にか空気になってるキャラとか出てきそうで怖い……
逆にこれだけのキャラを途中で空気にすることなく、一人一人きっちり描き切れたら、めっさすごい作品になるんじゃないかという期待もあります。
<個人的名言・名シーン>
これでいい。
これでいいんだ。
何度もそう自分に繰り返す。
わたしはここで、壊れてしまうけど。
何故だか自分が、少しだけ誇らしかった。
by軽井沢恵
それはそれで、なんとなくあたし格好いいじゃない?
by軽井沢恵
『この世界に i をこめて』 感想
この世界に i をこめて (メディアワークス文庫)
――小説を愛してる、すべての人に
生きづらさを抱え、退屈な高校生活を送る僕に、ある日届いた1通のメール。
【現実に期待なんかしてるから駄目なんだよ】
でも、それは届くはずのないメール。送り主は吉野紫苑。彼女は、屈折した僕の唯一の女友達で、半年前に死んでしまった天才作家だった。
あり得ないはずのメールのやりとりから、僕は失った時間を取り戻していく。やがて、遺された吉野の最後の言葉に辿り着いた時、そこには衝撃の結末が待っていた――。
「僕たちの人生を大きく変えうる力をこの小説は持っている」
loundrawも大推薦。愛と再生の感動ラブストーリー。
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★★★ 9/10
感想
ラノベの新刊に加えて、西加奈子先生や伊坂幸太郎先生やらの新作がようやく文庫化されたおかげで、読みたい新刊の量と読書に割ける時間と読書スピードのバランスが壊滅的です・・・・・・
そんな詰んでる状況の中、これは発売されたら真っ先に読もうと決めていた、第23回電撃小説大賞《大賞》を受賞した『君は月夜に光り輝く』が20万部越えの大ヒットとなっている
先生の新刊、『この世界に i をこめて 』の感想です。
総評としては、前作に通じる作品の雰囲気をしっかりと持ちながら、前作とはまた違ったアプローチで、でも前作同様作品の世界に引き込まれるような魅力ある物語でした。
『君は月夜君に光り輝く』が万人におすすめしたい感動作だとすると、今回の作品はハマッたらヤバい、とにかく一度読んでみてほしい作品といった印象でしょうか。
とか、冷静に語ってますが、僕は読み終わった後しばらく放心していたほどガッツリこの物語に引き込まれました!!
本音を言うと、休みの前日の夜とかに読むべきだった!それぐらい読後の余韻がハンパなかったです!!
小説を愛するすべての人に捧ぐ、「愛」と「小説」についての物語
前作の『君は月夜に光り輝く』が剛速球とも言えるようなストレートなラブストーリーだとすると、『この世界に i をこめて 』は”超”高速スライダーとも言える、ラブストーリーとしては少し異質な感のある物語。
あらすじでも「ラブストーリー」と書いてますが、「恋愛」ではなく「愛」についての物語と言った印象。
なにより、巻頭に書かれている通り、「小説を愛してる、すべての人に」捧ぐ物語――というのが一番しっくりきますね。
この辺りが万人におすすめというより、ハマったらヤバい作品と前述させてもらった理由ですね。
僕個人としては、純粋なラブストーリーは少し照れちゃう部分があるので、こういう話の方が性に合ってたりします。
だからこそ純粋に面白かった!!
ストーリーの概略としては、かって小説が大好きで、自身も小説書きだった主人公の染井浩平は、同じく小説が大好きで天才とも言える作家だった女友達の吉野紫苑の死をきっかけに、小説を読むのも書くのもやめてしまう。彼女の死後、世界そのものに退屈を感じてしまっていた主人公は現実逃避の手段のようなものとして、吉野がいなくなった後も彼女に向けて何気ない日常のメールを送り続けていました。ただある日、あり得るはずのない彼女からの返信が届いて……といった感じで、少しファンタジー的な要素を感じる展開となっています。ただこの作品のテーマはその部分ではなく、死んだはずの吉野からメールが届いたわけについても物語中盤で明かされることになり、むしろその先にあるものこそが本題といったところ。あくまでこれは「愛」と「小説」についての物語であると。
『君は月夜に光り輝く』でも思ったんですが、佐野先生はちょっとファンタジー的な部分を、メインではなく物語の一つの要素として使うのがすごく上手いですね。
読み手に非日常を感じさせて現実から物語の世界に引き込みながらもリアリティのあるストーリーに感じるのはこういう部分のバランスが見事だからというのも一つの要因かと。
本当に主人公が語っているんじゃないかと錯覚してしまうような、不思議な魅力の文体
この作品のもう一つ素晴らしいのが、物語への没入感のすごさではないでしょうか。
一度読み恥じ始めたら、読む手を止めずに最後まで一気に読ませてしまう力と、読み終わった後に作品の世界から現実に戻って来てしまったと感じさせるような、圧倒的な読後感があります。
多分その要因は作者の文章力、というか文体にあるかなと。
『は月夜君に光り輝く』もそうだったんですけど、シンプルで読みやすいのに、何とも言えない虚無感を抱えつつ、とうとう語らえる独特のリズム、達観しているようでどこか青さを感じる語り口調が高校生の主人公の一人称とマッチして、作品全体の世界観となっているように感じます。この文体の特徴がまるで本当に主人公が自分の人生・青春を語っているような、実際に作品の世界の中から主人公の物語を、読むのではなく見ているような、圧倒的な没入感を生んでいるのではないかなと。
正直、佐野先生の一番の魅力はこの文体じゃないかなと思いますね。それぐらい単純に文章が素晴らしいので、物語どうこう抜きにしても、やっぱり一度読んでみてほしいです。
<個人的名言・名シーン>
「小説、書いてますか」
「書いてません」
一発、殴ってやろうと思った。
by ??? & 染井
「私は本当に、つまらない人生。将来見えてる。どこで何してもしょうがない。わかって。本気出せない人生なんだ。知ってる?そういう人がいること」
「私の分まで、本気出してよ」
声が震えていた。
よく見る。
目に、涙が滲んでいるのが見えた。
「本気出して」
by ???
少し怖くなって祈る
僕の信じる僕の才能が消えていませんように。
どうか。
僕の生きる意味が、まだ残っていますように。
by 染井
『魔王は服の着方がわからない』 感想
魔王は服の着方がわからない (ファンタジア文庫)
魔王でオタクな俺でも、おしゃれをすれば恋ができる…のか?
オタク文化にハマった俺、魔王・真野央大は理想の嫁と出会うため、オタクの聖地・日本の高校へやってきた!早速同級生の白石乃音さんに一目惚れし、勝負服(超クールな魔王マントだ)を着てアタックしようとしたら「なんちゅー格好で話しかけてんのよ!」クラスメイトの藍野瑛美が水を差してきた!え、俺の服ってそんなにヤバい?「仕方ないわね。うちに来て」流れで藍野とファッションを学ぶことになり!?藍野の着替えを目撃するトラブルもあったけど、アドバイスのおかげで念願の白石さんとのデートも決まってー。魔王でオタクな俺でも、おしゃれをすれば恋ができる…のか?
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★ 6/10
感想
前回、漫画の『ランウェイで笑って』の感想を書いたので、一応ファッション関係つながりということで『魔王は服の着方がわからない』についての感想です。
服の選び方の解説書的な作品
作品としてはあくまで服の着方・選び方の解説がメインで、そこに異世界からの逆転移設定やラブコメなんかのラノベ要素をくっつけた感じですね。
なのでどうしても主人公達の物語よりも服の解説が前面に出てきてしまっているなという印象が強くて、ストーリーやキャラが心に残りにくくなっちゃってるのがもったいないところ。
作中でドレスとカジュアルの割合7:3が理想と解説していましたが、この作品も服の解説:物語が7:3くらいになっちゃってるけど、そのバランスはむしろ逆の方がラノベとしては面白かったかなと。
ストーリー自体は異世界からやってきた、魔王がそのありえないファッションセンスで転校先の学園でディスられまくるわけですが、クラスメイトでメンズ服好きな同級生に服の選び方を教えてもらってまともな格好になっていくにつれ、周囲からの評価も変わり、楽しい学園生活を送るようになっていく――という展開なわけですが、読んでる最中ずっとなんか既視感のある展開だなと思いながら読んでたんですが、途中で気づきました。これ進研ゼミだっ!!
あれも、勉強で悩んでいる主人公が友達に進研ゼミを紹介してもらって、それのおかげで成績が上がると共に周囲の評価が変わり、学園生活の色んなことも上手くいくようになっていくっていうのが定番の展開なんですが、この作品もまさにそういったストーリーとなっています。
ぶっちゃけ今回の感想で一番言いたかったのはこれです!(えー
弁解しておくと、僕は子供のけっこう好きでしたよ、進研ゼミの漫画。気付いた瞬間あまりの懐かしさにちょっとテンション上がってしまいました。
だれか共感してくれる人いないかな……
ファストファッション激押しで安くておしゃれに見られる服の選び方を解説
この作品のファッションにおけるテーマは「お金をかけずに安い服で、周りからおしゃれと思われる服の選び方」となっています。
服の選び方についてはすごく論理的に分析・解説されているので、テーマに共感された方はかなり参考になるんじゃないかなと。
ただユニクロやGUを実名で、具体的な商品までべた褒め激押ししてるのは、僕みたいなひねくれた人間としては大人の事情なのかなとか思ってしまったり……。
というか2回目の買い物の時、わざわざ少し遠くのショッピングモールまで出向いて、入ったお店がまたしてもユニクロとGUって!!(1回目は近場のショッピングモールのユニクロとGU)
わざわざ遠出した意味は!?
あと、白シャツと黒のスキニーデニム(作中ではスキニージーンズと表記)のコーディネートをおすすめされた時は正直、「でた!!白シャツ、黒スキニーデニム!」と思ってしまいました、すいません。
まあ、テーマお考えると初っ端に鉄板を持ってくるのは仕方ないのかなと。
ちなみにこの組み合わせ、僕は壊滅的にスキニーデニムが似合わないので、鉄板だからって誰にでも似合うと思うなよ!!(えー
最後にめっさどうでもいい余談を。作中でディスられまくったまひるんるんパーカーについて。
なんか若者に人気のブランドでこんなパーカーが出てて、めっさ売れてるらしいです。というかZOZOとか完売らしいです。マジかよ……
一応言っとくと僕は持ってないですよ。若者じゃないし……
ただまひるんるんパーカーのイラスト見た時にまっさきにこのパーカーが思い浮かんだというどうでもいい話でした。。。
『ランウェイで笑って』1巻 感想
ランウェイで笑って(1) (講談社コミックス)
猪ノ谷 言葉 (著)
これは、わたし 藤戸千雪がトップモデルに至るまでの物語
そして――
都村育人が トップデザイナーに至るまでの物語
身長は、158cmから伸びなかった・・・。
藤戸千雪の夢は「パリ・コレ」モデル。
モデルとして致命的な低身長ゆえに、周囲は「諦めろ」と言うが、千雪は折れない。
そんなとき、千雪はクラスの貧乏男子・都村育人の諦めきれない夢「ファッションデザイナー」を「無理でしょ」と切ってしまい・・・!?
「叶わない」宣告をされても、それでも一途に夢を追って走る2人の物語。身長は、158cmから伸びなかった・・・。藤戸千雪の夢は「パリ・コレ」モデル。モデルとして致命的な低身長ゆえに、周囲は「諦めろ」と言うが、千雪は折れない。そんなとき、千雪はクラスの貧乏男子・都村育人の諦めきれない夢「ファッションデザイナー」を「無理でしょ」と切ってしまい・・・!?「叶わない」宣告をされても、それでも一途に夢を追って走る2人の物語。
八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10
感想
今回はラノベじゃなくて漫画の感想。
今、個人的にかなりハマっている『ランウェイで笑って』 というファッション業界を舞台にした話です。
ストーリーとしては幼い頃から服作りが好きで、「ファッションデザイナー」を夢見つつも家庭の事情で高校卒業を機に就職しようとしている主人公の都村育人が、同級生でスーパーモデルを夢見る藤戸千雪とのひょんなエピソードをきっかけとしてファッションデザイナーへの道を歩みだすという物語で、第1話なんかは普通の高校生だった主人公が作った服がファッション誌のスナップに掲載され、それを芸能人がSNSで拡散して……というまさに絵に描いたようなシンデレラストーリーといった展開なんですが、個人的にこういう一般人だった主人公が才能を開花させて成り上がっていく物語は大好きなんで読んでてゾクゾクくるものがあります。
そしてこの作品のもう一つの特徴なのが、舞台となるファッション業界について、かなりリアリティのある描写をしてるところですね。1巻ではまだ東京ファッションウィークのコレクションの始まりまでしか物語は進んでいませんが、この後のコレクションの様子とか展示会の話とか合同展に来るお客さんとか、かなりしっかりと取材されてるなというのが分かるのと、この作者の方、マジでめっさ服好きやん!!ってのが伝わってきて、読んでるこっちもそういう気分にさせてくれます。
なにより今の時代の日本において、ファッションは終わった・ファッションはダメだと言われてる中、あえてこのテーマに挑戦する心意気!!
ぶっちゃけ一般受けとか異性受け気にするだけなら、ファストファッションとかセレクトショップのオリジナル商品とかで無難に白シャツ・黒のスキニーデニムの組み合わせを選んでおいても十分ですからね。
そんな中で、この作品を読んで作中の○○さんのように(すいません、そのシーン2巻以降です)、服そのものに興味を持つ方が増えたらいいなと。
ストーリー
モデル事務所の社長の娘で、パリコレに出るようなスーパーモデルを夢見ており、周りからも将来を期待されていたヒロインの藤戸千雪。
ただ、高校3年生になった彼女には身長というどうしようもない壁が立ちはだかることになります。
ショーモデルの仕事はあくまで主役である服を魅せること。
そのための身長とスタイルであると。だからスーパーモデルになるのは無理だと。
一方の主人公の都村育斗は冴えない貧乏な高校生。
そんな彼が密かに抱いているのがファッションデザイナーになりたいという夢。
でも服飾の専門学校に通うお金のない、家族の暮らしのためにお金を稼がないといけない育人は、夢を諦めて普通に就職の道を進もうとします。
一方の千雪も、父親の事務所「ミルネージュ」でモデルになることを諦め、他の事務所でモデルになる道を探します。
そんな中で改めて千雪は自分の夢を見つめなおします。
自分の夢は、ただパリコレに出ることじゃない。
父親の事務所で、モデルとなって活躍することだと。
そして、迷いを振り払い夢を追いかけることを誓った千雪は再びミルネージュのオーディョンを受けることを決意します。
育人の服を着て。