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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 感想

 

 

 

だから、そう、歩くから。
すこしだけ、泣くのを許してほしい。

 

何が悪かったのだろう。勇者として異世界召喚された俺――宇景海人は自問自答する。
助けて欲しいと乞われるがまま、勇者となった俺は魔王を倒し、この世界を救ったのだが……。
もう用済みとばかりにパーティー全員から裏切られ、世界の敵に仕立て上げられて俺は追われる身となった。
苦楽を共にし、仲間だと思っていた奴らに無実の罪をなすりつけられ、ついには殺されたのだ。
死ぬ間際、俺は救いを願うより、こいつらを苦しめて苦しめて、殺してやろうと呪った。
――やがて気が付くと、俺は異世界召喚されたあの時に舞い戻っていた。裏切り者に殺された記憶を携えて。
王女を、魔術師を、聖女を、騎士を、商人を、王様を……コイツら必ず皆殺しにしてやる!
最も残酷な方法で、ひとかけらの救いもない苦痛と悲鳴の血の底で溺死させてやる!!
俺は復讐心を共有してくれる獣人少女と共に旅立った!
異世界リベンジ勇者ファンタジー!「――――さぁ、復讐の始まりだ」

 

八真八 真の満足度・・・★★★★★★★★ 8/10

 

データベース

感想

この『二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む』は王道と邪道の良いとこ取りした、邪道作品といったところでしょうか(えー

ジャンルとしてはなろうの王道ど真ん中とも言える異世界召喚もの。しかも魔王を討つ勇者として王女様に召還され、共に魔王を討つ仲間は聖女に戦士、武道家や魔術師等といったテンプレ満載な主人公なわけですが、

物語はそんな主人公が魔王を倒して世界に平和をもたらした後、仲間に裏切られ、今まさに死ぬ寸前から始まります(えー

正直、ほのぼのとかまったりとかいったなろうの王道とは真逆の作風で、

好きになるか嫌いになるかは大きく分かれるかと思います。

ぶっちゃけ万人にはおすすめしずらい作品ですね。

ただ、読者に対して大きなインパクトを与えてくれる作品であることは間違いないかと思います。

異世界召喚というなろうの王道でありながら、なかなか見ないハードでエグい物語というのが、

この『二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む』の印象です。

(C)大場つぐみ・小畑健/ 集英社

 

ほのぼのもいいけど、たまにはきっつい展開のあるハードな作品も読みたい、そう思っている方はぜひ一度読んでみてもらいたいと思います。

 

心を抉るストーリー

主人公のカイトは魔王を討った後、仲間の裏切りによって殺されたカイトは神様の力によって記憶を残したまま召喚された日へタイムリープします。

それは神様に授かった、たった一度のみのやり直しなわけですが、カイトは1週目で自身を裏切ったかっての仲間に復讐を誓うというのが大まかなストーリーになります。

この復讐を題材にした小説自体は割と見かけるようになりましたが、ここまで読者の心を抉ってくる作品は他にないのではないでしょうか。

ストーリーの要所で1週目の回想がはさまれるのですが、そこでの主人公の報われなさと絶望的状況っぷりがヤバイ。正直ここまでのエグい内容には度肝を抜かれました。なにがエグイって、かっての仲間の裏切り方がすごいです。最悪のタイミングで最悪以上の事実を突きつけられる。その度に主人公は後悔し絶望し心をひき裂かれます

 

ただそれらの鬱展開って回想シーンでありあくまで"1回目"で起こったことなんですね。それは物語上の時間軸である"2回目"ではなかったことになってるわけです。リゼロなんかでも同じことが言えると思いますが、最終的にハッピーエンドで終われる可能性を残しているから、途中の鬱展開にも耐えれるのかなと。ただ『二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む』はその描写が突き抜けてますね。

あまりにもかっての仲間の裏切りっぷりがエゲツないです。

 

でも逆に復讐相手の外道っぷりがすさまじいほど、これから彼らへは凄惨な復讐が待っているんだと期待させてられてしまう、そのあたりの書き方が上手いと思いました。

 

主人公やヒロインへのヘイト管理が見事

【主人公】カイト

運命に翻弄され、良くも悪くも頭のネジがねじれてしまった勇者(えー

物語の始まる前、1周目の時のカイトはお人よしの典型的な勇者気質で、ぶっちゃけキャラとしてははるかに主人公っぽいです。それが世界中から裏切られるような圧倒的な絶望を味わい、自身の価値観を大きく変えることになります。いや、タイトルどおり嗤いながら復讐相手を拷問する様は控えめに言ってもヤバい人でしょ!(えー

ただそれ以上に復讐相手に嫌悪感をいだかせ、読者を主人公に共感させる著者の実力はすごいと思います。

 

【ヒロイン】レティシア、ミナリス、シュリア

メインヒロインはレティシアになるのか、ミナリスになるのかは置いておいて、個人的にはレティシアのヒロイン力が半端ないです。回想にしか登場していないのに、すでに本妻感というかその他ヒロインから見たラスボス感が圧倒的です。

 

ミナリスとシュリアは復讐の共犯者になるわけですが、普段はともかく主人公同様復讐に関してはかなり狂気に満ちています。嗤いながら拷問かけるヒロインってヤバイですね。

ただ普段は主人公に対してデレ全開なのと、イラストがかわいいのとで、良くも悪くもギャップが尋常じゃないヒロイン達になってますね。

 

【勇者の元パーティ】

これだけ主人公やヒロインが復讐心に支配され、控えめに言っても狂気に満ちていてなお、彼らに共感できるのは復讐相手である勝手の仲間たちがラノベ史上でも類をみないほどの外道っぷりのおかげといっていいでしょう。特に初っ端の王女の、回想シーンにおける下衆さのインパクトは強烈で、2章が小物に感じちゃうほどでした。というのも彼女らが主人公を裏切った理由なんですが、

 

王女:生理的嫌悪感。召喚された人間を同じ人種と見ていない。

ユーミス:勇者を生贄に最高の魔道具を作り出し、石碑に名を刻まれることで、メイドのソーリィとの仲を認めてもらう

 

2章のユーミスは一応主人公を裏切った目的があるんですね。主人公を殺して得るものがあるから裏切ったと。それにたいして王女は特に目的無く裏切ってるんですよ。単なる生理的に無理って理由で。もはや人間が人間が黒くて素早いあいつらを殺すのと同じ理由ですよ。もうホント何?あの外道っぷり。

ただ、彼女らは嫌われ者として読者のヘイトを一身に背負うことで、主人公の復讐劇に読者を共感させるという大切な役割を持っているわけです。

客観的に見ると、主人公の復讐の仕方もたいがいなんですが、それをよしと思えるのは、それほどまでに彼女たちが読者に不快感を与えるキャラとして描かれているおかげかと思います。

 

その報われない役割、俺だけは認めてやろう

(C)島本和彦 / 小学館

読者の心を揺さぶる圧倒的文章力

汚い、穢らわしい、気持ちが悪い、吐き気がする。
改めて周りを見回せばどいつもこいつもそんな人間ばかりだった。
笑顔を浮かべて裏切り、ニヤニヤ笑って善意を踏みつけ、哄笑混じりに毒を盛る。

 

もう冒頭の段落1つとっても、通常の小説家になろうと線を隔す文章力が伺えます。

確かにけっこうくせのある文体ではあるので、好みは分かれるかもしれませんが、その文章力・表現力は圧倒的と言えるかと思いますね。

というか個人的には独特の言い回しがむちゃくちゃ好みです。

 

レティシアに関する描写でも

注文の多い少女だった。
嘘つきで、怖がりで、臆病で、強がりで、意地っ張りで。
カラカラとよく笑うくせに泣き虫で。
傲岸不遜な態度で我儘を言うくせにこちらの気持ちに敏感で。
憎たらしいほど強引に、モノクロで作られた書き割りのようだったこの異世界に色を塗った少女。

 

もうこの文章だけで意味無く泣きそうになります。現段階(109話)ではまだレティシアの過去についてはほぼ語られてないのですが、この文章読んだだけで、彼女が何かしらを重い運命を背負っているんだということが伺えます。何の説明にもなっていないのに伏線になっているというか、一言一言が主人公に感情移入させていくんですよね

僕は復讐ものというのは読者に感情移入させることができなければ、失敗だと思っています。主人公に対して不快な感情を持ってしまうからです。

上にあげたようにこの著者の文章はそれがすごく上手くて、主人公が裏切られたときの感情や心の痛みがダイレクトにこちらの心に響いてくるように感じます。

 

ぜひ主人公と共にその境遇に絶望し、復讐い歓喜する道を味わっていただきたいと思います。

 

<個人的名言・名シーン>

こんな時でも思い出すのは、魔王と呼ばれた少女の言葉。
『妾にできることなら、いくらでも、何でもしてやる。それこそ、世界の半分だってくれてやる。だから、なぁ、妾のそばに来てくれ、お願いだ』
俺は、その震える手を取れなかった。
断られるとわかっていただろうに。俺がその手を取らないと思っていただろうに。

(カイト&レティシア)

 

「今度は、絶対に俺から言いに行くよ。『ああ、魔王よ、世界の半分をやるから、俺と復讐をしよう』って」
何の復讐なのかさえ、二度目の彼女は知らない。知らせるつもりもない。全て俺が終わらせるのだ。

だから、それは拒絶されて当たり前の言葉。

伝わらなくて、断られるとわかっていても。
それでもあの時の彼女は、俺にそう告げたのだから。
必ずお前に、告げに行く。

(カイト)

 

 



 

 

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ラノベ業界を題材にしたラノベ作品

 

割と近年の作品で、管理人が読んだ事のある作品をまとめて紹介。

 

人気ラブコメ作家が描く管理人的ラノベ業界ラノベの代表作

『エロマンガ先生』伏見つかさ

高校生兼ラノベ作家の俺・和泉マサムネには、引きこもりの妹がいる。 和泉紗霧。 一年前に妹になったあいつは、まったく部屋から出てこない。今日も床をドンドンして、俺に食事を用意させやがる。 こんな関係『兄妹』じゃないぜ。なんとか自発的に部屋から出てきてもらいたい。俺たちは二人きりの『家族』なんだから――。 俺の相棒・担当イラストレーターの『エロマンガ先生』は、すっげーえろい絵を描く頼りになるヤツだ。会ったことないしたぶんキモオタだろうけど、いつも感謝してる! ……のだが、衝撃の事実が俺を襲う。 『エロマンガ先生』は、俺の妹だった!一つ屋根の下でずっと引きこもっている可愛い妹が、あの、えっちなイラストを描いていた!? そして俺達兄妹の関係に、超売れっ子美少女作家のライバルも加わって、大変動が起こる!新たなる兄妹ラブコメディ!

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏見つかさ先生が描く熱血ラノベ作家もの

2017年4月よりアニメ放送もされているラノベ業界ものの中でも1・2位を争う人気作。

感想としては、ラブコメと仕事の話とのバランスが絶妙で、ライバルとのイラストレーターや書籍化をかけた対決など、各エピソードで山場もしっかりと用意おり、人気作家の期待を裏切らない面白さ。

主人公の執筆への情熱やヒロインのイラストにかける想いなど、スポ根的な燃え要素と、思わずニヤけてしまうようなヒロイン達とのラブコメ展開などの萌え要素が上手くミックスされている印象。

 

 

ラノベ関連まとめ・雑記等    コメント:0

始まりの魔法使い 名前の時代 感想

 

 

「ニーナ。魔法学校を作ろう」

 

「もっともっと大きく、もっともっと偉大な学校を」

 

圧倒的かつ壮大なスケールで紡がれる竜と魔法の年代記クロニクル

 

かつて神話の時代に、ひとりの魔術師がいました。彼は、“先生”と呼ばれ、言葉と文化を伝え、魔法を教えました。そんな彼を人々はこう呼びました。―始まりの魔法使い、と。そんな大層な存在ではないのだが―「だから火を吹かないで!」「ごめんごめん。私にとってはただの息だからさ」竜として転生した“私”は、エルフの少女・ニナとともに、この世界の魔法の理を解き明かすべく、魔法学校を建てることにした。そこで“私”は、初めての人間の生徒・アイと運命の出会いを果たした―。これは、永き時を生きる竜の魔法使いが、魔術や、国や、歴史を創りあげる、ファンタジークロニクル。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 9/10

 

データベース

 

感想

第1回 カクヨムWeb小説コンテスト受賞作、石之宮カント先生の『始まりの魔法使い 名前の時代』の感想です。

毎度のことながら多少のネタバレは含んでますのでご注意を。

 

この作品、とにかく世界観が壮大で、物語への没入感が圧倒的!!

その物語は原初の英雄の叙事詩のようであり、神話のようでもあり、壮大な物語の長い長い序章プロローグのようでもあります。

読み終わった後の感動と満足感、次に語られるであろう今後の歴史についての期待感、一つの物語としてもシリーズものの1巻としても、素晴らしいの一言に尽きます!

まさに純粋なファンタジーの神髄を感じたと言える作品ですね!!

 

 

壮大なスケールで描かれる人類と魔法の歴史、その始まりの物語

物語の第0話、この巻のプロローグは竜歴6050年、「始まりの魔法使い」の伝説を追ったドキュメンタリー番組を主人公(おそらく)と彼の生徒達?やらが見ているシーンから始まります。

この竜歴6050年、エルフや魔法が当たり前のように存在してるファンタジー世界ではありますが、TVやビデオなど、文明レベルは現代日本をほぼ同等という感じ。

で、そんな第0話から、本編のスタートは一気に竜歴0年に遡ります。

この作品は前述したように、主人公が異世界の竜に転生した竜歴0年から本編が始まり、後に「始まりの魔法使い」と言われる主人公に関わる出来事を、時代に沿って描いていく【年代記】の形式をとっているのですが、実はこの第0話、カクヨミに掲載されているWeb版にはない、書籍版の書き下ろしになっています。

ただ第0話があることによって、物語から感じる壮大さが段違いに大きく感じられます。

正直、この第0話から本編の導入、初めての生徒であるアイとの出会いまでを読んだ時と、1巻を読み終わった後にもう一度第0話を読んだ時は鳥肌が立つほどでしたね!!

 

本編についてはその初めての生徒であるアイとの関係を中心に、主人公が人と関り、魔法を通じて人の暮らしを変えていく様子が描かれていくわけですが、本編だけでも10数年、主人公の誕生からだと20年以上、エピローグも入れると50年以上にわたる物語が描かれています。

 

この作品は、世界に魔法を広めた主人公の「始まりの魔法使い」としての物語なわけです。

ただ、もちろん魔法そのものは、重要なキーアイテムであるとはいえ、あくまで物語を進めるうえでの一つの道具に過ぎないと感じました。

この作品の主題はの時を生きる主人公を通じた人類の歴史、現実世界で科学と共に進歩していった人の文明を、科学を魔法に置き換えた形で描いていくことじゃないかなと。そして主人公がその歴史の変遷にどのように携わり、人類の進歩に影響を与えたかを描いていく物語であると感じました。

 

ちなみに1巻開始時点における人々の生活は縄文時代~せいぜい古代並みで、文明と呼べるほのものはなく、国ではなく集落と呼べる程度のものが点在しており、また、集落によってはまともな言葉も存在しないようなレベルです。

そこに主人公が日本語を広め、葬儀などの文化を教え、文明をつくっていく。この描き方は非常に興味深かったですね。

ファンタジー作品では言葉だけは普通に通じるという設定はよくありますが、この作品では逆に、言葉さえないところに主人公が、ゼロから全てを広めていくわけです。だから第0話の未来において、当たり前のように日本語で話し、洗濯機やネギと言う言葉が存在し、通貨単位は「円」なんだなと。

そんなところからもいかに主人公が人類の成り立ち・歴史において重要な役割を果たしてきたのだということが伺い知ることができ、細かい設定まで物語に深みを持たせるよう、非常に練られているなと言う印象を受けます。

なんというか、読めば読むほど、細かいところに気づけば気づくほど、その世界観に圧倒されるような感覚でした

 

あと個人的にですが、もう一人のヒロイン、悠久の時を生きる主人公のパートナーのような存在として描かれているエルフのニナ(ニーナ)と、主人公の関係がすごくツボでした。

1巻作中では二人の関係性は「ほとんど」変わらないわけですが、そんな中でも少しずつニナの心情の変化が感じられ、ここでも第0話でちゃっかりと主人公の隣の席を確保しているニナの描写から、今後も続く長い長い物語における二人の関係を予感させられます。

 

 

一人の女性の生涯を描いた人生記でもあり、長い長いプロローグでもある第1巻

最後に、この1巻は、主人公の初めての生徒であるアイの物語でもあります。主人公と出会い、魔法を憶え、文化的な生活を知り、幸せを手に入れる彼女の人生が余すところ無く描かれています。いわば文庫本1冊の中に彼女の人生が凝縮されているのです。

だからだと思うのですが、たった1冊にもかかわらず、読み終わった際にはまるで長期連載作品が大円団を迎えたかのような感慨が込み上げてきます。

それぐらい、1冊の中での物語の完成度とスケール感がずば抜けて高かったと言いたいです!!

それと同時に、この1巻は「始まりの魔法使い」である主人公の伝説を描いた、壮大な物語の、とても長いプロローグでもあります。

この物語のラストは、主人公が本当の意味で魔法の学校を作ろうと決意するシーンで終わっているのですが、前述した感慨共に、第0話と合わせてこれから主人公が学校と言う舞台を通じて紡いでいく新たな物語を予感せずにはいられませんでした。

だからこそ、ここで再度言わせていただきたいと思います・・・・・・

この作品は他に類を見ないほど、圧倒的かつ壮大な世界感で描かれる一大叙事詩であると!!

 

 

名前の時代

最後にこの巻の副題である「名前の時代」について。

この巻で主人公が「この世界の魔法は名前でできている」ということを発見し、初めて魔法が魔法として誕生したわけです。

(それまで魔法は、生まれつき使える人だけがもった一種の才能・能力のようなものでした)

つまり魔法の歴史はここから始まったわけですが、この時代(巻)の魔法は全て「名前」によって成り立っています。

その他にも作中で度々「名前」というものが重要なキーワードとして登場してきます。

だからこその「名前の時代」という副題なんだと思います。

ただこれって、冒頭第0話の竜歴6050年で使われている、この時代の名称なんじゃないかなと。

私たちにとっての「弥生時代」や「古墳時代」と同じような感覚で、まだ名前だけが魔法の全てだった、魔法の始まりの時代のことを、

現代?では「名前の時代」と名付けているんじゃないだろうかという考えがふと思い浮かんだので、最後に余談みたいな感じで記載させていただきました。

 

<個人的名言・名シーン>

確かにテレビで語られる『始まりの魔法使い』はとても立派で、間違うことも失敗することもない、神様のような存在だ。

実際はそんなでなかったことを、わたしは良く知っている。

けれど、その苦労もまた、わたしたちは良く知っていた。

(???)

 

嬉しいのに、喜ばしいのに、胸の奥がぎゅっとして、息が上手くできない。

こんな気持ちにも、名前はあるのだろうか?

あいつなら、もしかしたら知ってるかもしれないけれど。

物知りな竜に尋ねるのは、もっとずっと後でいい。

(ニーナ)

 

「ニーナ。魔法学校を作ろう」

「もっともっと大きく、もっともっと偉大な学校を」

「この世界の誰もが知るような、そんな素晴らしい学校を、作るんだ」

(せんせい)

 

 







 

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魔術破りのリベンジ・マギア 感想

 

 

ならば、提案しよう。お前の全身全霊の一撃 ――― 今から僕が防ぎきってやる、とな

 

日本の魔術は世界一! 東洋VS西洋の本格魔術バトル!
二十世紀初頭――めざましい科学技術の発展の裏で、人類は確固たる魔術文明を築き上げていた。世界のパワーバランスすら左右する“魔術師"を育成する機関「セイレム魔女学園」。
そこで起きた怪事件解決のため、凄腕術士・土御門晴栄(つちみかど はるな)が米国の地に立つ! 「あらゆる状況を想定し戦術を千変万化させていく――これが、陰陽師の戦い方だ」
北欧神話・死霊術・吸血鬼、様々な魔術体系を東洋魔術でブッ飛ばせ! ハイエンド魔術バトルファンタジー、ここに開幕!!

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★ 7.5/10

感想

第10回HJ文庫大賞大賞受賞作、子子子子 子子子(合ってるよな?)先生の『魔術破りのリベンジ・マギア』の感想です。

例によって若干のネタバレを含んでますのでご注意を。

ジャンルとしては学園異能バトルもの、ストーリー展開はツボを押さえた王道といった印象です。何より作りこまれた物語の設定がすさまじいと思いました。この作者さん、ホントに魔術とか伝奇とか好きなんだろうなというのが作品からひしひしと伝わってきます。

ちなみに公式PVも作られていて、これだけでもこの作品の世界観がよく分かります。

 

 

設定厨・厨二好きの方必見! 凝りに凝って作りこまれた世界設定

あらすじからも分かるとおりこの作品、ありとあらゆる分野(と言うと言い過ぎですが)の魔術体系が登場します。しかもそれぞの魔術に対して、バックボーンや歴史に至るまで、背景が細かく作りこまれているといった印象。それゆえに魔術一つ一つに、まるで科学の説明を受けているかのような説得力を感じます。特に面白いと思ったのがそれぞれの地域(国)の文化・民族性が魔術体系にも反映されているところですね。僕は服好きなんでファッションの世界の例になっちゃうんですが、ロンドン・パリ・ミラノといったヨーロッパは「本場・総本山・源流」というイメージで、ニューヨークは「リアルクローズ」―― 既存の概念や歴史に囚われない実用性を重視して無駄をそぎ落とすイメージ、そして「ミックスカルチャー」こそが東京の特徴という認識があります。そしてこの作品で登場する各国の魔術体系は、まさにこれらの文化的特徴を内包して描かれているなと、読みながら非常に感心させられました。こういうところに注意して読んでいくのも、またこの作品の面白さの一つじゃないかなと思います。

後は様々な魔術組織やその名称・通称、魔術師の二つ名など、とにかく厨二心をくすぐる設定や単語のオンパレードで、そういうのが好きな読者にとっては涎ものだと思います。学園異能バトルものって、どんな作品でも少なからずそういう要素を含んでいるとは思いますが、ここまで1冊に詰め込んだ作品はそうそうないと思います。というか僕の記憶にある中では、単純な量でいくと、この作品がダントツで1番ですね。

ただ、設定が凝りまくっている分、特に序盤ではとにかく魔術関係の説明描写が多い! 正直、魔術の説明部分とかは読み飛ばしちゃう人もいるんじゃないかなと思ってしまいました。

一応僕は読み飛ばしたりはしなかったですけど、なんというか・・・ウザいとかくどいというわけではないですが、作者の熱量に圧倒されながら読んでる感じでした。

あともう一つ、舞台が米国だから基本的に名称が横文字になるからというのもあると思うんですが、とにかくルビを使った単語が多いです。主人公の陰陽道関連を除けば、およそほとんどの魔術関連の単語が漢字に横文字のルビで表現されているんじゃないでしょうか。この辺りは好みによる部分が大きいので、好きな読者にはたまらない長所でもあると思いますが、僕は読んでてちょっと疲れたというのがホンネですね。この辺りもう少し抑えてバランスをとってくれると、もっと読みやすいし頭に入ってくるんじゃないかなというのが個人的な感想です。

 

プロフィール一つとっても設定の綿密さが伺える

 

期待を裏切らない学園異能バトルものの王道展開

ストーリーの概略としては、米国にある魔術学園の一つであるセイレム女学園で起きたとある怪事件解決のため、日本のトップクラスの魔術師(陰陽師)である土御門晴栄が派遣される。そんな中、生徒としてのいざこざに巻き込まれたりしながら、事件の調査をすすめる内、驚愕の真実が浮かび上がり…といった感じでしょうか。

物語の導入が事件調査なので、ミステリー的な要素も含んではいるんですが、それよりも学園異能バトルものらしいエンターティメント的なストーリーがメインかなと思います。東洋からの転校生への周囲の反応、いきなりの学園トップクラスの生徒との決闘、事件の真犯人~黒幕との最終決戦と、学園異能バトルものの1巻にふさわしい内容が詰め込まれてた王道展開。また、それぞれのエピソードがうまく次の展開への前振りになっていて、流れるように物語が進んでいくのも見事だなと思いました。

それと単純に、いろんな魔術体系がガチンコバトルするっていう展開が燃えますね。『Fate』なんかで、過去のいろんな英雄がバトルするっていうのと同じようなワクワク感を感じました。あと主人公の使う陰陽道の「あらゆる魔術の要素を学び、取り込み、己の力へと昇華することを重ねてきた魔術」という設定が個人的にツボでした。こういう柔軟な戦術が、伝統とか格式とかに囚われた相手を打ち破っていくのが好きな方にはドストライクな作品だと思います。

 

 

 

<個人的名言・名シーン>

「ならば、提案しよう。お前の全身全霊の一撃 ――― 今から僕が防ぎきってやる、とな」

(土御門 晴栄)

 

「あらゆる状況を想定し、戦術を千変万化させていく―― 陰陽師の戦い方だ」

(土御門 晴栄)

 

 







 

 

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月とライカと吸血姫 (1~2巻) 感想

 

 

この成功を肉の煮凝りホロデーツで、お祝いしましょう。精一杯の感謝を込めて

 

宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女の物語。

人類史上初の宇宙飛行士は、吸血鬼の少女だった――。
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。
共和国の最高指導者は、ロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。『連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ!』と息巻いていた。

その裏では、共和国の雪原の果て、秘密都市<ライカ44>において、ロケットの実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。とある事件をきっかけに、宇宙飛行士候補生<落第>を押されかけていたレフ・レプス中尉。彼は、ひょんなことから実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナ・ルミネスクの監視係を命じられる。

厳しい訓練。失敗続きの実験。本当に人類は宇宙にたどり着けるのか。チームがそんな空気に包まれた。
「誰よりも先に、私は宇宙を旅するの。誰も行ったことのないあの宇宙から月を見てみたいの」
イリナの確かな想い。彼らの胸にあるのは、宇宙への純粋な憧れ。

上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を目指す彼らがそこにはいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティがここに。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★★☆ 9.5/10

 

感想

『月とライカと吸血姫』の2巻の感想を書こうとして、そもそも1巻の感想も書いてないやってことで、

またしても1~2巻まとめての感想です。すいません。

 

ちょっとばかりネタバレもあるんで、ご注意を。

1巻 感想

まず作品を通してですが、これまたとんでもなく美しい物語が出てきたな!というのが第一印象。

ジャンル的にはSFファンタジーになるんでしょうか?
宇宙開発と言うSF要素に吸血鬼という伝奇の王道をぶっこんでくるという組み合わせが斬新です。

ただ物語としては、古きよき時代を思い出すような王道のボーイミーツガールものですね。

種族の違う二人が心を通わせていく過程がとても綺麗に描かれています。

また、この作品のスゴイのが、SF、伝奇、ボーイミーツガール、種族差別、国家間の陰謀などこれでもかってくらいいろんなテーマを扱ってるのに、ビックリするくらい一つの物語として綺麗にまとまっているところですね。じゃあ結局この作品はどんな話なのかというと、あらすじに書かれている「宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ」。このフレーズがもっとも上手くこの作品の雰囲気と内容を表していると思います。

 

宇宙(そら)に夢見る少年と少女の物語

上で述べたように、この物語にはいろんな要素が詰め込まれているんですが、おそろく一番のテーマは宇宙飛行士を目指す少年と吸血鬼の少女のボーイミーツガールについてだと思います。

物語の舞台は世界観としては米ソ冷戦時代の宇宙開発競争を彷彿とさせる(生まれてなかったの想像ですが)世界観の架空の世界で、

そんな陰謀渦巻きまくる世界の中で主人公のレフはただただ宇宙に憧れる純粋な青年として描かれています

そんなレフが、人間が宇宙飛行に耐えられるかを確かめるための実験体として選ばれた吸血鬼のイリナと出会ったことで、物語は大きく動き出します。

 

この作品の世界設定としては、陰謀とか差別とかかなりどろどろしているのに、物語としてすごく美しくて綺麗に感じるのは、この二人の純粋な在り方と関係性が一つの要因となっているんだと思います。

まず主人公のレフについてですが、彼の場合、けして世間知らずとか世の中が分かっていないとかそういうわけではなくて、ちゃんと国家の腹黒さとか人の醜さとかを分かった上で、それに染まることなくただ純粋に宇宙を飛びたいんだという夢に向かって突き進んでいるという感じで、非常に好感が持てる主人公だと思いました。

ヒロインのイリナについては、また絶妙なバランスのキャラとなってますね。ツンデレっぽい感じで意地っぱりなんですけど、実は割と泣き虫で素直。何より物事に対して真っ直ぐな心の在り方が美しいです。

そして1巻の大部分を使って、この二人が徐々に打ち解け合い、心を通わせていくその描写がとても素晴らしいです

何か大きな出来事をきっかけにして距離が縮まるとかではなく、本当に小さなことの積み重ねで、お互いを少しずつ理解していく過程がじっくり丁寧に描かれおり、

これぞボーイミーツガールもののストーリーといった感じで、まるで青春小説を読んでいるような感覚でした。

 

食堂での一幕。訝しげな視線と慌てて取り繕うレフ

普通の人間と変わらない存在として描かれる吸血鬼

もうひとつ、この作品では人種差別、というか種族差別もテーマとして扱っているんですが、ここですごいと思ったのが迫害される立場である吸血鬼の設定ですね。

この作品では吸血鬼を超常の存在ではなく、人間とほとんど変わらない一つの種族として描いています。これによって人と同じような存在でありながら、単なる種族の違いだけで意思ある生物を「モノ」として認識できてしまう人間の醜さを上手く描写していると思います。

架空の世界に現実と同じような史実を挟んでいるのもそうなんですが、この作品はとにかくファンタジーとリアリティのバランスが絶妙だと思います。

2巻 感想

高度百キロメートルの宙から君を想う。

『ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフ・レプス中尉は、晴れて念願の宇宙飛行士候補生に復帰する運びとなった。それに合わせて吸血鬼の少女イリナ・ルミネスクを監視する任務からも解かれることになる。昼を生きるレフと夜を生きるイリナ。ふたりは同じ基地内でもすれ違ってしまう、そんな生活が続いていた。

イリナの様子を気にかけつつも、レフは自身の夢を叶えるために「人類史上初」をかけた宇宙飛行士選抜試験に挑み、優秀なライバル達と鎬を削る。

その一方で、不穏な空気がイリナの周りを包もうとしていた。

「実験体が帰還したようです」
「……もう用済みだろう。廃棄処分を」

回り始めた運命の歯車は、果たしてどこに行き着くのか――。

世界に渦巻く巨大なうねり。一枚岩ではない共和国政府。追いつけ追い越せと躍起になっている連合王国。いまだ人類が宇宙に行くことが奇跡だと思われていた時代。様々な思惑に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が織りなす、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。

 

この巻に関しては、ライトノベルの「2巻」を読んでここまで圧倒された作品を他に聞かれたら、ちょっとすぐに思い浮かばないくらい、物語の完成度が高かったです。

ここでいう完成度とは、細かい技術的な話ではなくて、仮に2巻でシリーズが終わりだったとして(絶対3巻出してほしいですが)一つの作品として十分に満足できるという意味で使用してます。

そもそもこの作品の2巻を読むに当たって、1巻の物語がすごく綺麗だっただけに2巻が蛇足になったら嫌だなという思いがあったのですが、そんな不安に思ってすんませんしたっ!!と、思わずジャンピング土下座をかましそうになるくらい、素晴らしいストーリーでした。

1巻との対比、まるではじめから上下巻の作品と思えるほど綺麗なストーリー

僕がこの作品を読んで、最もすごいと感じたところ。

この作品て1巻単体でみても、物語としてすごくきれいにまとまってるんですよね。読み切り作品というか、まるで1本の映画をみてるような気持ちになります。ただ、2巻を読み終えた時点でまるでこの作品は最初から前後編で一つの物語として書かれていたんじゃないかと思うほど、完璧なつながりと結末が描かれています。

 

■物語の中心がイリナ→レフへ

この作品のストーリーについて、出来事に焦点をあてて説明すると、1巻はイリナが「史上」初の宇宙飛行士となるストーリーと言えます。それに対して、2巻はレフが「人類」初の宇宙飛行士を目指すストーリーであると言えます。

この辺りの描写が1巻から続くこの世界での吸血鬼の設定が上手く生かされていて、レフ吸血鬼イリナの境遇の差が胸を締め付けてくるようでした。

 

■レフとイリナ以外の登場キャラの掘り下げ

この巻で登場するメインキャラの多くは、1巻から継続しているキャラになります。

ただ1巻ではほぼ主人公とヒロインの掘り下げに焦点が当てられていたため、彼らについてはそこまでキャラの深堀りがされおらず、メインと言ってもほとんど名前のあるエキストラに近い印象でした。それを2巻ではそれぞれの内面をぐっと掘り下げてきたわけですが、共に宇宙飛行士を目指すミハイルもローザも、イリナの監視担当のアーニャも、宇宙船開発者のコロ―ヴィンも、みんないい奴過ぎて泣けてきます。どのキャラのエピソードもすごく良かったのですが、個人的にとくにお気に入りなのがイリナとアーニャが歓喜に沸く群衆の陰で抱きしめ合うシーンと、コロ―ヴィンから国家最高指導者のゲルギエフへの手紙の文面ですね。たった一文にあんなにやさしい想いの詰まった「脅迫状」はないと思います。

 

ゲルギエフとリュミドラの役割

上で述べたようにこの作品の主要キャラのほとんどは善人として描かれています。そんな中、国家最高指導者のゲルギエフと秘書官のリュミドラがこの物語の不穏な側面を一手に担っているキャラであると言えます。ただ、決して悪人というわけではなく、清濁併せ持つ政治家らしい政治家といった印象のキャラクターで、彼らの存在と根回しがともすれば青臭くご都合主義に映ってしまいかねないクライマックスの演説とその後の展開に、しっかりとした説得力を持たせていると感じました。その辺りのバランス感覚もこの作品の素晴らしい部分だと思います。

 

<個人的名言・名シーン>

「泣いてないわよ……雪解けの — あなたのせいで、氷が溶けてるだけ……」

(イリナ)

 

「この成功を肉の煮凝りホロデーツで、お祝いしましょう。精一杯の感謝を込めて」

(レフ)

 

「イリナちゃんが、ずっと頑張ってたの、知ってます……。イリナちゃんの祝賀会、缶詰なんかじゃなくて、もっとお祝いしてあげたかった。でもごめんなさい……。一緒にご飯を食べたり、お話したりするくらいしかできなかった……ごめんなさい」

それで十分だよと、イリナは伝えたかった。

(アーニャ&イリナ)

 

 

 

 







 

 

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