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『白翼のポラリス』 感想

 

 

これは僕がまだ父さんの「白翼」を継いで間もなかった頃、大袈裟かもしれないけど、星と星がぶつかるくらいの巡り合わせで出会った相棒と空を駆け、これまた大袈裟に言えば、僕らの暮らす小さな世界を守った時の話だ。

 

どこまでも続く空と海。はるか昔に陸地のほとんどを失った蒼き世界、ノア。人々は、いくつかの巨大な船に都市国家を作り、わずかな資源を争って暮らしていた。飛行機乗りの少年・シエルは、そんな“船国”を行き来し、荷物を運ぶ“スワロー”。愛機は父の遺した白い水上機“ポラリス”。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせず、他人との関わりに息苦しさを感じていた彼は、無人島に流れ着いた少女・ステラを助ける。素性も目的も、何も語らない彼女の依頼で、シエルはステラを乗せて飛び立つことに。その先には、世界の危機と巨大な陰謀が待ち受けていた――。紺碧を裂いて白翼が駆ける。あの空みたいに美しい、戦闘機ファンタジー。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10

 

感想

発売してすぐ読み終わってたんですけど、ずっと感想書かずに放置してしまってた作品その1です。

いや、放置してた理由については完全に八真八 真のせいです。(えー

つっても文才無いんでちょっとした感想書くのでも、多大な時間がかかるからラノベの新作読むのを優先してただけですが・・・(えー

というわけで第6回講談社ラノベ文庫新人賞「佳作」受賞作、『白翼のポラリス』の感想です

 

空と海、"青"い世界で紡がれる『飛行機ファンタジー』

作品紹介では戦闘機ファンタジーと書いてありますが、個人的なイメージとしては飛行機ファンタジーといった方がしっくりきますね。

主人公は軍人じゃなくて運び屋ですし。

 

ざくっと作品の世界観について説明すると・・・

物語の舞台は、陸地のほとんどが水の底に沈み、空と海しかないノアという世界。

その世界では、人々は海流に乗って移動する実行の浮島である船国で暮らしています。

この船国がそれぞれ独立した国になっているのですが、

土壌がそんなにあるわけでもなく、各国は少ない資源を取り合っているという事もあり、

それぞれの国の浮島がどのように周回しているのかを記録したストリームチャートを極秘扱いしているという設定になっています。浮島の位置が分かってしまったら資源を強奪するような戦いが起きてしまうということからも、ストリームチャームの重要性がわかるかと思います。

そんな国家間のストリームチャートを預かり、勇逸、古代の技術で製造された戦闘機で行き来ができる運び屋をスワローというのですが、主人公のシエルは伝説的なスワローだった父親から白翼という名を受け継ぎ、スワローとして生活しているってのがこの物語の冒頭になります。

 

ちょっと不思議な世界観ですが、よく練られているなぁという印象。

飛行機乗りの運び屋って設定自体はちょいちょい聞きますが、ほぼ海と船国で成り立っている「ノア」という世界との組み合わせは面白いなと思いました。それによってよりいっそう飛行気乗りの重要性が際立っているように感じましたね。

あと冒頭の世界観の説明部分が長すぎず、かつ分かりやすくてすんなり物語に没入することができました。

新人の作家さんなのにその辺のバランスは上手いなと思いました。

 

懐かしさすら感じる超王道のボーイミーツガール

この作品は徹頭徹尾主人公のシエルとヒロインのステラの出会いを描いた物語です。

極論ですが、ノアという世界もスワローという職業も、その他の設定も、この二人の出会いを彩るためのパーツとして

考えられたんじゃないかなってくらい、作者の方の「ボーイミーツガール」を描きたいんだ!っていう思いを感じました。

そんな二人の物語については、最初っから最後まで王道ど真ん中で展開していきます。

とある島で休暇中のシエルが、その島に流れ着いた謎の少女ステラを助けるところから二人の物語ははじまるわけですが、

まずこの最初の出会いからしてベタですよね。でも個人的にはボーイミーツガールものってこれっくらいベタな方が好きです。

むしろ最近はひねくれた展開がテンプレっぽい感じになっているので、ここまで直球な物語はどこか懐かしくも新鮮な感じがしますね。

 

その後シエルがスワローだと知ったステラは、自分をバトーという船国まで連れて行ってほしいという仕事の依頼をすることになります。

結局シエルは断り切れずに仕事の依頼を受けることになり、二人でバトーを目指すことになります。

 

どこか幻想的な雰囲気を感じる作品の空気感

この作品の中でも特に好きなのが、二人でバトーを目指すまでの道中の描写というか空気感です。

特にそこまで大きな出来事が起こるわけではなく(謎の敵機と遭遇するまでは)

比較的淡々とすすむわけですが、その間の二人の会話ややりとりに読んでいて不思議なノスタルジーを感じるんですよね。

上手く伝えられないんですが映画の『スタンドバイミー』を見た時やサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ時の何とも言えない感情に近いものを感じました。

カバーイラストから感じる雰囲気を一番描写しているのが、このバトーを目指している間の二人じゃないかなと思います

 

 

物語は静から動へ、臨場感あふれる飛行戦闘

この作品は起承転結という物語の基本に結構忠実な構成で描かれているのですが、冒頭~シエルとステラの出会い、バトーを目指している道中は比較的緩やかに物語は進んでいきます。

それが、バトーへの道中謎の敵機との空戦から紆余曲折を得てバトーに到着した辺り、物語でいうとまさに"転"の部分から一気に物語は加速して動き出します

特に謎の敵機シリウスとの再戦シーン、シャンデルにインメルマンターン、作者飛行戦闘好き過ぎだろってくらいの迫力ある戦闘からシエルの魂の叫び、内面描写までとにかく熱い!

この戦闘が間違いなく作品全体の山場であると言えます。

ただそこからエンディングまでの展開がちょっと強引だったかなという気がしました。バトーへの着水、国王との話し合い、バトー・ヴェセルの空戦への介入に関しては、正直ちょっと説得力が弱いというか「えっこんなりすんなりいくの?」という印象もありました。シリウス機との空中戦がクライマックスでその後は長いエピローグのようなものとの見方もできますが、ここでもう一つ山場があると、なお素晴らしかったという想いがあるだけに、少しだけ惜しいと感じました。

 

全体を通して・・・

王道で素直な物語なのと、作品全体を包みこむ空気感が澄んでいるので、読後感は非常に清清しいです

主人公とヒロインもとてもまっすぐなキャラで、時に青くさくも感じますが、それもまたこの作品の味なのかなとも感じています。この青くささがファンタジーでありながら青春物語としての側面を感じさせてくれているのかなと。

実際物語の冒頭は三年後の主人公が、自身の青春を回顧するような語りで始まってますし。

ラブコメとはまた違った癒しを感じたい人、ひねくれてない優しい物語を読みたい人は一度読んでみていただきたいなと思います。

あとカバーイラストが気に入った人は、ストーリーもカバーイラストのイメージまんまな雰囲気なので、迷わず手にとってみていただきたいですね。

 

 

<個人的名言・名シーン>

僕だって、お前がいなくなってからコイツと空を飛んできた!お前の知らない空を見てきた!お前の知らない人と出会ってきた!お前の知らない時間を生きてきた!

お前の名前は知らない!聞く気もない!

でも、僕の名前は覚えていけ!

(シエル・ミグラテル)

 

 

 

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<アニメ化&映画記念>『サクラダリセット』 感想

 

 

 

「ー猫を助けて、犬を助けて、できるなら人を助けて。

 

 そんなことをしていきましょう、これからは」

 

「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ──。能力者が集う街、咲良田。見聞きしたことを絶対に忘れない能力を持つ高校生・浅井ケイ。世界を三日巻き戻す能力・リセットを持つ少女・春埼美空。ふたりが力を合わせれば、過去をやり直し、現在を変えることができる。しかし二年前にリセットが原因で、ひとりの少女が命を落としていた。

時間を巻き戻し、人々の悲しみを取り除くふたりの奉仕活動は、少女への贖罪なのか?不可思議が日常となった能力者の街・咲良田に生きる少年と少女の優しい物語。

 

八真八 真の満足度・・・★★★★★★★ 10/10

 

感想

『すかすか』に続くアニメ放映記念第2弾ということで『サクラダリセット』の感想です

それにしてもこのシリーズ、最終巻が出たのが2012年。まさか完結から5年たったこのタイミングでアニメ化されるとは思ってもみませんでした。当時の僕のサクラダリセットに対する感想としては、"すごく高い評価を受けるだろうけども、メジャーになるのは難しいだろうな"というものでした。

ちょっと古い例えですが、SAOとかのライトノベルの王道人気作がとサクラダリセットの立ち位置って映画の『タイタニック』と『グッド・ウィル・ハンティング』みたいなんですよね。

『タイタニック』は1998年に公開されるや、世界中で社会現象を起こし、アカデミー賞では14部門でノミネート、うち11部門で受賞しており、この年のアカデミー賞の主要部門はほぼタイタニックの独壇場ともいえるほどの化け物的人気を博した作品なんですが、実はこの年のアカデミー賞で脚本賞を受賞したのが『グッド・ウィル・ハンティング』なんです。この作品は男の友情を描いた作品なんですが、大きな事件が起こるわけでも派手な映像で見せるわけでもなく、あんまり映画見ない人の中には知らない人も結構いるくらいなんですが、とにかくストーリーが素晴らしくて、映画好きの人たちの中でもかなり評価の作品なんです。

『サクラダリセット』も同じで、派手なバトルやスピーディな展開で魅せる作品ではない代わりに、綿密に織り込まれたストーリーの美しさと作品を包み込むやさしい雰囲気がこの作品の魅力となってるんですね。だから読んだ人には素晴らしいと思ってもらえるだろうけど、どうしてもバトルモノとかラブコメものとかと、比べるとエンターティメントとしては地味な印象になっちゃうので、その辺がラノベファンからしたらどうなのかなと。

だから当時のぼくの心情としては

「もったいないなサクラダリセット」「俺にとってはこんなにも面白いのに」

「おれだけは認めてやろう」「ちゃんと大事に保管しておくからな」

って感じだったんですね。

僕としては本当に良い作品なので、もっと人気出て多くの人に知ってもらいたいなと思っていたわけです。そういった意味では今回のアニメ化は本当に待望だったと言えますね

 

作品全体を取り巻く空気感と読後の余韻

綿密に計算された咲良田町と能力の設定だったり、美しいストーリー構成だったり、この作品の素晴らしい所はいっぱいありますが、この作品の一番の特徴は?と言われたら、僕は独特の"空気感"だと答えると思います。作品全体がライトノベル作品の中でも一種独特の、どこか叙情的な空気感をかもし出しているんですよね。その空気感こそが『サクラダリセット』を『サクラダリセット』たらしめている一番の特徴じゃないかなと。

その原因はどこか淡々としたケイと春埼の会話だったり、透明感を感じさせる文章にあると思います。

なんていうか会話も文章も不思議な言い回しがあるというか、ライトノベルより一般小説読んでるような文体なんですよね。ちょっと村上春樹の言い回しに似てるなとも思いました。

もちろん村上春樹ほど個性的な比喩表現をしたりするわけではないですけどね。

 

正式な依頼だし―とは続けない。もしかしたらこれは正式な依頼ではないのかもしれない。

 

っていう文章があるんですが、

この「もしかしたら~かもしれない」「あるいは~かもしれない」って表現は作中にけっこう登場するんですが、村上春樹も結構こういうどっちつかずの表現多いんですよね。しかもどっちでも物語には何ら影響しないという...

あとは、

 

猫は、室内にいるのなら、少なくともこの雨に濡れることはないだろう

 

っていうちょっと詩的な表現だったりが、なんとなく似てるなと。

ただ読後に幸せな気持ちになるとことか、ちゃんと伏線回収するとことかも考えると、むしろ伊坂幸太郎に近いのか?

ただ逆にこういうちょっと叙情的な文章ってラノベではほとんどみないですね。

だからこの作品の持つ空気感が独特に感じるのかもしれません。

あと村上春樹の雰囲気以外に、PCゲームの『AIR』とか『kanon』(どちらもkeyの作品)が持つ郷愁めいた雰囲気にも似てるなと感じました。

ただあちらは歌詞のような文章のリズムと音楽の相乗効果でそういう空気感を出してるのに対して、こちらは文章でそれを表現しているのは素直にすごいなと思います。とにかくこの空気感が読んでてすごく心地よく、また読後に何とも言えない余韻を残してくれています

 

美しい言葉で綴られる美しい文章、美しい物語

綺麗な言葉で会話をしよう

汚いものは、全部どこかに押し込んで。

 

これは1巻で非通知くんという情報屋(のような人)が主人公の浅井ケイと初めて会話したときに言うセリフです。

この非通知くんというのは超ド級の潔癖症で、このセリフはそんな彼のキャラクターをよく表しているのですが、

それ以上にこの美しいセリフは作品をよく表しているなと思います。

この作品自体が終始、すごく澄んだ美しい言葉で語られているように感じます。

汚いセリフが使われていた記憶が全くありません。あるいはどこかで使われていたりするかもしれないですが、印象に全く残らないなら、同じことだと思います。

物語は優しく、時間はゆっくりと流れていき、幸せな結末に向かって物語は収束していきます。

何とも言えない幸せな気持ちを感じることができるこの読後感は唯一無二であると言いたいですね。

 

サブタイトルのセンス

えっ?そこっ!?と思うことなかれ。なにしろ僕が初めてこの作品を読んだのは1巻の

『CAT,GHOST and RECORUTION SUNDAY』というサブタイトルに魅かれたからなのです。

ちなみ各巻のサブタイトルは

 

1巻『CAT,GHOST and RECORUTION SUNDAY』(猫と幽霊と日曜日の革命)

2巻『WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』(魔女と思い出と赤い目をした女の子)

3巻『MEMORY in CHILDREN』(機械仕掛けの選択)

4巻『GOODBYE is not EASY WORD to SAY』(さよならがまだ喉につかえていた)

5巻『ONE HAND EDEN』(片手の楽園)

6巻『BOY, GIRL and --』(少年と少女と)

7巻『BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA』(少年と少女と正しさを巡る物語 )

 

となってます。( )内は角川文庫版のサブタイトルとなっています。

まずどちらも、読んだ際の響きがとにかくかっこいいということ(えー

いや、これは単なる好みなんですが、最近のラノベは直接的なタイトルが多いですがこういう意味深めいたサブタイトルの方がかっこいいと思うんですよね。若干の厨二心をくすぶられる感じです。

ふたつめに、これってサブタイトル単体だと意味不明なんですが、その巻を読んでみると、めちゃくちゃ端的に内容を表してるんですよね。意味深めいてるけど意味不明で、ちゃんと意味のある、そんなサブタイトルの意味について考えながら読んでみても面白いと思いますよ。

あと単純にこのサブタイトルがかっこいいと思った僕と同志の方は中身のセリフや言葉選びのセンスについても太鼓判を押しておきます。

 

小説としての圧倒的完成度

1巻発売から完結までの約3年間で全7巻。一切の無駄が無く、一切の不足も無い。綿密に練りこまれたストーリー展開と伏線。ほんとプロットとか見てみたいくらい完璧な構成だと思います。

特に圧巻なのは1巻の構成ですね。ストーリー全体の導入部分という役割も担い、今後の伏線を含みつつ、それ単巻としても物語が完成してるんですよね。極論、たとえ1巻でサクラダリセットが終わっていたとしても僕は手放しですばらしい作品だったと褒め称えていたと思います。

それくらいこの小説のストーリーは、全てが考え込まれていて美しいと感じるものでした。

今から7冊も読むのはなぁと思ってる方は、まず1巻だけでも読んでみてください。それ単巻でも一つの映画にできるくらい、物語が完成されています。

 

あと、上でもちらっと触れてますが、このサクラダリセットは元々角川スニーカー文庫から出版されているんですが、2016年に角川文庫からも一般小説として発売されいます。

正直カバーイラストはスニーカー文庫版よりこっちの方が好みですね!(えー

じゃあ角川文庫版をお勧めするかといわれると、角川文庫版には口絵や挿絵がないので、難しいところですね。

サクラダリセットって挿絵の使い方も独特で好きなんで、それを見てほしい思いもあります。

 

こんな感じで、文章と同じページの端に挿入される挿絵がたまにあるんですが、これが文章と一体となった感じで心に響いてくるんですよね。

(もちろん普通に1ページまるまる使った挿絵もありますよ)

挿絵が演出としてすごく機能していると思います。

ぶっちゃけ迷ったら両方買えといいたい!(えー

実際私はスニーカー文庫版も角川文庫版も両方買ってます。。。

 

 

角川スニーカー文庫
角川文庫

 

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ライトノベルにおける流行ジャンルの変遷

 

最近、特に小説家になろうの書籍化が極端に増え始めてからですかね、けっこうラノベのトレンドというか、流行ジャンルが変わってきたなと思うようになりました。

そうなってくると、昔はああだったとか考え出して、考え出すといろいろと思うことが出てきたので、ちょっと自分の中で整理する意味もかねて、ジャンルの変遷と個人的な意見についてまとめてみました。

 

 

 

ライトノベルにおける流行ジャンルの変遷

<80年代後半~90年代前半>

王道の異世界ファンタジー

今回はライトノベルの中のジャンルという以前に、「ライトノベル」という立場が確立されたのをこの年代としております。

これには諸説あると思いますが、ここでは管理人の一存で、角川スニーカー文庫(87年10月創刊)と富士見ファンタジア文庫(88年創刊)

が創設された80年代後半から、『スレイヤーズ』『魔術師オーフェン』などの大ヒットで、ライトノベルというジャンルが認知されるようになったであろうこの時代を最初期としたいと思います。

正直、この年代は僕自身まだラノベを読み始める前、というか超ガキんちょの頃なので、作品も全然詳しくないんですけど、(えー

知ってる作品を見てみると、正統な剣と魔法の世界を舞台とした王道の異世界ファンタジーがメインジャンルだったのかなと思います。

 

 

 

 

<90年代後半~00年代前半>

舞台は現代~近未来の地球へ

90年台の後半からこれまでの異世界ファンタジーに代わり、現代の日本、もしくはそれに限りなく近い架空の日本を舞台にした作品が台頭してきます。

おそらくその先駆けとなったのは『ブギーポップは笑わない』『フルメタルパニック』の大ヒットだと思います。

この2作品のヒットによって、ラノベの主流は完全に異世界から地球を舞台にした作品へと移ったと言えるのかと思います。

 

 

 

現代異能バトルものの隆盛

いわゆるゼロ年代以降、ラノベのメインストリームだったのは間違いなくこの現代異能バトルものだと言えると思います。

このジャンルの特徴は、私たちが暮らす日常と非常に近い世界観の中に、魔法や特殊能力・暗躍する組織とのバトルといった非日常が組み込まれていることです。

また、戦闘と共に主人公をはじめとする主要キャラの、己の内面に大きく踏み込んだストーリー、いわゆるセカイ系の要素を含んだ作品が多かった点も、この時代のバトルものの大きな特徴ではないでしょうか。舞台は異世界から日常へと変わり、悩むべきは世界の行く末からセカイの中の自己の在り方に変わっていったのだと言えるのかなと。

そして魔法は異能力へ変わり、その能力はキャラクターの内面を映す鏡のような存在として描写されるようになりました。

 

 

 

 

ゼロ年台前半を象徴するボーイミーツガールもの、感動系のライトノベル

現代異能バトルと並んでもう一つ、ゼロ年台の人気作には、シリアスというか、ストーリー性を重視した作品も多かったというのも言えるかと思います。『イリヤの空、UFOの夏』に代表されるボーイミーツガールもの、『LAST KISS』なんかに見られる難病ものといったジャンルの作品が高い人気を博しました。

あと、主観ですがこのジャンルの作品には文章や作品全体の雰囲気に透明感のようなものがあったように感じています。総じて物語の美しさが評価された時代だったのかもしれません。

 

 

 

 

ライトノベルにおけるラブコメジャンルの確立

また、この頃からラノベでもラブコメ作品が登場し始めます。

魔法というファンタジー要素を含んだ人気ラブコメ作品『まぶらほ』もこの時代の作品です。

その後、セカイ系の要素も含んだ『涼宮ハルヒの憂鬱』の大ヒットをきっかけとして、ラブコメ作品が注目を浴びていく中で、時代はゼロ年代半ば~後半へと移っていきます。

 

 

 

<00年代半ば~後半>

ラブコメ黄金期 読者のニーズは感動から萌えへ

ゼロ年代前半に恋愛物の主流だったボーイミーツガールものが徐々に影を潜めていくのと反比例するように、

人気のラブコメ作品が次々と登場してくるようになります。

ゼロ年代前半で述べたラブコメ確立期の作品はSFなどの不思議要素を盛り込んだ作品が主でしたが、ラブコメ黄金期とも言えるこの時代はむしろ、そうした不思議要素を排除した、いわゆる普通の日本を舞台とした男女の関係を描いた作品が人気を博しました。

 

 

 

 

シリアス→ラブコメ・萌え要素を含んだ明るい異能バトルもが主流に

ラブコメが黄金期を迎えるのと時を同じくして、異能バトルものについてもゼロ年代前半と比べて、内容に少なからず変化がありました。

それまではセカイ系の作品に代表されるシリアスな作品が多かったのに対し、この時代の現代異能バトルものはヒロインとのラブコメ要素を盛り込んだ、明るいストーリーの作品が数多く見られるようになりました。

また、主人公をメインヒロインと複数のサブヒロインが主人公を取り合う、準ハーレム的な展開が王道となっていったのもこの時代からじゃないかなと思います。

かわいいイラストにツンデレや幼女、幼馴染にクールキャラといった個性的なヒロイン、ストーリーよりキャラクター重視の、いわゆる「萌え」要素というものを盛り込んだ作品が主流になっていきました。

ファンタジー要素を排した王道ラブコメラブコメ要素を盛り込んだ異能バトルものが2大ジャンルとして君臨したゼロ年台半ば~後半は、「萌え」という要素が非常に重要視されるようになった時代と感じられます。

 

 

 

 

<2010年頃~2015年頃>

円熟・安定期に入ったラブコメと異能バトルもの

この時代のライトノベル市場は、ゼロ年代後半からの流れをそのまま踏襲するように、現代を舞台としたラブコメと異能バトルものが安定的な人気を得ていました。キャラクター重視の傾向も同じで、表向きは大きな流行の変化も少ない、全体的に安定した時代だったのではないでしょうか。

しかし、この2つのジャンルに関しては、安定的であるがゆえに『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『とある魔術の禁書目録』を筆頭とした、2005年頃~2010年頃から続いている超人気長編シリーズの新刊が市場の話題を独占し続ける状況が続いた時代でもありました。

 

 

ソードアートオンラインがもたらした衝撃

ラブコメと異能バトルの2大ジャンルが安定期に入った一方で、2009年、後のライトノベル市場全体に大きな影響をもたらす一石が投じられることとなりました。

ちょうど先日映画化され、圧倒的な人気を誇っている『ソードアートオンライン』の発刊です。

元々は作者の個人サイトに掲載されていた人気のWEB小説だったのですが、作者が『アクセル・ワールド』で電撃文庫からデビューする際、担当編集の英断で、ソードアートオンラインも書籍化されることとなったのです。

VRMMOという新たなジャンル(過去にも扱った作品はありましたが、定着するには至っていないため、新ジャンルとしています)、命の重みを感じさせる高いストーリー性、ラブコメというよりは純愛ものといった雰囲気の恋愛描写。ゼロ年代半ばから続いていたライトノベルの主流とは明らかに異なるジャンルの作品が、たった1作でそれらと同等、あるいはそれ以上の地位を得るに至ったのです。

白状すると、僕はWEB版を読んでこの小説の実力を知っていたので、ソードアートオンラインの1巻が発売された際に、人気作になるかもしれないとは予想していました。しかし予想を上回る盛り上がりに、いずれVRMMOというジャンルが現代異能バトルに代わって、バトルもののメインジャンルになるだろうと確信しました。......残念ながら思いっきり確信ははずれたわけですけど(えー

SAOみたいに純粋なMMORPGを題材としたジャンルは、予想に反して定着しませんでした。ただそれとは別に、後にライトノベル市場に変革をもたらす楔を打ち込んだことは間違いありません

 

 

WEB小説発作品という新たな兆し

ラブコメと異能バトルの項目で述べたように、この時代はメガヒットシリーズの新刊が市場を席巻し続け、よく言えば安定、悪く言えば停滞していた時期だったと言えます。それはライトノベル評論誌の「このライトノベルがすごい」で、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『とある魔術の禁書目録』『ソードアートオンライン』の3作品が2011年以降、常に上位にランクインし、トップを独占し続けていたことからも伺い知ることができます。

 

「このライトノベルがすごい」歴代上位作品

年度 1位 2位 3位 4位 5位 6位
2011年 とある魔術の禁書目録 僕は友達が少ない バカとテストと召喚獣 ソードアート・オンライン ベン・トー “文学少女”シリーズ
2012年 ソードアート・オンライン とある魔術の禁書目録 ベン・トー 円環少女 バカとテストと召喚獣 僕は友達が少ない
2013年 ソードアート・オンライン とある魔術の禁書目録 六花の勇者 バカとテストと召喚獣 俺の妹がこんなに可愛いわけがない やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
2014年 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン とある魔術の禁書目録 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ソードアート・オンライン はたらく魔王さま!
2015年 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ソードアート・オンライン ノーゲーム・ノーライフ とある魔術の禁書目録 後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール 絶深海のソラリス

 

しかし、表面的には非常に安定していた一方で、今思うと、ゆるやかに、しかし確実に変革の兆しはあったように思います。

それが、『ソードアートオンライン』に端を発した、WEB小説発作品の台頭です。

『ソードアートオンライン』に続いてWEB小説で話題となった作品が次々と書籍化されるようになっていきました。

ただSAO同様電撃文庫から書籍からされた『魔法科高校の劣等生』はジャンルとしては現代異能バトルものですし、SAOもMMORPGという新ジャンルでありながら舞台としては現代(近未来)の日本でした。逆に『まおゆう魔王勇者』はライトノベル最初期を彷彿とさせる異世界ファンタジーものと言えます。

この時代はWEB小説というものが徐々に読者の間に浸透しつつ、その作品の傾向としては試行錯誤されていた過渡期であったように思われます。

 

 

 

<2015年頃~2017年>

小説家になろうから書籍化された「異世界転生」「異世界召喚」ものが爆発的に増加

この時代になると小説投稿サイトの「小説家になろう」から作品が次々と書籍化されるようになります。ちなみに2017年3月20日時点で、小説家になろうの累計ランキング上位100作品のうち、実に94作品が書籍化されており、なろう全体では数百作品に及ぶと思われます。

そしてこの頃になると、2010年頃はあいまいだったWEB小説作品の傾向もはっきりとしてきます。

小説家になろう作品の多くは、ライトノベル最初期を彷彿とさせる中世ヨーロッパをモデルとしたような異世界を舞台としているのですが、小説家になろうの作品では、『Re:ゼロから始める異世界生活』等に代表される、主人公が現代の日本に生活している一般人で、何らかの事情によって異世界に召喚される「異世界召喚」、もしくは『無職転生~異世界いったら本気出す~』等に代表される、死後に前世の記憶を持ったまま異世界の人間として生まれ変わる「異世界転生」という要素を含んだ作品が大多数を占めているのが特徴化と思います。

ちょうど今の作家の方々が、子供の頃にライトノベル最初期の異世界ファンタジーを読んでいた読者の年齢くらいということを考えると、当時抱いていた異世界ファンタジーの世界に行ってみたいという願望を、異世界召喚・異世界転生という形で描いているのかなとも思います。

そして小説家になろう発作品の台頭・隆盛に伴い、ライトノベルの主流が「現代異能バトルもの」から「異世界召喚・異世界転生」へと切り替わっていったのだと感じています。

 

 

 

無双・ハーレム・我が道を行く主人公。小説家になろうに求められるストレスフリー・爽快感

実は上で小説家になろうの代表作として挙げた無職転生とリゼロは、主人公が事故と葛藤しながら成長していく様を描いている、大なり小なり悲劇的な要素を含んでいる等、内容としては小説家になろうの中でも異色の部類に入るのではないかと思います。

小説家になろうの多くの作品は、読者に不満を与えないこと、読んでいて爽快感を与えるような内容になっている傾向が見られます。

ここでいう読者の不満の代表的な点をあげるとすると、

 

・主人公がウジウジ悩む

・ヒロインが他の男性キャラと恋仲、もしくはそれに近い関係になる、いわゆる寝取られ要素

・複数のヒロインがいる場合、贔屓のヒロインが主人公と結ばれない

・主人公が目上のキャラに言い負かされる

 

といった感じではないでしょうか。

そのため、

 

・主人公が初期から限りなく最強に近い状態で、ほとんどの戦闘で相手を圧倒する無双描写が多い

・複数のヒロインがいる場合、比較的早い段階ですべてのヒロインと結ばれるハーレム展開

・他人の意見に左右されず、あまり思い悩まず、我が道を行く主人公

 

といった要素を含む作品が小説家になろうでは多く見られる気がします。

それに伴い、ライトノベルのあらすじや帯でも「チート」「最強」「英雄」といったあおり文が多く見られるようになりました。

こうした「異世界召喚・異世界転生」ものであると同時に「主人公最強」ものであるというのが、近年のライトノベルで多く見られた特徴ではないかと思います。

 

 

 

多様化する異世界召喚・異世界転生もの

異世界召喚・異世界転生の王道といえば、魔法学園、冒険者ギルド、迷宮、闘技大会といった冒険者・バトルものですが、多くの作品が小説家になろうに投稿され、飽和していく中で異世界を舞台としながら様々なジャンルを取り扱った作品が見られるようになりました。

異世界で地球の料理を提供する「料理もの」、現代知識を元に国を運営していく「内政もの」、迷宮を攻略する側ではなく運営する側に回る「ダンジョン運営もの」などが、新たに定着した代表的なジャンルと言えるかと思います。

この他にも様々な題材・設定を扱いながら「異世界召喚・異世界転生」ものは規模を拡大し、近年のラノベ市場に浸透していったと言えるのではないでしょうか。

 

<2017年~>

新たな変革の兆し

2017年、正確には2016年の後半からですがライトノベル市場に新たな兆しが見えてきたように思います。

まずライトノベル評論誌である「このライトノベルがすごい」において、実に7年ぶりに『SAO』『とある魔術~』『俺ガイル』以外の作品が1位に輝きました。今回1位になった『りゅうおうのおしごと』という作品は一見ラブコメっぽい雰囲気で、確かにラブコメでもあるんですが、それ以上に師匠と弟子の交流を通して人が成長していく様を描いた感動的な物語でもあると自分は思っています。

 

 

新人賞受賞作に感じるストーリー性・物語性重視への回顧の予感

第21回スニーカー大賞では人間を構成する内面的要素をテーマに扱っており、ゼロ年代前半を彷彿とさせる『まるで人だな、ルーシー 』という作品が優秀賞を受賞しました。

第23回電撃小説大賞で大賞を受賞した『86-エイティシックス-』『君は月夜に光り輝く』は、人種差別と難病という重いテーマを見事に扱い、感動的な物語とエンディングが魅力となっています。

また、その高いストーリー性が読者の間で非常に高評価を得ていた『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』『サクラダリセット』といった作品がアニメ化されるなど、ここにきてストーリー性がこれまで以上に重視される風潮が高まってきているように思われます。

もちろんまだまだラブコメやなろう系の作品も多く出版されており、今後メインジャンルが切り替わっていくという断定はできません。なにしろSAO登場時に今後VRMMOジャンルが主流になるという思いっきり外れた予想をした人間ですから。ただ少なくとも、キャラクター重視の風潮から、ストーリー性も同様に求められる兆候が起きているのは感じられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

という感じでこれまでのライトノベルの主要ジャンルの変遷を振り返ってみましたけど、これ数年後とかに思いっきりキャラクター重視の流れが続いてたら、めちゃくちゃ恥ずかしい〆方してしまいました。その時は外聞を気にせず思いっきり修正する予定なんでご了承ください(えー

あと、今回あくまで自分の主観的な解釈に基づいて考察してますんで、そうじゃないだろって思った方も、このサイトの管理人はこういう考えなのかって思う程度でお願いします。登場する作品についても、自分が思いついた作品を挙げてるだけなんで、決してそのジャンルの一番人気の作品とかって意図があるわけではないです。あの作品挙げてほしかったのにって方がいたらすいません。

作品についてでもう一つ、当然これらののジャンルにあてはまらない作品や、当時の主要ジャンルではなかったけども、高い人気を誇った作品もあるかとは思いますが、その辺までは考えるとパンクするんで、今回は僕が思うジャンルにあてはまってるかなって作品で思いついたのを挙げてます。

最期に、今回は敢えてライトノベルに影響を与えたアニメやゲーム等との相関には触れずに、ライトノベルのジャンルの変遷のみ絞って書きました。いや、何か意図があるわけではなく、その辺書こうと思ったら収集つかなくなったんで、今回は頑なに触れずにいこうということしただけなんですけど。すいません、僕の文章力&構成力ではこの辺が限界だっただけです(えー

次にこういう理と述べる全体についての感想というか、昔語りみたいなの書くとしたら、逆に過去のそのあたりがライトノベルへ与えた影響についてとか書いてみたいなとも思います。

......需要あるのかな?これ??

 

 

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『君は月夜に光り輝く』 感想

 

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

佐野 徹夜 (著), loundraw(イラスト)

 

私の、渡良瀬まみずの、本当の、最後のお願いを、岡田卓也君に言います。

聞いてください

 

大切な人の死から、どこかなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」で入院したままの少女がいた。月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。余命わずかな彼女に、死ぬまでにしたいことがあると知り…「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」「本当に?」この約束から、止まっていた僕の時間が再び動きはじめた。今を生きるすべての人に届けたい最高のラブストーリー。

 

八真八 真の満足度・・・★★★★★★★★★ 9/10

感想

物語を読んだり、見たりするのが好きな人は少なからず心を揺さぶられた作品というものがあると思います。

これは単純に面白いとか好きといった感情とはまったく別次元というか、種類が違う感情なんですよね。

心を締め付けられるというか、抉られる感覚が近いかなと。

で、まちがいなくこの作品は心を揺さぶられる作品であると思います。

僕は個人的に「泣ける」っていう表現は簡単に使うべき言葉じゃないので、あまり好きじゃないんですが、あえて「泣ける」作品であると言いたいですね。

 

00年代を彷彿とさせるボーイ・ミーツ・ガールもの

物語は主人公の岡田卓也がヒロインの渡良瀬まみずが入院している病院へ見舞いに行き、二人が出会うところから始まります。

その後主人公が入院中のまみずの代わりに「死ぬまでにしたいこと」を実行して、それをまみずに伝えるという行為を繰り返しながら二人の心は次第に縮まっていき・・・という感じで物語は進んでいきます。

この作品を読んで(冷静になってから)思ったのは、ラノベっぽくないなと。正確にいうと今のラノベっぽくない

男女の恋愛の話というと、今主流なのはラブコメ要素が強い作品かなと思うんです。

人気作でいうと、俺ガイルや冴えカノ、俺妹とかがそうですね。

それに対してこの作品は決してラブコメではない。あえてジャンルをつけるならボーイミーツガールものって感じですね。

それはどちらかというと00年代の恋愛ものやストーリー性の高い作品を思い出させるジャンルかなと思います。

『イリヤの空、UFOの夏』『半分の月がのぼる空』なんかがまさにそれですね。

そしてそれは冒頭で述べた「心揺さぶられる」っていうフレーズとも深く繋がっていくんですよね。

 

(C)秋山瑞人/ メディアワークス

<イリヤの空、UFOの夏>4冊完結という決して長くない作品ながら、読者に強烈な印象を残した

これまた00年代を彷彿とさせる泣きゲーとの相似点

泣ける物語・ラノベというとどんな作品を想像しますか?

最近だと『終末なにしてますか?シリーズ』、少し前だと『とある飛行士の追憶』なんかがあると思います。

ただ現代の日本を舞台にした作品で感動的な物語として圧倒的に多いのはボーイミーツガールものが多かったのと同じ00年代だと思うんですよね。

上でもあげた『イリヤの空、UFOの夏』『半分の月がのぼる空』。あと個人的にラノベの中で最も切ない物語だと思っている『LAST KISS』なんかが代表作じゃないかなと思います。

ここからは個人的な意見なんですが、この00年代に感動系のラノベが多かったのはPCゲームからの影響が強くあるんじゃないかなと思います。

この頃って98年発売の『ONE 〜輝く季節へ〜』(Tactics)から始まり、『kanon』『AIR』『CLANNAD』(共にkey)等へと続く、いわゆる「泣きゲー」の黄金期だったんですよね。何しろ『AIR』のマスターアップ時には号外が配られ、初回版発売日には行列ができるほどの人気だったのですから。

key作品以外にも『家族計画』『CROSS†CHANNEL』『銀色』『水夏』などあげだしたらキリがないほど、感動的な物語を主としたPCゲームがあふれていたのが00年代の特に前半だったわけです。

正直言って、僕が「泣ける」というフレーズを軽々しく使いたくないのも、これらの作品への思い入れが強すぎて、簡単に同列の作品みたいな表現をしたくないという感傷的な理由なんですよね。

なぜここで過去のラノベやゲームの話をするかというと、これらの作品と『君は月夜に光り輝く』がとても似ていると感じたからです。

それは物語の内容もこの頃に近いというのもあるんですが、それ以上に作品全体の結末を予感させる雰囲気とか、読後の喪失感とかいったものに、

上にあげた作品と同じような印象を感じたわけです。

楽しいやり取りの中にもどこかつきまとう不安だったり、終盤での圧倒的に魂を揺さぶられるようなセリフ回しだったりがこちらの琴線にモロに触れてくんですよね。

だからこそ、冒頭で僕はあえて「泣ける」作品であると言ったわけです。

まあ、実際泣いたからってのが一番の理由ですが(えー

 

(C)key/ VisualArt's

<kanon/AIR>当時を知る人はこのシーンだけで泣けてくる人も多いのでは。

高い文章力、丁寧に描かれた卓也とまみずの関係

この作品、物語の進行は非常にゆったりと進んでいくんですが、その分卓也のまみずの距離感というか、やり取りが非常に丁寧に、考えて描かれているなという印象でした。

例えばまみずに靴をプレゼントするシーン、この前のシーンでまみずに靴のサイズを聞く描写があるんですが、まず最初に胸のサイズを聞くやりとりがあるわけです。実はこのさらに前に友人の香山から冗談でまみずの3サイズを聞いてくれよと言われるやりとりがあって、最初このシーン読んだ時はその伏線の回収だと思っていたんですが、靴をプレゼントするシーンの伏線にもなっていたんですね。こんな感じでいろんな伏線が絡み合ってどんどん読者を卓也とまみずのやり取りに没入させていく、その描き方が非常にきれいで上手だなと感じました。

あと、文章力自体も新人の方とは思えないくらい高いと思います。

なんていうかラノベと一般小説の中間のような文章ですね。

多分普段ラノベ中心に読んでる人には一般小説っぽい、逆に一般小説読んでる人にはラノベっぽいと感じるかもしれません。

クセは少ないですし、きれいな文章で一文もそんな長くなく、分かりやすい表現なので、普段ラノベを読まないような人、というか普段あまり本を読まない人にも、ぜひ読んでもらいたい作品だなと思いました。

 

結末について

結末については何を話しても圧倒的なネタバレになるので一言だけ。

渡良瀬まみずは間違いなく幸せだった。ならこれは疑いようもなく、幸せな物語である。

もちろんどう感じるかは読者の自由だと思います。これはあくまで僕の意見ということで。

 

<個人的名言・名シーン>

カッコつけてんじゃねぇよ。

でもカッコいいと素直に思った。

(岡田卓也)

 

私は、これから先、生きたらどうなるのか、知りたいです

(渡良瀬まみず)

 

私のかわりに生きて、教えてください。

(渡良瀬まみず)

 

 

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『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?EX』 感想

 

 

聞きなれた言葉たち。

聞き飽きた言葉たち。

 

一度くらいはあいつの口から聞いてみたい......

けれど決して言ってはもらえない、そんな言葉たち。

 

春の陽だまりの中、幼い少女妖精・ラキシュは《聖剣》セニオリスを抱え夢想する――。
それは500年前の出来事。正規勇者(リーガル・ブレイブ)リーリァ14歳、準勇者(クァシ・ブレイブ)ヴィレム15歳。人類を星神(ヴィジトルス)の脅威から救う兄妹弟子の日常は、なかなかにデタラメで色鮮やかで……。
それは少しだけ前の出来事。死にゆく定めの成体妖精兵クトリと、第二位呪器技官ヴィレム。想い慕われる一分一秒は、忘れ得ぬ二人の夢となる。

「終末なにしてますか~?」第一部、外伝。

 

八真八 真の満足度・・・★★★★★★★ 7/10

 

感想

アニメ放映記念と言いつつ・・・

シリーズ本編すっ飛ばして、番外編から感想書き始めるという無理・無茶・無軌道を通り越して無謀を実行している僕です!(えー

いやっ、ちゃんと本編の方の感想も書く気はありますよ!ただこっち読了したばかりだし、内容はっきり憶えている内に書いちゃおうと。

というわけで『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?EX』、通称『すかすかEX』の感想です。

まあ番外編なんですが、正しくは補完編といった内容ですね。当然大きな事件が起こるわけでも根幹に関わる重要な何かが語られるわけでもないです。ただ彼女たちは何を考え、ヴィレムのことがどのように見えていたか、それを補完するためのお話といったところですね。

あと一応今回の評価は外伝単体として評価してます。

 

リーリァ編

前半の主人公というかヒロインはのメインヒロインというべきリーリァです。

本編5巻を読んで、リーリァって実は『すかすか』の中で1番健気で一途な女の子なんじゃないかなって思ってたので、今回の話で彼女の心情が掘り下げられるのをすごく楽しみにしてたわけですよ。

とか思ってたわけですが、あとがきで枯野先生が作中トップクラスの健気な子とか語ってるじゃないか!!(えー

これは著者と一緒の考えだったことを喜ぶべきか、感想に書く前に言われたことを嘆くべきか。

そんな?リーリァのお話ですが、時間軸的には教会によって星神討伐が決定される少し前で内容としてはリーガルブレイブのお仕事と日常って感じです。リーリァ視点で語られるので、最終決戦時以外ではほとんど心情を語られることが無かった彼女が普段何を考えてリーガルブレイブとして生きていたのかを知ることができます。ということなんですが......

......何この乙女?

いや、想像以上に頭の中ヴィレムっていうか......もうベタ惚れじゃねーか!

まさかあんな世俗的な願望持ってるとは思わなかったよ(えー

多分著者はリーリァも一人の女の子なんだよって部分を意図的に書こうとしたんじゃないでしょうか。

リーガルブレイブも泣いたり怒ったり笑ったり、そして何よりヴィレムのことが好きなただの女の子でもあったんだよと。

(C)大島司/ 講談社

 

これはそんな女の子運命に翻弄され、それを受け入れて戦ってたんだよというのを読者に伝えるためのお話だったのかなと思います。

そしてもう一つ、ヴィレムに家族として扱われることの特別さを伝えるためのお話でもあったのかなと。

レプラコーンの子たちはそれほどの特別をヴィレムにもらってたんだよと。

 

クトリ編

後半は500年後の世界、時間軸的には本編1巻のクライマックスあたりのお話です。

あの出撃前の数日間、彼女たちは何を思い、どのように過ごしていたのか

こちらは裏のメインヒロインリーリァに対して、おそらくのメインヒロイン、クトリの視点で語られてますね。

そしてこっちは隠しきれない乙女心が全開って感じです。

あれ?『すかすか』ってこんなにラブコメってたっけ?ってくらいラブがコメってるじゃないかーーっ!??

(C)島本和彦 / 小学館

 

・・・主にクトリが一人で(えー

でも本編のクトリに待ち受ける運命を考えるとこういうエピソードも必要だったのかなと思えますね。

 

あと余談としてネフレンについても少し触れられているんですが、個人的にこの部分を書いてくれたのはすごく良かったです。これを読むと『すかすか』で最後までヴィレムのそばにいる役がなぜネフレンだったのかというのが、スッと腑に落ちてきた感じがしました。

 

<個人的名言・名シーン>

聞きなれた言葉たち。

聞き飽きた言葉たち。

一度くらいはあいつの口から聞いてみたい......

けれど決して言ってはもらえない、そんな言葉たち。

(リーリァ)

 

なんというか、非常識というか、バカげた話だ。というかバカそのものだ。

無理をしたんだろうと思う。

無茶をしたんだろうと思う

いつものように。当たり前の顏をして。

(リーリァ)

 

 

 

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