『月とライカと吸血鬼』 おすすめライトノベル(ラノベ) 感想

WEB小説ランキングワールド

『月とライカと吸血姫』 (1~2巻) 感想

 

 

この成功を肉の煮凝りホロデーツで、お祝いしましょう。精一杯の感謝を込めて

 

宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女の物語。

人類史上初の宇宙飛行士は、吸血鬼の少女だった――。
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。
共和国の最高指導者は、ロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。『連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ!』と息巻いていた。

その裏では、共和国の雪原の果て、秘密都市<ライカ44>において、ロケットの実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。とある事件をきっかけに、宇宙飛行士候補生<落第>を押されかけていたレフ・レプス中尉。彼は、ひょんなことから実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナ・ルミネスクの監視係を命じられる。

厳しい訓練。失敗続きの実験。本当に人類は宇宙にたどり着けるのか。チームがそんな空気に包まれた。
「誰よりも先に、私は宇宙を旅するの。誰も行ったことのないあの宇宙から月を見てみたいの」
イリナの確かな想い。彼らの胸にあるのは、宇宙への純粋な憧れ。

上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を目指す彼らがそこにはいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティがここに。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★★☆ 9.5/10

 

感想

『月とライカと吸血姫』の2巻の感想を書こうとして、そもそも1巻の感想も書いてないやってことで、

またしても1~2巻まとめての感想です。すいません。

 

ちょっとばかりネタバレもあるんで、ご注意を。

1巻 感想

まず作品を通してですが、これまたとんでもなく美しい物語が出てきたな!というのが第一印象。

ジャンル的にはSFファンタジーになるんでしょうか?
宇宙開発と言うSF要素に吸血鬼という伝奇の王道をぶっこんでくるという組み合わせが斬新です。

ただ物語としては、古きよき時代を思い出すような王道のボーイミーツガールものですね。

種族の違う二人が心を通わせていく過程がとても綺麗に描かれています。

また、この作品のスゴイのが、SF、伝奇、ボーイミーツガール、種族差別、国家間の陰謀などこれでもかってくらいいろんなテーマを扱ってるのに、ビックリするくらい一つの物語として綺麗にまとまっているところですね。じゃあ結局この作品はどんな話なのかというと、あらすじに書かれている「宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ」。このフレーズがもっとも上手くこの作品の雰囲気と内容を表していると思います。

 

宇宙(そら)に夢見る少年と少女の物語

上で述べたように、この物語にはいろんな要素が詰め込まれているんですが、おそろく一番のテーマは宇宙飛行士を目指す少年と吸血鬼の少女のボーイミーツガールについてだと思います。

物語の舞台は世界観としては米ソ冷戦時代の宇宙開発競争を彷彿とさせる(生まれてなかったの想像ですが)世界観の架空の世界で、

そんな陰謀渦巻きまくる世界の中で主人公のレフはただただ宇宙に憧れる純粋な青年として描かれています

そんなレフが、人間が宇宙飛行に耐えられるかを確かめるための実験体として選ばれた吸血鬼のイリナと出会ったことで、物語は大きく動き出します。

 

この作品の世界設定としては、陰謀とか差別とかかなりどろどろしているのに、物語としてすごく美しくて綺麗に感じるのは、この二人の純粋な在り方と関係性が一つの要因となっているんだと思います。

まず主人公のレフについてですが、彼の場合、けして世間知らずとか世の中が分かっていないとかそういうわけではなくて、ちゃんと国家の腹黒さとか人の醜さとかを分かった上で、それに染まることなくただ純粋に宇宙を飛びたいんだという夢に向かって突き進んでいるという感じで、非常に好感が持てる主人公だと思いました。

ヒロインのイリナについては、また絶妙なバランスのキャラとなってますね。ツンデレっぽい感じで意地っぱりなんですけど、実は割と泣き虫で素直。何より物事に対して真っ直ぐな心の在り方が美しいです。

そして1巻の大部分を使って、この二人が徐々に打ち解け合い、心を通わせていくその描写がとても素晴らしいです

何か大きな出来事をきっかけにして距離が縮まるとかではなく、本当に小さなことの積み重ねで、お互いを少しずつ理解していく過程がじっくり丁寧に描かれおり、

これぞボーイミーツガールもののストーリーといった感じで、まるで青春小説を読んでいるような感覚でした。

 

食堂での一幕。訝しげな視線と慌てて取り繕うレフ

普通の人間と変わらない存在として描かれる吸血鬼

もうひとつ、この作品では人種差別、というか種族差別もテーマとして扱っているんですが、ここですごいと思ったのが迫害される立場である吸血鬼の設定ですね。

この作品では吸血鬼を超常の存在ではなく、人間とほとんど変わらない一つの種族として描いています。これによって人と同じような存在でありながら、単なる種族の違いだけで意思ある生物を「モノ」として認識できてしまう人間の醜さを上手く描写していると思います。

架空の世界に現実と同じような史実を挟んでいるのもそうなんですが、この作品はとにかくファンタジーとリアリティのバランスが絶妙だと思います。

2巻 感想

高度百キロメートルの宙から君を想う。

『ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフ・レプス中尉は、晴れて念願の宇宙飛行士候補生に復帰する運びとなった。それに合わせて吸血鬼の少女イリナ・ルミネスクを監視する任務からも解かれることになる。昼を生きるレフと夜を生きるイリナ。ふたりは同じ基地内でもすれ違ってしまう、そんな生活が続いていた。

イリナの様子を気にかけつつも、レフは自身の夢を叶えるために「人類史上初」をかけた宇宙飛行士選抜試験に挑み、優秀なライバル達と鎬を削る。

その一方で、不穏な空気がイリナの周りを包もうとしていた。

「実験体が帰還したようです」
「……もう用済みだろう。廃棄処分を」

回り始めた運命の歯車は、果たしてどこに行き着くのか――。

世界に渦巻く巨大なうねり。一枚岩ではない共和国政府。追いつけ追い越せと躍起になっている連合王国。いまだ人類が宇宙に行くことが奇跡だと思われていた時代。様々な思惑に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が織りなす、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。

 

この巻に関しては、ライトノベルの「2巻」を読んでここまで圧倒された作品を他に聞かれたら、ちょっとすぐに思い浮かばないくらい、物語の完成度が高かったです。

ここでいう完成度とは、細かい技術的な話ではなくて、仮に2巻でシリーズが終わりだったとして(絶対3巻出してほしいですが)一つの作品として十分に満足できるという意味で使用してます。

そもそもこの作品の2巻を読むに当たって、1巻の物語がすごく綺麗だっただけに2巻が蛇足になったら嫌だなという思いがあったのですが、そんな不安に思ってすんませんしたっ!!と、思わずジャンピング土下座をかましそうになるくらい、素晴らしいストーリーでした。

1巻との対比、まるではじめから上下巻の作品と思えるほど綺麗なストーリー

僕がこの作品を読んで、最もすごいと感じたところ。

この作品て1巻単体でみても、物語としてすごくきれいにまとまってるんですよね。読み切り作品というか、まるで1本の映画をみてるような気持ちになります。ただ、2巻を読み終えた時点でまるでこの作品は最初から前後編で一つの物語として書かれていたんじゃないかと思うほど、完璧なつながりと結末が描かれています。

 

■物語の中心がイリナ→レフへ

この作品のストーリーについて、出来事に焦点をあてて説明すると、1巻はイリナが「史上」初の宇宙飛行士となるストーリーと言えます。それに対して、2巻はレフが「人類」初の宇宙飛行士を目指すストーリーであると言えます。

この辺りの描写が1巻から続くこの世界での吸血鬼の設定が上手く生かされていて、レフ吸血鬼イリナの境遇の差が胸を締め付けてくるようでした。

 

■レフとイリナ以外の登場キャラの掘り下げ

この巻で登場するメインキャラの多くは、1巻から継続しているキャラになります。

ただ1巻ではほぼ主人公とヒロインの掘り下げに焦点が当てられていたため、彼らについてはそこまでキャラの深堀りがされおらず、メインと言ってもほとんど名前のあるエキストラに近い印象でした。それを2巻ではそれぞれの内面をぐっと掘り下げてきたわけですが、共に宇宙飛行士を目指すミハイルもローザも、イリナの監視担当のアーニャも、宇宙船開発者のコロ―ヴィンも、みんないい奴過ぎて泣けてきます。どのキャラのエピソードもすごく良かったのですが、個人的にとくにお気に入りなのがイリナとアーニャが歓喜に沸く群衆の陰で抱きしめ合うシーンと、コロ―ヴィンから国家最高指導者のゲルギエフへの手紙の文面ですね。たった一文にあんなにやさしい想いの詰まった「脅迫状」はないと思います。

 

ゲルギエフとリュミドラの役割

上で述べたようにこの作品の主要キャラのほとんどは善人として描かれています。そんな中、国家最高指導者のゲルギエフと秘書官のリュミドラがこの物語の不穏な側面を一手に担っているキャラであると言えます。ただ、決して悪人というわけではなく、清濁併せ持つ政治家らしい政治家といった印象のキャラクターで、彼らの存在と根回しがともすれば青臭くご都合主義に映ってしまいかねないクライマックスの演説とその後の展開に、しっかりとした説得力を持たせていると感じました。その辺りのバランス感覚もこの作品の素晴らしい部分だと思います。

 

<個人的名言・名シーン>

「泣いてないわよ……雪解けの — あなたのせいで、氷が溶けてるだけ……」

(イリナ)

 

「この成功を肉の煮凝りホロデーツで、お祝いしましょう。精一杯の感謝を込めて」

(レフ)

 

「イリナちゃんが、ずっと頑張ってたの、知ってます……。イリナちゃんの祝賀会、缶詰なんかじゃなくて、もっとお祝いしてあげたかった。でもごめんなさい……。一緒にご飯を食べたり、お話したりするくらいしかできなかった……ごめんなさい」

それで十分だよと、イリナは伝えたかった。

(アーニャ&イリナ)

 

 

 

 






 

 

感想 ライトノベル感想    コメント:0

この記事に関連する記事一覧

コメントフォーム

名前

 

メールアドレス

 

URL

 

 

コメント

トラックバックURL: