『まるで人だな、ルーシー』 おすすめライトノベル(ラノベ) 感想

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『まるで人だな、ルーシー 』(1~2巻) 感想

 

 

「代償は、悲しみだけど?」
「ああ。そいつは僕にいらないものだ」
「そっか!」

 

景色をその身に纏った少女・スクランブルはうれしそうに笑うと、小さく握りしめた拳で御剣乃音(みつるぎのおと)の腹を抉る――。
人身御供となった御剣の願いを叶える神代タイム1分間の代償は【打算】【キスのうまさ】【愛情】etc.
人の感情を贄にして、エキセントリックボックスはヒトに近づく……。

 

管理人のおすすめ度・・・★★★★★★★★ 8/10

 

感想

1巻の感想書く前に2巻が発売してしまうという事態に陥ってしまったため、まとめて感想書くハメになってしまいました。

ということで、第21回スニーカー大賞《優秀賞》受賞作『まるで人だな、ルーシー」(1~2巻)の感想です。

 

まず第一声として、なかなかに尖ったというか、突き抜けた作品という印象。

作品の内容を簡単に説明すると、自分を構成する要素(打算愛情や優しさ~キスの上手さ等)をささげる代わりに願いを叶える「エキセントリックボックス」という不可思議な現象を使って人助けに己を捧げる少年の物語です。

なんか簡潔に説明文書いたら、すごく爽やかで優しい物語っぽい紹介になってしまいましたが、実際の物語はもっとずっときもち悪いです(ほめ言葉です、念のため)。

正直この作品を読んだ時の感情を上手く表す言葉が思い浮かばないんですよね。どこか退廃的で、破滅と隣り合わせのような歪さを感じさせる、不思議な世界観。

なんていうか、壊れかけの人たちがギリギリのところで必死にもがいて、空回りだったり失敗したり裏目にでたり、奇跡もご都合主義も起きないけど、『救い』はある。

そんな感じの物語です(念押しますが、ほめ言葉ですよ)。

序盤からつきまとう崩壊の足音、途中胸を締め付けられるような切ない展開、それでも最後はしっかりと前を向いて終わることができる。軽い話やご都合主義に飽きてきた方はぜひ一度、読んでみてほしいと思います。

 

ここまでほぼ意味不明な感想になってしましましたが、こっから先はネタバレもありますのでご了承を。

1巻 感想

人間に近づいていくスクランブルと、人でなくなっていく主人公・・・日常の壊れていく描写が秀逸

この物語の主人公である御剣乃音(みつるぎのおと)はスクランブルという名前のエキセントリックボックスの人身御供です。

エキセントリックボックスというのは人型に変身できる不思議な箱で、人身御供が願った願いはほぼどんな願いでも叶えることができます(人を生き返らせることと、他の人身御供に直接影響を与えることはできない)また、願いを叶える際に直接干渉した人たちから、エキセントリックボックスと人身御供に関わる記憶を消し、無理やり辻褄を合わせて記憶を塗り替えます。

その願いを叶える力はドラえもん以上の万能性を誇りますが、願いを叶えるためには人身御供が自身を構成する要素を一つ捧げなければいけません

この設定こそがこの作品の根幹とも言える部分だと言えます。

 

「なあ、スクランブル」

「おまえと出会った頃と比べて、僕はどれくらい変わった?」

「えっとねー」

「私が変わった分だけ変わった!」

 

これは物語序盤の乃音とスクランブルの会話なのですが、この二人の関係性を最もよく表しているやり取りじゃないかと思います。

二人で一人分の人間としての要素しか持っておらず、スクランブルが人間に近づくほど、乃音は人間らしさを失くしていきます。それゆえ、主人公とエキセントリックが<同じ感情を表現してはいけない>という難しい問題がある中で、その辺りをしっかり書き分けてる点は素直にすごいなと思いました。

また、スクランブルは代償をもらう度にどんどん感情豊かに、人間らしくなっていき、それと反比例するように乃音はどんどん人間味をなくしていくのですが、この乃音の変化に合わせて、彼の生活が変わっていく様子、それまでの乃音の日常が壊れていく描写が本当に秀逸です。
特に愛情を代償にした時の描写は、かなり心を抉られますね

 

 

それと、物語中盤でもう一人の人身御供である氷室 棗と、彼のエキセントリックボックスが登場しますが、

彼らと乃音とスクランブルとの対比も見事

氷室はまだ乃音ほど、代償を差し出していないため、乃音と比べるとずいぶんと人間が残っています。

同様に彼のエキセントリックボックスは、スクランブルと比べるとまだまだ機械というか人形めいて感じます。

その分、乃音とスクランブルの異様性というか、人身御供としての末期感が上手く際立っているなと感じました。

 

ひとくせもふたくせもある主要キャラ

登場人物たちはどこかしらに歪みを抱えた人?達がほとんどです。。

ただ彼らの歪(いびつ)さが、この物語の独特の雰囲気を生み出しているとも言えます

この彼らのキャラクターを受け入れられるかどうかで、この作品が面白いかどうかも変わってくるかもしれませんね。

個人的な好みでは、どこか壊れていて、欠陥品みたいなキャラは、『戯言シリーズ』のいーちゃんとか、『CROSS†CHANNEL』の黒須太一に近いものを感じて、結構好きですけどね。

以下1巻時点における主要キャラの印象です。

 

【御剣乃音】

スクランブルの人身御供

主人公でありながら、作中でもっとも歪な人間。善意でなく、ただひたすら自分のために人を助け続けるという矛盾した行動基準を持つ。

自分の価値を世界の最底辺に位置づけており、人助けをすることでしか、生きている価値がないと本気で思っている。

 

【スクランブル】

乃音のエキセントリックボックス

初登場時はどこか人形っぽさも残していましたが、どんどん人間味を増していきます。

そしてこの作品の中で最も真っ直ぐなキャラなんじゃないかと思います。

人間じゃないスクランブルが一番まともな人間?というのがこの作品をよく表しているとも言える。

 

【真白セツミ】

この作品の中では最も普通の人間として描かれています。

それゆえに、乃音の日常の象徴ともいえる存在を担っており、

その日常の崩壊をきっかけに、物語はクライマックスへ向けて突き進んでいきます。

作中でいちばんかわいそうな役割を背負わされてしまった子。

1巻時点でのイメージは『反逆のルルーシュ』の第1期のシャーリー。

 

【夕凪アリス】

乃音の隣人で、まさかまさかのメインヒロイン?・・・かどうかは分かりませんが、(えー

ある意味作中で最も重要な仕事を担う人物。

天才的な画家であるけれど、天才は変人であるという言葉を体現したような存在だと思います。

ただこの作品で一番確固たる自分を持っている人物じゃないかと思います。

故にブレず曲がらず折れずかっこいい。1巻での八真八的好感度は堂々1位。

 

【氷室 棗】

もう一人の人身御供。

乃音にヒーローとしての理想を押し付け、それを現実にするため自らは悪役を演じる少年。

悪者ぶってるけど、全然悪者オーラを感じない、

ゆえに1巻時点での作中のイメージはThis is Pierrot。

彼の真価が発揮されているのは、2巻だと思ってます。

 

【氷室のエキセントリックボックス】

1巻時点では、氷室のエキセントリックボックスという以上の印象が全く無い。

彼女の真価も2巻と思ってます。

 

 

 人間らしさとは何か

2巻にも続くテーマなんですが、この作品はずっと、人として生きるとはどういうことかという問題を問い続けているように感じます。

1巻クライマックスでは初めて、スクランブルが自分の意志で自分の願いを叶えるための行動をとるのですが

人間らしさとはなにかというテーマに対する、一つの答えがのスクランブルの行動なんだと思います。

 

結局乃音は人間らしさがほとんど欠落したままで、状況が好転したわけでも、何かが変わったわけでもないんですが、

それでも何とか人として生きていこうと前向き状態で物語は終わりを迎えるんですが、

この今の境遇を受け入れて前に進もうとする結末が、切ないような幸せのような、また何とも言えない読後感を味合わせてくれます。

 

2巻感想

「おまえはなにもしてないだろ?」「ううん。“私たち”がしたんだよ」
御剣(みつるぎ)の問いに、その少女・スクランブルは感情豊かに応える。少女の姿に展開するBOXへ代償を捧げ、1分間の願いを叶える人身御供。御剣、氷室(ひむろ)に続く3人目は、その能力を使わない高校生の美術部員・鶴見凛(つるみ・りん)。世間から評価されない彼女の絵から、欠落したはずの『好き』という感情を想起し、御剣は戸惑うが――。

 

1巻でとりあえず生きることを受け入れた乃音ですが、

2巻では

ほとんど人としての要素を失った乃音が、それでも人としての生き方を探す物語。

そんな感じの内容になっています。

3人目の人身御供の物語

乃音が人として生きる道を探すうえで重要な役割を担っているのが、3人目の人身御供として登場するである鶴見凛なのですが、彼女については、乃音や氷室との差別化がはっきりとなされています

乃音も氷室も積極的にエキセントリックボックスの力を使う人間だったのに対し、

鶴見は一切、エキセントリックボックスの力に頼ろうとせず、普通の「人」として生きている人身御供として描かれています。1巻時点の乃音と氷室が破滅に向かっているイメージだとすると、彼女は夢に向かって突き進んでいる感じでしょうか。

1巻の人身御供とエキセントリックボックスの描写でも思ったのですが、この作者さん「人」の対比を表現するのが抜群に上手いですね

あと1巻では、乃音の日常が徐々に壊れていく様子が描かれていましたが、この巻では彼女を中心とした日常が「唐突に」壊れてしまう表現がなされいます。また、1巻では常に乃音の人生を中心として物語が進んでいったのに対して、2巻は乃音の視点・考えで鶴見凛の物語を見ている感じです。このストーリー的な1巻との違いも、読んでいて面白かったです。

そういう意味では彼女はポジション的に、ゲストヒロイン的な立場という印象ですね。

一応この巻で彼女自身の話には、はっきりと決着をついていますが、今後も出番はあるんでしょうか?

欠陥品として生きる主人公

1巻では乃音がどんどん人で無くなっていく過程が描かれていましたが、

この巻では、人として欠陥を抱えてた主人公の描写が秀逸に描かれています

以前、何かのインタビューで、西尾維新先生が戯言シリーズ2巻の『クビシメロマンリスト』について、
「この巻で主人公は覚醒するはずが、好感度が地に落ちました」的なことを言っていたのですが、

この巻の主人公はまさにそんな感じです。(えー

何しろ、愛情も優しさも既に失っているわけですから。自分に好意以上の感情を向けてくる人たちの心を無自覚にへし折っていく様は、控えめに言ってもクズですね。

逆に僕みたいなひねくれた人間からすると、その人でなしっぷりがツボなわけですが。

ただ乃音の好感度の下がりっぷりのバランスをとるかの如く、他のキャラの好感度は1巻時点と比べて上方修正されています。

以下、乃音以外の主要キャラの2巻時点での印象

 

【スクランブル】

1巻時点から特い印象は変わってないですが、乃音が人でなしな分だけ、彼女の真っ直ぐさが際立っています。

 

【真白セツミ】

乃音の記憶を無くしても変わらず乃音に振りまわれる少女。

彼女に関しては好感度ではなく、同情値が上昇しています。(えー

 

【夕凪アリス】

1巻に続いておいしいところを総取りしていきます。

むしろ乃音よりよっぽど主人公気質。

あいかわらずかっけー。

 

【氷室 棗】

個人的には1巻時点と比べて最も好感度の上がったキャラ。

あいかわらず、悪者ぶろうとして全く悪役を演じきれてない。

というか空回りして逆に人助けしちゃってます。

普通にめっちゃいい奴じゃんという印象。

 

【氷室のエキセントリックボックス】

1巻時点よりかなり心に表情が出てきてます。

スクランブルとの友情など、人らしい感情に戸惑っている姿がかなりいじらしくて、

この作品のの数少ない癒し。

 

2巻の結末と作品の魅力

結局2巻でも何かが大きく動いたわけでも乃音の問題が解決したわけでもなく、

収まるところに何とか収まったって結末なんですか、1巻同様、妙に読後感がすっきりしてるのが謎です

この不思議な感覚のせいでちっとも上手く感想書けやしない。(えー

こんだけ長々書いて、結局言いたいのは、よく分からないけど無性に面白い作品だったってことですからね。(えー

多分この不思議な感覚がこの作品の最大の魅力なんだと思います。

 

ルーシーとはいったい何のか

最後に、この作品のタイトルにあるルーシーという単語についてです。

人の名前っぽい響きですが、この作品にルーシーという人物は一切登場していません。

もしかしたらこの先重要なキャラとして登場するのかもしれませんが、2巻終了時点ではその気配すらないというのが現状です。

ちなみにルーシーという単語で真っ先に思い浮かぶのは、最初期に発見された猿人の名前なわけですが、

人に近いけど、人でない、人に進化しうるという意味で、もしかしたら人身御供とエキセントリックの存在を猿人に当てはめているのかなとも思えます。

・・・もし物語がすすんで、ルーシーという言葉が全然違う意味で使われいるとなったら、この文章を鼻で笑ってやってください。

 

<個人的名言・名シーン>

御剣はエキセントリックボックスを置いて写真を立てかけ直す。

そこはもう会うこのない父と、血の繋がっていない母と、二人の手を肩に置かれてぎこちなく笑う十二歳の自分がいた。

「……もうこれもいらないな」

昨日までの御剣は、この写真を見る度、胸に楔を打たれるような気分になっていた。

その楔をよこす写真を戒めか救済のように飾り続けていた。

けれどもう、その写真からなにかを訴えかけられることはなくなっていた。

悲しみはもう、なくなっていた。

(御剣乃音)

 

「まったく本当に、私もキミも……気持ち悪いなあ」

(夕凪アリス)

 

「さて、と」

「全部を投げ捨てて逃避行に走ったロミオとジュリエットの……私はいったいどっちの顎を粉砕してやればいいと思う?」

(夕凪アリス)

 

 

 

 

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