『平浦ファミリズム』 おすすめライトノベル(ラノベ) 感想

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『平浦ファミリズム』 感想

 

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

遍柳一 (著), さかもと侑 (イラスト)

 

「それに前から思ってたんだ。俺たち兄弟の中で、姉気が一番、母さんに似てるなって」

 

読む手を止められない不思議な中毒性のある文体に、心に染み込むような静かな感動がある物語

 

家族がいれば、それでよかった。

五年前、ベンチャー企業の社長である母を亡くした平浦一慶。残されたのは、喧嘩っ早いトランスジェンダーの姉、オタクで引き籠りの妹、コミュ障でフリーターの父だった。かく言う一慶も、高校にもろくに通わず、母から受け継いだエンジニアとしての才能を活かし、ひとりアプリ開発に精を出す日々を送っていた。
そんな一慶をなんとか更生させようと、毎日のように電話をかけてくる担任の天野小春や、優等生であるがゆえ嫌々ながら彼にからんでくるクラスメイトの千条真理香。それぞれのエゴを押し付ける周囲に辟易しつつも、親のためにも高校くらいは卒業しようと中途半端に学校に通い続ける一慶。
そんなある日のこと、一慶は、いじめられていた小学生の女の子を偶然救ってあげたことが誤解を生み、児童暴行未遂の嫌疑をかけられ、学校側から退学処分を言い渡されてしまう。家族、教師、クラスメイト、様々な想いが交錯する中、一慶はずっと胸の奥底にひた隠してきた自分自身の心に、もう一度向き合わざるを得なくなる……。
『BLACK LAGOON』の著者・広江礼威氏も絶賛した珠玉の青春小説。

 

八真八 真のおすすめ度・・・★★★★★★★★☆ 8.5/10

 

感想

第11回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞作、遍柳一先生の『平浦ファミリズム』の感想です。

とりあえずさすが対象受賞作といったところですかね。すごく面白かったです!!

 

この作品、文体がめちゃくちゃ好みです。読んでいて不思議な心地よさがありますね。

すごくクセがあるとか、はっちゃけてるとかとはではなく、まるで遍柳一節とでも言うような、読む手を止められない魅力があります

 

平浦家の家族の絆

ストーリーとしては『平浦ファミリズム』というタイトルそのままに、平浦家のお話です。もっと言うと、主人公である平浦さん家の一慶君の物語です。

 

序盤は主人公を中心としたした平浦家の説明、主人公の日常の生活が淡々と語られていきます。

いや、割とけっこうな出来事が立て続けにに起こってはいるんですが、家族以外には何事にも無関心な主人公が語り部なんでひたすら淡々と進んでいる印象ですね。

じゃあ面白くないのかというと、全くそんなことはない!!

 

序盤はひたすら平浦家の家族の絆と、それに反比例するような異質さ、そして何より主人公の異常さが目に止まります。

とにかくこの平浦家って普通じゃないんですよね。姉はトランスジェンダーのキャバ嬢だし、妹は引きこもり。父親は超天然で2周くらい周りとズレてるし。

でも一番異常なのは、一番普通っぽい主人公という……

この主人公、とにかく家族以外に興味がない。世間一般の当たり前とか、こうあるのが普通という、誰しも持ってる感覚が全く存在しません。

学校での言動というか、その心の在り方はちょっと寒気すら感じるほど一般人離れしています。全てがどうでもいいというか、一切興味を感じていない主人公はほとんど世捨て人か廃人みたいです。ただそういう世間体とかそういう余計な価値観を持たないからこそ、家族に対して何の偏見もなく味方でいられるのかなと。トランスジェンダーに悩んでた頃の姉に何気なく言った一言とかもう、最高です。

 

平浦家の家族の関係についても、世間一般から見たらあきらかにはみ出し者ばっかりの平浦家なんですが、主人公の視点で語られるとこれ以上ないくらい理想的な家族に思えるんですよね。

依存しあってるとかではなく、それが当たり前であるかのように皆が信頼し合ってる感じがすごくいいなと思いました。

マジでこの作者の方、新人とは思えないくらい文章力高いっすよ!

主人公以外の家族も、皆いい人たちで、姉にしろ妹にしろ父親にしろ問題ありまくりなんですが、根っこの部分では人として大事な部分を持ってるのが伝わってきます。

あと要所要所で多大な影響を感じさせる母親の偉大さがすごい。

 

肝心の主人公が家族以外に対しては人として大事な部分無くしてましたが……

 

主人公と周りの人々との絆

肝心の主人公が家族以外に対しては人として大事な部分無くしてると書きましたが、それを取り戻すのがこの作品のもう一つのテーマになっています。

これについては序盤はすごく良かったんですよ。

主人公と一般的な社会との価値観のズレを感じさせる描写を積み重ねていって、主人公の人としての欠陥のようなものを引き立たせる展開、そして家族もそれを危惧しているような描写で読者の心情を煽ってくるのとか素晴らしかったです。

それだけに、最後むりやり解決させたというか、主人公に心変わりさせた感が強かったのが残念でした。ページ的な問題かもですが、もう少し主人公が心の奥では周りの人達を信頼したがってるような描写を積み重ねていくような展開があったらなぁと思ってしまいます。

それでも十分面白かったのでかなり高い要求だとは思いますが……

たった一つの伏線

伏線に関してはこの作品、そこまで伏線と言えるほどの伏線は張ってないんですが、たったひとつだけ僕がめちゃくちゃ好きな張り方した伏線があります。

何かを書いちゃうと伏線の意味がなくなっちゃうので、ここでは伏せますが、

単純に父親の天然ぶりを伝えるための描写としてあまりにさらっと書かれていたあれが最後のカギになるとは、その部分を読んだ時は思いもしなかったです。

やっぱ伏線はそれと分からないように張っておいて、回収の時に読者に感心させるような使い方をしてこそですね。……という伏線厨の戯言です。(えー

 

人としての在り方、人として大切なこととは

この作品読んでてずっと、「人として大切なことってなんですか」って問いかけられているようでした。

例えば、電車で老人に席を譲らない優等生と席を譲るギャル(もしくは不良)だったら、人としてどちらを評価すべきか。

そんなことについて終始考えされるような作品でした。

 

そしてこの作品を読んだ後は変な偏見はやめようと、いろんな人に優しくなろうと素直に思えるような素敵な物語でした。

あと個人的に最後の挿絵が最高です。これぞラノベのちから。

 

 

<個人的名言・名シーン>

「それに前から思ってたんだ。俺たち兄弟の中で、姉気が一番、母さんに似てるなって」

by平浦一慶

 

――その瞬間が来たら――
「迷わず振りぬく!!!」
by平浦一慶

 

 






 

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